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「書評」のへや

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話題の新刊から古典的な名作まで、ジャンルを問わずにこれまでに書いてきた「書評」を集めたマガジンです。
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記事一覧

そうだバンザイ生まれてバンザイ|【書評】俵万智「プーさんの鼻」

 わたしには、もうすぐ5か月になる息子がいて、そうすると、実用的な育児本だけでなく、子育…

KOHEYA Ryutaro
9か月前
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「自己表現」と「自己実現」の違い|【書評】阿部昭「新編 散文の基本」

 日本の文学史に、「内向の世代」としてくくられる作家の一群がいます。おもに、1970年(前後…

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文体から放たれるオーラ|【書評】辻仁成「海峡の光」

 小説だろうが詩だろうが、エッセイだろうが評論だろうが、すぐれた作品にはかならずある種の…

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反散文と反短歌、その先にある「詩」について|【書評】千種創一「砂丘律」

 歌人であり詩人でもある千種創一の第一歌集が、今月、筑摩書房より文庫となって刊行されまし…

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人生いかに生くべきか|【書評】浜崎洋介「小林秀雄の「人生」論」

 その名前を聞くだけで、あるいは目にするだけで、なにか胸に迫るものがある。そういう存在が…

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「優しいマジョリティ」への違和感|【書評】高瀬隼子「おいしいごはんが食べられます…

 2022年上半期(つまりは最新の)芥川賞受賞作となった、本書、高瀬隼子の「おいしいごはんが…

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清らかで孤独ないばら道|【書評】枡野浩一「毎日のように手紙は来るけれどあなた以外の人からである 枡野浩一全短歌集」

 率直にいって、枡野浩一という歌人について、わたしが漠然ともっていたイメージ(もとい偏見)は、「きっとなかなかトガッたひとなんだろうなあ」といういい加減なものでした。  特定の結社に所属することもなく、反既成歌壇という旗幟を鮮明にし、「マスノ短歌教」なる言葉の上だけにしか存在しない宗教の「教祖」を自認する、孤高のローンウルフ、ないしアウトサイダー(要するに、なんだかちょっと「ヤバそう」なひと)。  その勝手なイメージは、枡野短歌の代表歌としてもしばしば目にするつぎのような

宇宙はわたしたちのからだのなかにある|【書評】三木成夫「内臓とこころ」

 わたしの妻は、現在、妊娠6か月目を迎えたところなのですが、先日の妊婦健診ではじめて、「4…

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「センスがいい」とはどういうことか?|【書評】松浦弥太郎「センス入門」

 「あのひとのファッションはセンスがいい」とか、「あのお店の内装はセンスがいい」とか、こ…

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【書評】そこには「見えない」仕事の力|牟田都子「文にあたる」

 石原さとみが主演のドラマ「校閲ガール」が数年まえに放送されてから、「校正」ないし「校閲…

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裏切りのコミュニケーション―書評「シンプルな情熱」アニー・エルノー

 今年のノーベル文学賞を受賞したことで、にわかに注目を集めはじめた(?)フランスの作家、…

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どこまでも乾いた風の気配―書評「TUGUMI」吉本ばなな

 1989年。その年の文学シーンは、ほとんど、「吉本ばななの年」といってもよさそうなほど、こ…

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アクロバットにつぐアクロバット―書評『街場の芸術論』内田樹

 そのひとのものを読んでいると、にわかにじぶんのなかの「何か」が活性化され、心もからだも…

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よそおわれた「自己啓発本」―書評『こころの処方箋』河合隼雄

 以前、「新潮文庫の100冊」についての記事を書きましたが、今月に入ってラインナップが発表され、あちこちの書店で大々的にフェアがおこなわれています。  ラインナップはいくつかのジャンルにわかれていますが、そのうちの「考える本」に、河合隼雄の『こころの処方箋』が取りあげられていました。  じつは、岩波新書から出ていた『コンプレックス』という一冊も、先月になって改版が刊行されており(初版は1971年なので、ちょうど半世紀!)、その死後もうすぐで14年ほど経とうとしていますが、い