見出し画像

#95 システム開発をまるごと理解できる人は育てられるのか?~後編~(2024/06/07)

こんにちは。ITベンチャーエンジニアのこへいです。

システム開発をまるごと理解できる人は育てられるのか?というテーマについて考えており、こちらのnoteでも「まるごと理解すること」「自分自身がまるごと理解するに至った経緯」「まるごと理解出来る人が増えない理由」について書きました。

今回は、「まるごと理解できる人の特徴」「まるごと理解できる人を育てるための環境作り」について考えます。


〇まるごと理解できる人の特徴

まるごと理解するというのはハードルが高いため、そもそもまるごと理解することへの欲求があったり、理解するに至る過程を乗り越える素養が必要です。

プロダクトを通した価値提供に興味がある人

システム開発においては、例えば案件受注の営業担当で契約獲得に強い興味がある場合、必ずしもまるごと理解する必要はないです。むしろ、テスト工程に興味を持つことは難しいでしょう。
逆に実装に強い興味のあるエンジニアであれば、上流工程を学ぶ意欲を持つことは難しいです。

一方で開発したシステム・プロダクトを通して価値を提供することに強い関心がある場合は自然と全体に目を向ける必要が出てきます。
極端な話エンジニアであっても、顧客の要求する課題の解決を予算と期間に合わせてより良い方法で提供することを考えると、契約まわりについても首を突っ込もうとします。

勝手に学ぶ人

まるごと理解するには圧倒的な学習量が必要です。指示に従って仕事を進めることが好きな人がまるごと理解した状態に到達するのは難しいでしょう。

そのため、誰も手を付けていない自分の学びになりそうな仕事を見つけては対応するような人は、システム開発に必要な知識も勝手に学んでいくことが出来ます。

勝手に学ぶ人が「誰もやってない仕事」を見つけた

勝手に学ぶ人についてはこちらの記事が非常に参考になりました。ぜひご一読ください。

タフな人

前半の記事でもお伝えしましたが、まるごと理解するには知識を学ぶだけでなく、失敗しながら試行錯誤を繰り返して経験を積むことやプロジェクトに自主的にコミットして結果成功を積み重ねるなかで体得するといった体験を通して学ぶことが必要です。

失敗のリスクを覚悟した意思決定にはストレスが伴います。そのため、タフな人でないと途中でリタイアしてしまうかもしれません。
実際に一緒に働いていた社員の中でも、強いストレスにさらされる環境が合わずに他の環境を選んで活躍されている方も少なくないです。

まぁストレス耐性は個性みたいなものなので、まるごと理解することにこだわる必要は全くないですが。

〇まるごと理解できる人を育てる環境作り

まるごと理解することへの欲求や素養があっても、適切な環境がなければまるごと理解することは難しいです。

前半記事でも、会社のフェーズによってはまるごと理解できる経験を積むことが難しいことに言及しています。プロジェクトが大きくなる中でもまるごと理解できる人を育てる環境を自分はどう作っているかについて紹介します。

大きなプロジェクトを分割した小さなプロジェクトを任せる

私は運よく小さなプロジェクトから成功を積み重ねることが出来ました。
大きなプロジェクトしか存在しないのであれば、小さなプロジェクトに分割してアサインしていけばいいです。

重要なのは、小さくて良いのでプロジェクト全体のハンドリングをする経験です。そのため、小さな開発タスクをアサインするのでは意味がなく、小さなプロジェクトとしてアサインします。

どういうことかというと、アサインするタスクの中で、要件定義・設計・開発・テスト・スケジュール管理など全体の工程を体験できるようにコントロールしてあげるのです。

全体を俯瞰した意思決定の訓練を課す

小さなプロジェクトをアサインすることで全体を俯瞰しないとゴールにたどり着けない状況を作ります。その中で必要な情報を集めて、自分で意思決定してもらいます。

意思決定の場面でのフィードバックでは、誤った意思決定に思えてもこちらから修正するのでなく、その意思決定でプロジェクトを進めた場合にどんな問題が起きそうかを考えてもらいます。
プロジェクト未経験の場合は全く想像できないというケースもあるので、プロジェクトの全体感を伝えて想像してもらったり、近いマイルストーンを設定しひとまず作業を進めてもらいます。

仮に意思決定が間違っていたとしても、マイルストーンを細かく設定しているのでリカバリーは容易です。自分で意思決定して失敗したのでどういう観点での考慮が足りていなかったのかも振り返りが可能です。

このような意思決定の訓練を地図を持たせて後ろを歩くと表現しており、こちらのnoteでも紹介させていただいています。

コンフォートゾーンのちょっと外に梯子をかける

小さくてもプロジェクトを任せるというのはストレスを伴います。タフな人である程まるごと理解しやすいということは前述していますが、あまりタフでない人には無理かというとそうではありません。

ゴールまでの道筋を見せるなど、確実性の高い成功があることを示唆するなど不確実性を小さくすることでストレスをコントロールすることが出来ます。
地図を持たせて後ろを歩くというのと似ていますが、コンフォートゾーンの外に出やすいように梯子をかけるということについても以前に書きました。

小さなプロジェクトから始めて、だんだんと大きなプロジェクトをアサインしていくことで、まるごと理解する素養のある人に、まるごと理解するに至る経験を提供することが可能と考えています。

〇まるごと理解したいのであれば環境を自ら選ぶしかないかもしれない

私なりのやり方を紹介しましたが、必ずうまくいくものでもありません。
私はこのようなアサインのコントロールが社内でもトップレベルであると評価をいただいていますが、同じように得意な人はほとんどいません。

また、プロジェクトのサイズをコントロールしてアサインするのはとても大変なので、常に適切な経験を与えることが出来るわけでもありません。そのため、全体感を把握しながら経験を積める環境はやはり希少です。

まるごと理解したいという方は、タフであるという自負があればベンチャー企業に飛び込むのが良いです。
また、いきなりまるごと理解することを目指すのでなく、まずは開発スキルを習得しある程度の専門性を身に着けてから職種を変えてカバー出来る範囲を広げていくのもいいでしょう。

いずれにしろ、まるごと理解できる人を育てることはできるが、簡単なことではないというのが私の結論です。

本日も最後までお読みいただきありがとうございます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?