異業種から参戦した新人作家の「守護霊シフト制」が想像超えた
ミステリーとサスペンス、そして「守護霊」という立場を利用した特殊な環境下での謎。一件凡庸な人物が「シフト制の守護霊としてあの世で働いてもらう」という話から繰り出されるユーモラスなギャグテイスト、かと思いきや!全然違いました。
守護霊の起こりから突然独りの男の自殺を目撃。更に次に憑いた相手は殺人を犯すサイコな女。守護霊だからこそ周囲が覗けない人の本質を捉えていて「本来見られなかった中身が見える」という面白さに惹かれていく。
誰しもが一度は思ったことがある「この人、本当は何を考えているの?」が垣間見える。
しかもこの作品に出てくる人間すべてが「嘘」という実社会にもあり得る部分を色濃く描いてくれている。騙す人、騙される人、嘘をつく人、つかれる人。でもその騙される人もつかれる人もどこかで自分の保身から嘘をつく面白さ。とんでもない現実を目の当たりにしてくれる。
新感覚のミステリーであるのは間違いなく、更に言えば筆者が掲げた言葉のチョイス、そこに潜んでいる「人間とは」という点に着目するとより深みにハマっていく。どこかで感じる、この一言。
「これって私も、そうかもしれない」
そう思わせてくれる登場人物の個性に脱帽してしまった。レビューにある「異世界からの新人による、衝撃のデビュー作」というのは言い得て妙。伝えたいメッセージがあらゆる登場人物を経て読者の心を刺してくる。
上下巻合わせて千ページを超えていて「私にはムリだ」と一瞬思ったけど読み進めると恐ろしいほどの速度で夢中にさせられてしまった。特に全ての伏線が回収に向かっていく下巻は圧巻と言える速度感とテンポで進んでくれる。
ネタバレになるので、書き切れないけど、最後まで全ての謎が明らかになった後で読み直してみると「これも伏線だったのか」と驚きの連続。実は至る所に伏線が眠っていたんだと思わされた至極の作品でした。
ミステリーとサスペンス好きは是非とも異業種から参戦したもののふの作品に挑戦してみて欲しい。本当に素人だったのか?と思わされる一品でした。
(電子書籍のみなので紙になってくれないかと本心から願っています)
【守護霊シフト制・上巻】
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※年間100冊程度のミステリーを読む元某編集者に勤めていた私の個人的な意見となりますのでご了承下さい。
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