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直木賞を読む

今年はnoteにもっと気軽に思ったことを記録していこうと思いながら、気がつくと1月も終わりになっていた。

毎年直木賞の発表前は、ノミネートされた作品を読むことに時間をあてる。自分なりに読んでどのような作品が選ばれるのかを予想するのはこの時期の楽しみの一つなのだ。

今年は仲良くして頂いている本好きなフォロワーさまとDMで感想を語り、お互いに予想を話し合った。
身近でそんな話をする人はいないため、このような楽しい時間を共有できたことを心から感謝している。

さて、ニ人の予想の結果は見事に一致した。
皆さまはどの本が受賞すると予想されていただろうか。

私達の予想は『黒牢城』『同志少女よ、敵を撃て』のニ作W受賞。
私は苦手意識ゆえにほとんど時代小説は読まないけれど、米澤穂信氏の『黒牢城』はそんな意識を超えて惹き込まれた。歴史背景がとてもわかりやすい上に、密室殺人ミステリーに仕掛けられたトリックを検証していく面白さ。そして何より黒田官兵衛の戦略の深さと、その人物像には魅了されずにおられない。
劣悪な土牢に幽閉された官兵衛と、戦国武将荒木村重との鬼気迫る心理戦の場面は圧巻の一言。

『同志少女よ、敵を撃て』に関しては、兵士による村人の惨殺や、女性や子供への陵辱に恐れや嫌悪感を抱きがちだけれど、本当に怖いのはそうした見える行為だけではない。

(ここからは少しネタバレが入るかもしれないので、
未読のかたはご注意ください)

もうすでに読み始めから伏線はあったのだ...
その人物は感じの良い好人物として登場する。もちろん主人公のごく親しい仲間として。

この小説の凄いところは、目に見える暴力的な戦争の恐ろしさを描くに留まらないということだ。いかに善人であっても、戦争の残忍な歪さはその良識ある心を破壊し、驚くほどに人間を変えていく。本当の恐ろしさはそこにあり、その思いもよらないラストには震撼とさせられるのだ。

この作品は結局直木賞には至らなかったけれど、デビュー作ということもあり、今後の作品が楽しみな作家さんとの出会いとなった。

『塞王の楯』の著者、今村翔吾氏の作品は『ぼろ鳶シリーズ』の一巻のみしか読んだことはないけれど、職人の熱い粋が感じられる作品だった。この『塞王の楯』もしかりで、石垣職人と鉄砲職人との熱い戦いが繰り広げられる。根底にある願いは両サイドともに太平の世。かなり長編のため、中だるみせずに苦手な時代小説を読むには正直根気がいった。そういう点で受賞を予想するには至らなかったのだけれど、胸を熱くする言葉は至る所に盛り込まれていて素晴らしかったと思う。

他の候補作品も全てTwitterで感想を記しているので、どんな作品があるのか興味を持って頂けるととても嬉しい。

次は本屋大賞予想。また春までの楽しみな時間が始まる。


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