陶然たる管弦楽の音 ピノック/紀尾井ホール室内管
紀尾井ホール室内管弦楽団を聴いた。ピノックの首席指揮者就任披露演奏会。
指揮:トレヴァー・ピノック
ピアノ:アレクサンドラ・ドヴガン
紀尾井ホール室内管弦楽団
ワーグナー:ジークフリート牧歌
ショパン:ピアノ協奏曲第2番ヘ短調
シューベルト:交響曲第5番変ロ長調
ソリストアンコール
ショパン:マズルカ第13番イ短調op.17-4
オケアンコール
シューベルト:ロザムンデより間奏曲第3番
素晴らしい演奏会だった。
弦の響きが素晴らしい。
陶然、というのか。ここまで美しいアンサンブルを聴いたことがあっただろうか。
ピノックの耳の良さを実感した。
古楽器系指揮者によるロマン派の音楽というと、贅肉を排したすっきりした響きをイメージするが、そうではない。
音楽の肉付きが絶妙な塩梅なのだ。天才的と言うしかない。
正直「ピノックだったらバッハかハイドン、モーツァルトがよかったなぁ」と思っていたが、今日の三曲を聴いて彼の天才性をさらに痛感した。
ワーグナーもシューベルトもオケにのびのび歌わせながらもしっかり手綱は掴んでいて、指揮者とオーケストラの理想的な関係性。
名人集団の紀尾井ホール室内管弦楽団なので、管楽器のソロも安心して聴いていられる。
弦の暖かい音色に管楽器が色味や香りを加えるといった様相で、オーケストラのアンサンブルが非常によかった。
15歳のピアニスト、ドヴガンも凄かった。
すでに完成されたピアニズム。
完成されてはいるが、先の展開が見える予定調和とは違う。
ショパンコンクールで優勝したブルース・リウのような卓越したテクニックとセンスを感じた。
即興性や独創性ではドヴガンの方が上かも。
ゆっくりしたテンポでたっぷり歌わせたり、アンコールのシューベルトでは聴衆の耳をそばだてる繊細なピアニシモを披露したり、15歳の若さにして自分のスタイルが出来上がっている。
ステージマナーもよい。
ステージに登場するなり、オーケストラに深々と一礼。
オケに深々一礼するソリストは初めて見たかも。終わってからも一礼していた。
オケのアンコールはロザムンデより間奏曲第3番。
あまりに弦の響きが美しかったので、このコンビでモーツァルトのディヴェルティメントK.136やアイネ・クライネ・ナハトムジークを聴いてみたくなった。
ピノックと紀尾井ホール室内管弦楽団の相性はバッチリという印象。
次回はモーツァルトとシューベルト。バロックも早く聴いてみたいものだ。
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