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ブルックナーの何が苦手なのか ロトの「ロマンティック」

モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番
ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」(1874年第1稿)

ピアノ:河村尚子
指揮:フランソワ=グザヴィエ・ロト
管弦楽:ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団

3階左バルコニーだったので、河村尚子は完全に見切れ。
オペラシティは2階3階のセンターか、2階3階の舞台そばの右バルコニーがいい。
ソリストが完全に見切れてる席は久しぶり(いや、あったっけ?)
最安席が座席指定してるうちに売り切れたので、下から2番目の席を選択せずに買ったらこうなってしまった。

ロトはマーラー「巨人」のCDを聴いたりして、その精緻な音作りに興味を持っていた。
古楽器オーケストラを創設したりもして、古楽も現代曲も幅広く振れる人だと思う。

河村尚子も内田光子の後の世代の世界的な日本人ピアニストの一人だと思っている。
昔一度リサイタルを聴いたような気がするが、はっきり思い出せない。

今日の演奏は残念だった。オケの音がデリケートなわりに、河村さんの音に繊細な煌めきが感じられなかった。
ピリッと冴えわたるものがなかった。

カデンツァは第1楽章は有名なベートーヴェンで、第3楽章は自作?
急に曲想が逸脱して激しい調子になったので面食らった。

この第20番は第24番とともに珍しい短調のピアノ協奏曲なので、よくコンサートで取り上げられるが、10番台の協奏曲をもっとやってほしい。
名曲揃いなのに、演奏されるのは20番以降と「ジュノム」のみ。もったいない。

アンコールの「楽興の時第3番」も足がもつれた人の踊りみたいな弾き方だったが、そういう曲だっただろうか。

第20番の冒頭で、ロトが指揮台に立って振り始める前の数秒でオケに緊張が走り、空気が変わるのがわかった。
そして出てきたpp。日本のオケが弾くより弱く繊細で、かと言って音楽が痩せてしまわない奏法に「ああ、一流のオーケストラの音だ」と感銘を受けた。

後半の「ロマンティック」。
ブルックナー苦手なのに、なぜか昔からコンサートでよく聴いている笑
朝比奈、スクロヴァチェフスキでは何曲も聴いたし、外来でもシャイー/ゲヴァントハウスの8番を聴いている。

今までは苦手なりに楽しめる部分もあったが、今回はっきりわかった。

やっぱりブルックナー苦手なんだ!😭

ロトの演奏はよかった。特に第2楽章。
ブルックナーのアダージョはまあまあ楽しめる。
一番苦手なのはスケルツォとか。

第1稿だったので初めて聴く第3楽章で若書きのような筆致に新鮮さを感じたが、単純なメロディを金管が繰り返し咆哮するのがくどい。

ブルックナーの音楽聴いてていつも感じるのは

この人モテなかっただろうなぁ……

ってこと😓

いや、私もモテないタイプだけどさ😅

ブルックナー以外で苦手なのはショパン。

ピアノ・ソナタ第3番と英雄ポロネーズは大好きだけど、ノクターンは大の苦手。

様式美が好きみたい。ショパンの小曲よりはスカルラッティやハイドンのソナタが好き。

ブルックナーの交響曲全曲演奏会よりハイドンの交響曲全曲演奏会に行きたいですね。

多分クラシックファンの中ではブルックナーよりハイドンが苦手な人が多いと思う。

何聴いても同じに聴こえるとか言われるし、小編成だからブルックナーやマーラーのカタルシスからは遠い。

ではハイドンの何がいいか。

ハイドンは洒脱なのだ。小粋。

反対にブルックナーは野暮ったい(石投げられないかな😅)

いま思ったのだが、ブルックナーって小椋佳の「山河」の世界なのだ😂

顧みて、恥じることない 足跡を山に 残したろうか
永遠の 水面の光 増す夢を 河に浮かべたろうか
愛する人の瞳に 愛する人の瞳に
俺の山河は美しいかと。 美しいかと。
小椋佳「山河」

この世界観なのだ笑
家庭を顧みず、仕事一筋に人生を賭けてきた男の美学。

島耕作みたいに浮ついた恋の誘いなんて大抵の人はないから、ショパンやラヴェルみたいな要素はなくていいのだ笑
ひたすら無骨に、愚直に。河島英五的とも言えるかもしれない。

そんな「おじさんのナルシシズム」世界だから、おじさんの自己肯定を延々聞かされてる気分になって逃げ出したくなる。

ハイドンは短い時間の中にさまざまな工夫があって飽きさせない。
相手を楽しませようというサービス精神や茶目っ気がある。
ブルックナーに茶目っ気ありますか?😅

ロトのブルックナーは期待通りデリケートな作りで、pやppの美しさは特筆ものだった。

ただやっぱりブルックナー自体が苦手で、7や9はまだいいのだが、3、4、8あたりは鬼門。
生で聴くのは控えようと思った😓

別プロのシューマン「ライン」の方がはるかに好き。
ただ、オペラシティ公演の方が本命プロな感じがしたのでこちらを取ってしまった。

終演後、ロトが日本語で紙を読み上げた。

「日本の皆さん、お会いできて嬉しいです。また離れ離れにならないことを祈ってます」

みたいな内容。感動した。
はるばるケルンから来てくれた皆さんありがとう。

ブルックナーが苦手なことにコンプレックスを持っていたが、ハイドンが得意なことに自信を持てばいいのだ笑

あなたはハイドンの魅力、わかってますか?

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