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新時代の「人」と向き合うフォトグラファーが、インタビュー撮影でこだわる5つのこと【かくしごとの仲間のnote④】

はじめまして。フォトグラファーの三浦えりと申します。前職は音楽関係の仕事をしながら副業として写真の仕事をしており、4年前にフリーランスとして活動をはじめました。いまはメディアや広告を中心に撮影の仕事をしており、ポートレート(人物)撮影を得意としています。個人としても社会課題へ写真で向き合うことに挑戦し活動しています。また、最近は撮影とともにインタビューや執筆の仕事にも挑戦中です。

かくしごととは、私が2020年に表参道ヒルズROCKETで開催した写真展「風和らぐ」(辻愛沙子さん、龍崎翔子さんなど令和に活躍する女性を撮影した展示)に黄さんが足を運んでくださり、お会いしたことがきっかけです。

このときの展示やコンセプトに黄さんも深く共感してくださり、かくしごとのお仕事では、社会課題についてのメッセージを届ける記事や、人物写真で人柄の魅力をさらに伝えたいというときにお声かけをいただき、数多くの記事に携わっています。

いま現在は小学館が運営する10代向けのメディア「Steenz」のなかの「気になる10代名鑑」の撮影を担当しています。この記事はかくしごとに所属している学生エディターとタッグを組み、いろいろなジャンルで活躍する等身大の10代の声を届けています(もうすぐ200人!)

今回はかくしごとで携わることの多いインタビュー取材の撮影で、私が意識していることをお伝えしていきます。この数年でインタビューというものが出版社などメディアだけのものではなくなってきています。企業や個人の活動などで「自分たちの声を届ける」ときなどにもインタビュー記事を制作し伝えることが一般的になっています。これからインタビューの撮影を求められる機会はますます増えていくと思うので、この記事が、自分も挑戦してみたいというフォトグラファーの方々の参考になればと思います。

■インタビュー取材の人物撮影をするときに意識している5つのこと

①取材相手がどんな人物かリサーチしておく

取材相手はすでにご活躍して知っている方もいれば、いままで知らなかった方もいます。どのような活動をしている方なのか、すでにあるインタビュー記事やSNSなどで確認します。これはインタビュー撮影だけでなく、撮影相手に興味を持つことで、どんな風に撮れば魅力的な写真になるか、自分のなかでイメージを膨らませることができるので、必ずチェックをします。また、お顔を確認しておき、どんな表情をする人なのか、どんな表情が魅力的なのかを知っておくと、撮影中の限られた時間で自分のなかで納得できる表情を押さえることができます。

②編集者から取材の内容を共有してもらう

自分がいいなと思って撮影した写真でも、文章の内容と合わなければ記事そのものが台無しになってしまいます。写真は読む人に文章だけでは伝わらない、人柄であったり、その人に関連した場所やアイテムなどの情報を視覚的に明確に伝えらえる手段でもあります。取材相手のどんなところを引き出したいのかや、もう少し大きな枠で考えると記事が掲載されるメディア自体のコンセプトを共有してもらい、被写体の笑顔や穏やかな表情なのか、真面目であったり、鋭い表情を撮影するのかを判断して撮影しています。

③撮られる相手の気持ちを考えるように

インタビュー撮影は取材を受けているときに撮影をすることが多いです。話をしているときにずっとカメラを向けて撮影をしていると、相手が意識して気を散らしてしまうこともあります。できるだけ、のびのびと自然体で話してもらうように心がけているので、撮影時間は取材の1/3から半分くらいの時間で撮るようにしています。また、撮影している間もずっとシャッターを切るのではなく、カメラを降ろして取材者の話を聞くようにしています。そうすることで、より自然体な表情で取材を受けてくれます。また、取材の後にメインのビジュアル用の撮影をすることが多いので、そのときの話題や聞きたい話しをこのとき見つけるようにしておきます。

小学館のメディア「Steenz」の「気になる10代名鑑」では8割以上のティーンが面と向かって写真を撮られるのが初めてという子です。人に撮られることをいまの若者は他撮りと言うらしく(知らなかった!)、「他撮りが苦手」「どうやって撮られればいいのか分からない」と言う子も多いです。なので、①取材相手がどんな人物かリサーチしておくことをしっかり準備して、会話をしつつ緊張をほどきながら撮っていきます。ポーズを取ってもらうと逆に緊張してぎこちない表情になったりするので、できるだけ会話をしているなかで自然体な表情を引き出すようにしています。

「Steenz」で撮影したティーンのみなさんがSNSのアイコンやプロフィールなどに使ってくれたり、わざわざお礼のDMをいただけるのは予想外の嬉しいできごとでした。そもそも人物撮影をするときに、撮られた相手が私の写真を見て喜んでくれるよう意識して撮影しているので、こういった反応やお言葉はとても励みになります。

④あらゆる撮影場所に適応できるように

インタビュー取材はときには狭い場所や、背景にバリエーションがなかったり、照明が特殊な場所もあります。そこで「写真が撮れない!」と言っている場合ではないので、フォトグラファー自身が撮れ高があるように対応していくことが必要です。

可能であれば事前に撮影場所を確認しておきます。取材場所をネットで検索するとオフィスなどの取材スペースの様子がわかり、どんなイメージで撮影できるかイメージできます。また、現場に行かないとわからない場合もあるので、集合時間より早めに現場に足を運び撮影場所の確認をしておくこともあります。

取材が始まる前に、可能であればフォトグラファーが座る場所を提案させてもらいます。背景や照明の当たり具合などを認識して写真に収まる場所に座ってもらうのがベストです。オフィスや店舗の場合は照明の調節をしてもらうこともあります。顔への照明の当たり具合で表情の雰囲気が左右されてしまうこともあるので、そこは可能な限りこだわりを持ってお願いをするようにしています。

また、撮れ高に少し不安があれば、取材のタイミングを見計らって席を移動してもらったり、インタビュー後に立っていただいて話しているしぐさや、可能であれば外に出てポートレート撮影をさせてもらいます。

インタビュー取材は基本は取材相手、編集者、ライターが中心となって話が進むので、提案しづらい、声を掛けにくいということもあります(この仕事を始めたときの私がそうでした)。しかし、「記事に最高の華を添える写真を!」と少しばかり前のめりと貪欲な気持ちで行動することで、思いもがけない素敵な写真を撮ることができた経験がたくさんあるので、ちょっとでも良い写真が撮れると感じたら撮影方法の提案するように心掛けています。(とはいえ、編集者たちとチームで動いているので、ひとりで突っ走らないように注意です)

⑤記事として使える幅の多い写真を撮る

私自身もインタビュー取材にライターとして入ることがあります。だからこそ理解しているのは、写真にいろいろなバリエーションがあった方が記事を書く側としても助かるということです。取材相手が「ここぞ!」としっかり伝えたい部分に写真を添えたい、文章全体のバランスを考えて写真を入れたい、文章と文章の間を取るように写真をいれたいなど、いろいろな意味合いで写真は使われるので、そこを意識していろいろな視点で撮影するように心掛けています。

真剣な表情、穏やかな笑顔、横顔で語りかけている表情、聞き手の後ろ姿を入れて対話している構図、取材相手の右からの表情、左からの表情など、撮れるポイントはたくさんあります。取材相手の手元や、関連の場所、アイテムなども細かく撮るようにしてます。
また、構図も同じ写真が続かないように、余白を入れたり、寄ったり離れたり、左右から撮ったり。こうやって挙げるだけでも、たくさんバリエーションがあります。このすべてを撮れるベストな撮影環境が毎回あるわけではないですが、こういったことを意識しておくだけで、いろいろな写真が撮れます。

最後に、チームで取材をしていることを忘れずに!

フォトグラファーとしては人を撮ることが仕事ですが、自分ひとりで取材相手を撮影して納品することがインタビュー撮影の仕事とは思っていないです。

メディアや編集者が一つの記事のなかで、どんなことを伝えたいと思っているのか。記事がたくさんの人に読まれて、社会にどんな良い影響を与えたいかミッションを共有してもらうことで、私自身も「この記事がこんな風に社会に良い影響を与えると良いな」と思い入れを持って撮影をすることができています。

場合によってはフォトグラファーは蚊帳の外…なんて現場もありますが、かくしごとの黄さんはお仕事をオファーしてくれるときは、取材内容もしっかり伝えてくださるし、どんなことを取材相手から聞き出して、どんな切り口で記事にしたいかを丁寧に共有してくれます。自分のなかでも「この記事で伝えたいこと」を意識して撮影に挑めるし、完成した記事はチームみんなで作り上げたという思い入れを持たせてくれます。

かくしごとの学生エディターのみなさん。世代は違うけど、もはや戦友。

フリーランスは個人での仕事ではあるし、取材の仕事は単発での案件がほとんどですが、かくしごとのようにフォトグラファーもチームの一員として接してくれることは仕事をしていくなかで楽しいことも多いですし、仕事のモチベーションにも繋がっています。

インタビュー取材は自分自身の人生と関わったことのないジャンルや職業、いま社会で活躍している人など本当にたくさんの人に出会えて、刺激の多い仕事です。そんな人たちを写真で撮り、この世の中に残すことができるのはフォトグラファーとして本当に嬉しい仕事だと思っています。

もしかしたら、私たちのつくる記事ひとつで社会を素敵な世界に変えるきっかけになることだってあると私は信じています。そんなメッセージを届ける仕事ってやりがいがとてもあります。

これから、インタビューの撮影をしていく人にも、そんな役割が私たちフォトグラファーにもあるということを知ってもらい、ぜひ楽しんで仕事をしてもらいたいです。一緒にがんばりましょう!

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