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速く読むだけが速読じゃない。 本の実力を効率的に引き出す法

本を早く読めるようになりたい!

誰もが一度は憧れる速読術。

「速読法をマスターすれば一冊5分で読めるようになる!」なんて話を聞いて、チャレンジしてみた人も多いのではないでしょうか。 

でも、実際に速読法をマスターしたなんて人は何人いるのでしょう?

少なくとも私の周りには一人もいません。私も何度かチャレンジしたことはありますが、一度も上手くいったことがないです(笑)。

読み始めるとついつい細部まで読み込んで、ダラダラと読んでしまいがちに・・・。

 

しかし、今回はそんな私でも速く本を読めるようになった、ある秘策をお伝えしようと思います。それがこちら!

齋藤孝の速読塾――これで頭がグングンよくなる! (ちくま文庫)

「って、他人の本かよ!!」

「自分の技術じゃないんかい!!」

というツッコミはご勘弁ください(笑)。でも、これに書いてあることを習得できれば、時間はかなり少なくなると思います。

 という訳で、早速レビューに行ってみましょう! 

著者紹介

著者の齋藤孝さんは「世界一受けたい授業」などのテレビでもよく出ている人ですので、ご存知の方も多いかと思います。

教育学が専門で現在は明治大学文学部教授。あらゆる分野に精通していて博学、説明も分かりやすくコメンテーターとしても活躍中。1年に1冊くらいのペースで本を出していて、書店に行けば必ず齋藤孝さんの本が置いてあるほど。

こんな人にオススメ

もっと速く本を読みたい!
全然本を読まないけど「速く読めれば読むのに!」
本を読んだ後に「何が書いてあったのか」はっきり思い出せない!
こんな悩みを持つ人にオススメです。 

本を読むことの目的

中身の紹介に入る前にハッキリしておいた方が良いと思うのは、この本では「本を読む目的」として次の2つを重視しているということ。それは

「知識の獲得」

「概念の獲得」

この2つです。

知識とは本から得られる情報のこと。

一方、概念は著者の考え方や世界の見方のことです。

そして、齋藤孝さんは知識の獲得よりも概念の獲得の方が重要だと考えています。実際、今や何かを調べるのだったら“ググった”方が速いのはご存知の通り。だったら、知識の習得よりも著者独自の概念を理解し、それを現実の世界で応用できるようになることの方がよほど重要なのではないかということです。

速く読めるけど速読術ではない??

実は、この本は速読術の本ではあるけれど、いわゆる「本を速く読む」ための速読術の本ではありません。

この本で紹介されている速読術は「本の要点を素早く的確につかむことで、効率的に本のエッセンスを吸収する方法」。その結果として本が速く読めるということです。

別の表現で言えば、不要な点はガンガン切り捨てる方式なので、「たった5分で本が丸々一冊頭に入る!」みたいな方法ではありません。

 

ちょっとガッカリした人もいるかもしれませんね。「なーんだ、速読じゃねーのかよ」って。

でもちょっと考えてみてください。

仮に本の全てのページを熟読したとして、それを次の日まで覚えていられる人がいるでしょか? もしかしたら1日くらいは覚えていられるかもしれませが、二日後は? 一週間後はどうでしょう?

人間は必ず忘れます。

だったら、その本の中で絶対に覚えておくべき知識と概念さえ集中して覚えれば良いという考え方もあるのではないでしょうか? 私はどちらかというと「一瞬で何ページも読み取る」みたいな読書法が馴染めないタイプなので、むしろこういう現実的な割り切り型の方がしっくり来ました。

知識を素早く得るため方法

とは言え、本の要点を効率よく掴んでいくためには、ある程度のスピードも追求しなければなりません。そこで「速く目を通す」ことを実現するために、この本ではいくつかの具体的な特訓方法が書かれています。

たとえば「左手めくり」という方法。

これは本を左手で持って親指をずらしてパラパラとページをめくって行く方法。右手にはボールペンを持って、重要なところにチェックを入れる。

右手でいちいちページをめくる時間さえ惜しんで、さっさとページをめくっていきます。ページをめくり過ぎても気にしない!後戻りせずとにかくガンガン進むのみ!

 

この他にも

・右側のページだけ読む「右ページ読書法」

・視線をページ右上から左下に動かして読む方法

・一度に読める文字数を増やす視野拡大法

・速く読むために適した呼吸法

など速く読むための方法が指南してあります。具体的なやり方は本書で読んで頂きたいのですが、実はそのどれもが“ある一つのこと”を基本にしています。それは「全部を読もうとしない」ということです。


 二割だけで全体を把握する

たとえば著者は「二割読書法」という方法を推奨しているのですが、これは読む本の内の二割が読めれば良いという考え方です。全部読んで、その内の二割理解できれば良いという訳ではありません。最初から二割しか読まないということです。

どうせ全部を精読しても全部は覚えていられません。

だったら、最初から二割しか読まないと割り切る。しかし、「どの二割が重要か?」はしっかり考えることが大事。

そして、その“重要な二割”を判断するためには、

 1) とにかく一度全部目を通す

2) 本の全体像を把握する

3) キーワードを探す (3つに絞る!)

 という手段が大事になります。

これらを手がかりにして、著者が言いたいことを推測しながら読み進めていく。こうすることで全体の二割しか読まずとも、重要なポイントを把握することができる。

これが齋藤孝流の速読術の極意と言って良いでしょう。

 

最終目標「著者の概念を獲得する」法

最初の方にも書きましたが、齋藤孝流読書法において重要なのは“速く読むこと”そのものではありません。あくまで最終目標は「著者の概念や物事の見方を獲得すること」。

知識の習得は今ではPCやネットでいくらでも代替可能です。ですが、概念はそうは行きません。概念とは世界を見て、把握する能力であり、それによって物事を多角的に分析したり、知り得た知識をさまざまな形に具体的に応用することができます。だから、逆に言えばどれだけ速く読んでも著者が紹介している概念を習得できなければ読書した意味がない、と言えます。

ただ、この概念という物は、どれだけ速く本を読んでも、それだけで獲得することはできません。書いてあることを受動的に理解するだけでは十分ではないのです。

では、どのように読めば概念を獲得できるのか?

 

実はここに齋藤孝流読書法の妙味があります。

先程紹介した左手めくり法もそうですし、二割読書法もそうなのですが、こういった方法の「形」だけ追っても本の内容はつかめません。

・その二割で得られた断片的な情報を元に、著者の主張を推測しながら読む。

・自分の考えと著者が考えを比較分析する。

・もし自分の解釈と著者の書いていることが違っていれば、なぜ自分の解釈が間違ったのかを吟味する。

そのように、著者の用いている概念や見方に対して、自分から主体的に取り組むように考えながら読む。

このような読み方をすることで初めて、著者の概念を獲得することができるのです。

齋藤孝流の“読書法”だけでは、正直断片的な情報しか得ることができません。しかし、だからこそ“考える力”が生まれる余地があるということなのです。


「読まない本」について考えることが重要

この著者の概念を獲得するという意味で、もう一つご紹介しておきたい考え方は「読まなかった本について考える」ということです。

一冊の本を読むと決めて購入するということは、逆に「これは読まなくて良い。買わなくて良い。」という選択をした本があるということです。

これはフランスの哲学者ピエール・バイヤールという精神分析の学者が「ある本について重要なのは、その隣にあった本なのだ」と述べていたのですが、そういう考え方に近いと思います。

 

ある概念を理解するには、一人の人が言っていることだけを聞いていても駄目だというのは、多くの人が納得して頂けると思います。やはり、一つのことに関しても他の人が何と言っているのかを知ることも大事。いろんな人の意見を比較考量して、自分なりの見解を持つということこそが大事になってきます。

そのために重要なのが「自分が買わなかった、“隣にある本”」の存在です。

なぜ自分はこの本を買ったのか。

逆に、なぜ隣にある本を買わなかったのか。

それをきちんと考えることで、自分が選んだ本の意義、自分が求めている物が何かが理解できるようになります。

実は、齋藤孝さんも自分の生徒が本を買う時には、選ばなかった本について「なぜ選ばなかったのか」を説明させるそうです。そのように自分が選んだ本について、その本の中だけで完結させず、常に多角的に考えることが概念を獲得する上で非常に重要だということを生徒に意識させるためだそうです。

 

まとめ

という訳で、齋藤孝流速読術についてご紹介してきました。

最初に書いたようにこれはいわゆる「本を速く読める方法」というのとはちょっと違います。しかし、本の要点を素早く押さえ、著者の概念や物事の見方を獲得する。そして、それを活用できるようになるという読書の目的から考えれば、非常に理にかなっていると思います。

新しい知識を習得することはとても大事ですし、とてもエキサイティングな体験だと思います。しかし、これからの時代は単純に大量の知識を蓄えるだけでは生きるのが難しくなっています。それどころか、知っていることを実践するというだけなら、下手すれば今後AIに取って替わられる可能性さえあります。

したがって、これから重要なのは獲得した知識や概念を自在に使いこなし、さらにそこから新しい考え方や概念を創り出す能力です。これは非常に難しく、受動的に物事に望んでいるだけでは決して身につきません。

当たり前かもしれませんが、そういった能力は物事に自分から能動的に取り組む癖をつけることで初めて新しい概念や物事の見方、考え方を生み出せるようになるのではないでしょうか。そして、そういった力を身につけるには、読書というのは非常に手軽で、とっつきやすく、しかも魅力的なコンテンツなのではないかと思います。

まだまだ私も「本を読む」ということの意義を引き出せていないな!と痛感した本でございました。「速く本を読む」ということに興味がない人でも、読書の新しい形が見出だせる面白い本だと思います。ぜひオススメしたい一冊です。


ちなみに、この齋藤孝流速読術は実に優れていると思いますが、問題点もあります。

それは

・本を読む量が増えるのでお金がかかる

・本を読むとメチャクチャ疲れるようになる

ということです。

そこは自己責任でお試し頂けるようお願いします!(笑)

という訳で、今回ご紹介したのはこちらの本でした〜^^v 
齋藤孝の速読塾――これで頭がグングンよくなる! (ちくま文庫)


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