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ビジネスdプリペイド カードデザインの舞台裏

こんにちは、KOELの徐です。

KOELのデザイン事例として、今回はドコモビジネスの金融事業にあたる「ビジネスdプリペイド」のカードデザインを支援したプロジェクトについて、ご紹介したいと思います。


ビジネスdプリペイドとは

「ビジネスdプリペイド」は、2023年12月にサービスの提供が開始された

2023年12月にリリースされた「ビジネスdプリペイド」は、NTTコミュニケーションズが提供する法人向けのプリペイドカードサービスです。必要な金額を事前にチャージして、従業員に配布したカードから会社の経費の支払いができる仕組みになっています。

プリペイド方式なので予算管理がしやすく、キャッシュレス化によって立替精算が不要となるため、経費処理業務の効率化が実現できるサービスです。カードは「リアルカード」と「バーチャルカード」の2種類から選ぶことができ、実際の用途や利用シーンに合わせて使い分けることができます。

ビジネスdプリペイドの公式Webサイト
Webサイトからダウンロードができるサービス紹介資料
チラシなど紙媒体の制作物もKOELが担当

サービスを立ち上げるにあたって、カードのデザインからブランドの世界観構築、各種販促ツールのデザインまでをKOELが支援しました。今回はカード本体の制作に絞って、その舞台裏をご紹介したいと思います。

カードのデザインに求められたこと

ビジネスdプリペイドの世界観にふさわしいカードのデザインとは何か。エンドユーザーの利用シーンを想像しながら、ビジュアルデザインの検討を進めていきました。デザイン検討に入る前に、カードデザインのトレンドとして参照すべきものはないか、個人向け・法人向けのカードサービスを中心に、入念に国内外の事例を幅広くリサーチしました。

ビジネスdプリペイドのカードをデザインをする上で、以下のことも意識する必要がありました。

ドコモビジネスのブランドを意識すること

ドコモグループの法人事業ブランド「ドコモビジネス」のプリペイドカードサービスとして、まず既存事業ブランドの世界観から逸脱しないこと。そして、カードのデザインにドコモレッドを全面的に使用したいというサービス主幹側の意向もあり、メインカラーは基本赤を使用するという指針がありました。赤にどのようなあしらいを入れるか、いろんなバリエーションを出しながら、ひたすら「赤と向き合う」日々でした。

ビジネス向けのカードであること

ビジネスdプリペイドはターゲットが法人のお客さまになるため、ビジュアルはあまりポップにし過ぎず、ビジネスライクで洗練された方向性を常に意識する必要がありました。シンプルだけど単調すぎない、お財布の中に入っていてもかっこいいと思えるような、ビジネスカードとしても魅力のあるものを目指しました。

初期段階でKOEL内で検討されていた、カードデザイン案の一部

リアルカードでのこだわり

最大の特徴はリアルカードの斜め半分だけに施されたラメ加工

数回にわたるデザイン提案を重ね、最終的に赤の地色に斜めに切り込みが入ったデザイン案が選ばれました。

社内でカードのデザインが決まったあと、印刷会社とどのように印刷加工を行うのか議論していきました。画面上で表現された質感を、実際にどのようにして物理的なカードの印刷に落とし込むのか。KOELとしては初めてのカード制作ということもあり、デザインチーム内でも知恵を持ち合わせて、印刷加工の可能性を探っていきました。

ここではリアルカードの印刷でこだわったポイントを、5つご紹介したいと思います。

ラメ加工をカードの半分だけに施す

カードの斜め半分には光がキラキラと反射するように、ラメ加工が施されている

今回のカードデザインで一番にこだわったポイントが、斜め半分に施されている、深めの赤を使ったグラデーションのあしらいです。

視覚的に少しノイズがかかったような、ざらざらとした質感。これをデータ上でエフェクトをかけたものをそのまま印刷して表現するのか、実際のカードに何か物理的に加工を施すのか、印刷会社と議論を重ねました。

リアルカードはユーザーが日常的に、実際に手に取って使うものです。印刷加工は少しでもイメージした質感が再現できるように、特にこだわりたい思いでいました。加工にかかる工数やコストと常に天秤にかけながら、最終的にはラメ加工がイメージに一番近いことがわかりました。

特にこだわったポイントとして、ラメをカードの全面ではなく、斜め半分の濃いめの赤が印刷されているエリアだけに施しています。カードの角度を少し変えることで、グラデーションエリアの光の反射が微妙に変化するようになっています。こうした印刷方法も、多くのサンプルカードを見ながら、印刷でできること・できないことを質問し明確にしていくことで、見つけることができました。

試し刷りの段階では、様々な印刷加工方法をKOEL側から提案し、複数のサンプルを並べて比較した

カード情報は裏面に集約

カードは、VISAのガイドラインや印刷の制約事項に則ってデザインしている

事前のリサーチ結果から、最近のクレジットカードのトレンドとして、世に新しく出たカードであればあるほど、券面のデザインにある変化が見られました。

従来表面に載せることが多かったカード番号や有効期限、カード所有者などの情報が裏面に集約されていたり、「ナンバーレス」と呼ばれているように、カード情報が表にも裏にも完全に記載されなくなっている点です。これらの変化は、昨今のセキュリティ意識の向上や、カード決済端末の進化によって、カード番号が凹凸になるエンボス加工が必要なくなったことが背景にあります。

今回のリアルカードでも、カード情報を裏面に移動させることで表面のデザインの自由度が上がり、サービスの世界観を表現しやすくなるというメリットがありました。

ちなみに裏面の文字情報をレイアウトする上でも、印刷できない領域が存在するなど、VISAの規定や印刷のレギュレーションがあり、それを細かく読み解いた上でデザインを行っています。

カード側面の色を選定

カードの側面の色は、写真左の黒を選定

印刷加工が施されるプラスチックカード本体は、白や黒、赤など複数のカラーバリエーションが存在し、カードの世界観に合わせて選ぶことができました。

財布の中に入っているクレジットカードやデビットカードを見渡すと、側面が白いカードが圧倒的に多いです。その中でカードを複数枚重ねた時に、側面が黒いことでカードの視認性が上がり、お財布から取り出しやすくなる効果を期待し、側面は黒にすることに決めました。

磁気ストライプの色を選定

カード裏面の磁気ストライプも、側面に合わせて黒に選定

印刷会社との打ち合わせの中で、裏面上部の「磁気ストライプ」の色も指定できることがわかり、試し刷りの段階で赤・黒・シルバーの3パターンを出していただきました。

当初はストライプまで大胆に赤にすることで、ドコモレッドを全面に押し出したカードに仕上げられるのかと思っていましたが、色校正サンプルを実際の手に取ってみると、まるでポイントカードのように見えてしまい、「ビジネスカード感」が弱まってしまいました。最終的には側面の黒と合わせて、ストライプも黒にすることにしました。

台紙や封筒もあわせてデザイン

一貫したサービスの体験を提供できるよう、台紙と封筒のデザインもKOELが担当した

リアルカードを申し込んだユーザーは、カードが台紙に貼り付けられた状態で届きます。その台紙が入った封筒も、サービスの世界観に合わせてデザインを行いました。

台紙の宛先やQRコードなどの印字領域の位置との兼ね合いで、デザインを細かく調整する必要があったりと、印刷会社と綿密にやり取りを行いながら進めていきました。印刷する紙質を選定するだけでなく、封筒の裏地に地紋をつけることで台紙に記載されている個人情報が透けて見えないように保護するなど、ユーザーへの配慮がサービスへの信頼に直結することを念頭に、一つひとつカスタマイズできるところがないかを確認し、最後までデザインを調整していきました。

最終的にカード周辺のデザインを含め、ユーザーに一貫したサービス体験を提供することを目指しました。

カードのデザインを終えて

ここまで、ビジネスdプリペイドのカードデザインの舞台裏をご紹介させていただきました。

デザイナー人生の中で、物理的なカードをデザインする機会は多くない気もしますが、今回カードのデザインに関わらせていただいたことで、カードの印刷加工の可能性や、カードを起点にサービスの世界観を構築していった経験は、今後の業務にも活かしていければと思っています。

カードを実際に手に取ったユーザーの皆さんが、お財布に溜まったレシートを整理している時や、店頭でお支払いをする時に、少しでも「あの赤いカード」として記憶していただけたら、デザイナーとして嬉しい限りです。


KOEL公式noteではデザイナーを目指した背景や、KOELにジョインするまでの経緯などをお話しした記事も掲載されています。ぜひ併せてご覧ください。


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