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教育現場におけるDXとデザイン:ReDesigner Social Impact Week Vol.2【DX×デザイン】イベントレポート

こんにちは、KOELの廣瀬です。

今回は、2021年5月31日に開催された「ReDesigner Social Impact Week vol.2」に登壇したときのお話になります。このイベントは、デザインの力で社会課題に取り組む企業が登壇し、社会課題へのアプローチや、その中でのデザインの役割について紹介したり、企業同士でトークセッションをするイベントでした。今回KOELは【DX×デザイン】というテーマについて登壇させていただきました。

みなさん「DXとデザイン」と聞いてピンときますか?
私はというと、新卒入社2年目まだまだ若手で、自分の会社がDXに力を入れているのは認識しているものの、デザイナーとして自分もその取り組みの一員だという意識はありませんでした。
ですが、このイベントの登壇をきっかけに、DXが自分ごとになって、今のお仕事への意識や責任感にも少し変化がありました。今DXが自分ごとにできない方も、この記事を読んで同じような体験をしてもらえると嬉しいです。

イベントには他に、フラー株式会社さんChatwork株式会社さんが登壇し、トークセッションもさせていただきました。業界によって異なるDXへの課題や共通する思いがあったりとアフタートークまで(なんならその後の反省会まで)盛り上がりました。


Smart Educationプロジェクトとは

まずKOELのなかでの、どんな取り組みについてお話したのか紹介します。
NTTコミュニケーションズはDXソリューションとしてSmart Worldの実現を目指しています。特に、City、Work Style、Factory、Mobility、Education、Health Care、Customer Experienceの7つの領域に力を入れています。イベントでは、このSmart Education、教育現場でのDXとして取り組んでいるプロジェクトについて話しました。

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Smart Educationのソリューションの一つとしてまなびポケットというサービスを提供しています。GIGAスクール構想の実現に向けて学校現場では生徒、先生が一人一台タブレットを持っていることがスタンダードになりつつあります。まなびポケットはさまざまな教育アプリのプラットフォームとなり、コミュニケーションツールとしても活躍する統合ツールです。昨年度のコロナ禍で、国内のほとんどの学校が休校措置をとる中、離れた生徒とのオンライン授業、コミュニケーションをサポートし、多くのユーザーを獲得することができました。

しかし、生徒が登校できるようになると、アクティブユーザーは減少し、アカウントはあるものの活用されないという課題が顕在化しました。そこでKOELとして、先生が日常的にまなびポケット使う体験をつくるプロジェクトが立ち上がりました。
このプロジェクトはSmart Education推進室と呼ばれる事業部(以下:SMEDチーム)の案件支援として進めていきました。3つのステップで支援内容は決まっていきました。
STEP1 SMEDチームから提示された課題「使い続けてもらえない、使い始めのハードルが高い」
STEP2 SMEDチームと立てた仮説「先生が毎日PCを開く習慣がつくと、いつでもどこでも繋がれる、多様な学びができる」
STEP3 仮説に対するKOELからの支援「習慣をつけるための軸となるのは誰か、どんな打ち手が、いつ必要なのか明確にしてつくる」

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最終的に2つのアウトプットが完成しました。一つは、先生が学校生活で日常的にICTを取り入れるときの定番の使い方が集まった「レシピ」。もう一つは、先生が学校全体でICTを使い続けるために必要な「教え合い文化」を醸成する研修プログラムです。

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当初はレシピの制作をゴールとしていましたが、リサーチをしていく中で、ただ使えるようになるだけではなく、使う時の土壌が重要であることに気づき、研修プログラムの設計に至りました。
今回のイベントでは「教え合い醸成プログラム」を中心にお話ししました。

教育委員会の "向こう側" のリサーチ

このプロジェクトで肝になったのはリサーチでした。SMEDチームは教育委員会とのコミュニケーションは多く、考慮すべきポイントやニーズもよく知っていますが、実際にまなびポケットを使う先生たちとのコミュニケーションは多くはありませんでした。そこで、まなびポケットを使っている先生たち、使っていない先生たちのリアルな悩みやモチベーションを知るために、実際に小学校へ行ってインタビュー、授業観察をさせてもらいました。
「阿部:親御さんの対応やイベントの準備、授業の準備などでほとんど時間のない先生が、子どもたちの未来や喜ぶ姿を想像しながらICTを学ぶ姿を見ました。教育委員会が用意したアンケートツールに関する研修にも参加させて頂いたのですが、ツールの説明はつまらなさそうにしていた先生方が、子どもの話になるとメモの量が増えるのが印象的でした。一方で、学校では30人ほどの生徒を前に一斉にICTを使う際に、同時アクセスでネットにうまく接続できないとか、生徒がパスワードを忘れたとか、席を勝手に立つ…など、現場で悪戦苦闘しながらICTを活用し、授業を進めていく姿を実際に見ることで、先生たちの学校生活の解像度があがっていきました。」
5校の先生たちとコミュニケーションを重ね、ICTの日常的な活用がうまく進んでいる場合と、課題がある場合を発見しました。

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課題がある一極集中型を、うまくいっている分散型にするためには、機能や使い方を知るだけでなく、先生同士の教え合いが起こることが重要であると考え、「レシピ」に加え「教え合い醸成プログラム」を設計していくことにしました。

寄り添いに徹した教え合い醸成プログラムの挑戦

「教え合い醸成プログラム」のポイントは3つです。

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特に重要なのは、POINT2の教え合いの型です。「自分の活動を発信する→それを他の先生が目撃する→活動の形跡を覗き見て真似をする→真似した活動を発信する」というサイクルを回すことが、ICTを交えた教え合いを醸成するポイントになります。オンライン上に活動の形跡が残すことができ、気兼ねなく発信できる環境があるからこそ、回すことができるサイクルです。
完成したこの「教え合い醸成プログラム」を実際に複数の学校で実施してみました。まずDAY1/2では基礎的な研修を行います。教えた内容を定着させるために、DAY1/2終了後にそれぞれ3〜4日間の実践強化期間をおきました。実践強化期間では毎日こちらから挑戦してみて欲しい課題を投げてコミュニケーションを続けました。ただ、日々かなり忙しい先生たちのモチベーションを下げないよう、「絶対ではありません!」「隙間時間に!」と、できるだけ先生たちに寄り添った課題設定、言葉を使っていきました。

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リサーチを重ねていたものの、実践してみるとまだまだ新たな発見がありました。「ブラウザのタブ?が分かりません」「何が分からないのか分かりません」など想像以上の課題に当たることも。研修を重ねながら改善を繰り返していきました。

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結果として、ある学校では研修プログラム実施後の2週間、コミュニケーションツールへの投稿が0件だったものが42件に増えました。複数の先生で毎日PCを開くことが習慣化されていったのは素晴らしい成果でした。

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このイベントで私たちが一番伝えたかったこと、「現状をいかに理解して寄り添うか」をテーマにお話ししました。

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「阿部:いつでもどこでも多様な学びができる世界。そのためにICTは必要だよねと、多くの先生は認識しています。だけど、日々の多忙な学校生活の中で、生徒のためにやりたい、やるべきと思ってもやれない現実もある。そんな現状を理解し、寄り添ったたとき、初めてDXが浸透していくんだなと日々痛感しています。 そしてゆくゆくは、まなびポケットが先生や生徒から愛される社会インフラになっていればと考えています。」

最後に

「DXとデザイン」にピンときていただけたでしょうか?
いろんな業界やサービスで現場を知るリサーチに取り組んでいるデザイナーは多いはずです。教育現場の場合、現代と未来を生きていく子どもたちを育てていく先生たちを、技術を用いてサポートする。リサーチの結果がDXに繋がっている感覚を、私はこのイベントをきっかけに実感することができました。

「DXとデザイン」というと一見距離があるように見えて、他人事と思うかもしれませんが(私がそうだったように…)、今回紹介したような取り組みで、「当たり前なこと」が少しづつ変わっているかもしれません。今回のイベントでそれに気づけて、また一つ自分の取り組みに自信が持てるようになりました。

私のような若手のひよっこデザイナーに登壇の機会を与えてくださったReDesigner Social Impact Weekに感謝です。また、KOELは若手デザイナーにもDXプロジェクトでの活躍の機会や、今回のイベント登壇のようにKOELを背負って発信する機会を与えてくれる組織であることも、みなさんに伝わっていたら嬉しいです。

KOEL note

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