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もっとおおきなたいほうをー終戦記念に思うー


もっとおおきなたいほうを 二見正直 作 福音館書店


一夜明けて、今日は終戦記念日。
1945年8月15日正午 玉音放送が流れ
それと同じ時間、77年後の今日私の住む町にも、防災行政無線を使った
”祈りのサイレン”が正午に鳴り響いた。
このサイレンで、戦争を思い起こしてほしいと願っているそうだが、
しかし、今現在もなお、世界で戦争がなくなったわけではない。
 
ちなみに、中国もソ連も戦勝記念日は9月3日。
イギリスは日本と同じ8月15日。
韓国は植民地開放を祝う”光復祭”として公式行事とし、
北朝鮮は解放記念日として祝日にはしている。
 
 
10年近く前、本屋で一時を共にしたお母さんが、子どもに
おすすめの本を店主に訊ねていた。
時期も時期なので、反戦の本を店主は
奨めたが、「うちの子には関係ないので」とその女性は答えた。
「関係ないとは?」と店主が訊ねると、自衛隊にも勤めたりしないので、
と冷たく、ぴしゃりと返してきた。
まるで、失礼なといわんばかりに。
 
あまりにびっくりしたわたしは、その時のことを覚えているけど、
そのあと、その人が何を買ったのか、買っていかれたかは覚えていない。
 
 別の本屋でのことだけど、こんなお母さんもいた。
わたしが奨めた本を見て、嫌そうに、しかも汚いものでも見るように一言。
 
「兵隊が出てくる話や、武器が出てくる話は一切読み聞かせたくない、触れさせたくもない。」
 
その時奨めたのは、こみやゆうさんの「せかいいちおいしいスープ」(岩波書店)だったのだけど、その時も軽蔑も含まれた眼差しで、そうぴしゃりと返された。
すごく面白いお話なんですよと言っても無理だった。
その方とはそれきり、偶然本屋で会っても何かいい本はと聞かれることはなかった。
 
 
その反面、読み聞かせの場所でも、違う場所でも、
とにかく子どもに戦争・いじめ、人権問題を伝えたい方もいらっしゃる。
 
それが悪いことだとは思わない。
 
けど、そういう”勉強の場”でもないのに、読み聞かせやブックトークで
いきなりそんなものを読まれても、そのあとの子どもたちは
一体誰に気持ちを寄り添ってもらうことができるのだろうか。
不安に駆られ、聞いてもらいたいと思った時に誰が聞いてくれるのだろうか。
”読み捨てて”いくまたは”読み置いて”いく立場の”読み聞かせボランティア”は、テーマとして頼まれてもいないのに、そのテーマを扱うことを、非常に危惧していることを、講座でも必ず伝えている。
 
しかし、家でお母さんが子どもと一緒に読むのはまた別だと思う。
寄り添える大人がいて、いつでも寄り添い心の声を聴いてくれる。
喜びも悲しみも、聴いてくれる人がいるのと、そうではないのは大違いだ。
それでも、わたしは学校で学ぶ高学年まで必要ないと考えている。
 
児童文学作家さんの杉山亮さんはこう話してくれた。
 
「大事なことは、本人に直接伝えるのがいい」

その通りだと思う。
ボランティアの思いだけで、教室には持ち込むのは避けたい。
 
かといって、家で親が読むにしても、年齢にそぐわないきついものは
避けてほしいと思う。そして与えっぱなしもやめてほしい。
 
何とはここで書かないが、いい本でも、与える印象がきついことはおおいにある。
幼稚園で読み聞かされ、50代になってもいまだにトラウマになっている、”その時子ども”もいるのだから。
 
それでも、争いごとはよくないと伝えたい、そう考えるボランティアの人たちのその思いは大事にしたい。
なので、ダメダメではなく、読める本をお伝えしている。
 
前振りが長くなったけど、この『もっとおおきなたいほうを』がそれ。
 
いつ、どこで読んでも子どもたちは楽しく聴いてくれる。
 
 
王様の大好物のピンクの魚を許可なくキツネたちが獲ったので
ゆるせん!!と王様は怒ります。
実は王様は、かねてより一度使いたくて仕方がない先祖代々より伝わる
”たいほう”を持っていました。
そこでキツネのくせに!おっぱらってやる!とたいほうを撃ちます。
 
当然、遠くへキツネは逃げます。
けど、キツネが取って返してやってきたときには、
もっとおおきなたいほうを持ってきたのです。
 
さぁここからはたいほうの力比べといいましょうか。
王様とキツネの化かし合いならぬ、たいほうの打ち合いです。
 
大きさだけでなく、形や色、様々なたいほうを出しあい
力比べというか、根くらべというか、よくもまあ次から次へと
たいほうがでてきます。
 
 
でもね、最後の最後で、そのたいほうが木の葉だとわかるのです。
 
 
さてさて、読んでもらっている子どもたちは、そのたいほう比べが
いつまでも続くことに、まだやってんの?とあきれる子や、
もう仲直りする!という子。次はどんなたいほうがくるかな?
と楽しみにする子様々です。
 
さらに、どうすんだよ、こんなたくさん。と子どもがツッコむとおり
本当にたくさんのたいほうたちが残ります。
キツネは葉っぱだけど、王様はねぇ・・・。
 
最後、キツネのたいほうが葉っぱが正体だとわかった時の、
それこそ”キツネにつままれ”たような顔は必見。
 
そして最後のシーンで、誰もがホッとするのです。
どんなラストかは絵本を見てください。
 
 
どうですか?こんな反戦を伝える、争いはよくないね、と伝える絵本もある。
この絵本は、小学生高学年でもいいですし、中学生に読んでも、
もっと深い考察を子どもたちはするのでは?
 
ベトナム戦争の時、日本でも町で戦争反対とビラを配れば同意してくれる人も多かったのに対し、今では単純に反戦に同意ともいかないよう。
 
ウクライナ侵攻に関しても、ロシア、ウクライナ両国に停戦交渉を!という話をしても、ウクライナが抗戦をするのは正当だと考える人が多いため、停戦ではなく、ロシアが全面撤退すべき!という考えが多く、停戦という発想は日本のなかでも賛同者は少ないという記事を読んで驚いた。
 
正義を貫くためなら必要悪もあり、なんだろうか。
自分の子どもが自衛隊に勤めなかったら、関係ないんだろうか。
 


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