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『アートのお値段』に見る ”アートのお仕事”

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映画『アートのお値段』に登場する人々を例にアート業界の仕事について眺めてみています。5回連載。
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『アートのお値段』に見る ”アートのお仕事”(アーティスト篇)

『アートのお値段』に見る ”アートのお仕事”(アーティスト篇)

2019年に公開されたドキュメンタリー映画『アートのお値段』。アート界は、作品が生み出される現場と末端における価値観が大きく違うのでいつも目まいがするのですが、そのクラクラする感じが本当によく描出されていて見事でした。登場人物たちも魅力的です。それぞれの「アートの価値」の話は、つまりそれぞれにとっての「人生の中で何に価値を置くか」という話でもあります。ドタバタ劇としても楽しめますが、私にとっては、

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『アートのお値段』に見る ”アートのお仕事”(キュレーター/美術史家/評論家篇)

『アートのお値段』に見る ”アートのお仕事”(キュレーター/美術史家/評論家篇)

アーティスト篇に続いて、キュレーター、美術史家、評論家といった、パブリックセクターやアカデミック・スフィアの人々について見ていきましょう。

キュレーターこの映画には美術館キュレーターがほとんど出てこないのですが、作家たちの話にも出てきたように、人類の宝を保管して後世に伝えていく機能を持つ美術館は、業界内で重要な役割を担っています。その中で働く美術館キュレーターは、公共財を築くために日々研鑽を積ん

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『アートのお値段』に見る "アートのお仕事"(ギャラリスト/コレクター篇)

『アートのお値段』に見る "アートのお仕事"(ギャラリスト/コレクター篇)

アーティスト篇、キュレーター/美術史家/評論家篇に続いて、ギャラリストとコレクターについて見ていきましょう。

ギャラリスト作家と協働し、作家のエージェントとして美術館などとも協働しながら、二次市場でのお金の動きも睨みつつ、コレクターに作品を売っていく仕事。だからこのアートとお金というトピックの上ではまさに扇の要のようなポジションです。それにギャラリーは巨大なところから小さなところまで規模も個性も

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『アートのお値段』に見る ”アートのお仕事”(オークションハウス篇)

『アートのお値段』に見る ”アートのお仕事”(オークションハウス篇)

アーティスト篇、キュレーター/美術史家/評論家篇、ギャラリスト/コレクター篇に続いて、今回は二次市場で仕事をする方々の言葉を見ていきます。

1990年代クリスティーズで 今後の戦略を検討しました
なぜなら 巨匠が描いた古い傑作の出品が減少し
アート市場は縮小傾向にあったからです
市場には新しいコレクターが現れました
彼らは若い超富裕層で
新しいものを渇望して探し求めていました
(中略)現代アート

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『アートのお値段』に見る ”アートのお仕事”(番外篇:日本と中国)

『アートのお値段』に見る ”アートのお仕事”(番外篇:日本と中国)

アーティスト篇、キュレーター/美術史家/評論家篇、ギャラリスト/コレクター篇、オークションハウス篇と、映画に登場する人物たちの言葉を振り返りながら、アート業界の仕事を見てきました。

しかし、この映画の舞台はニューヨークーー現代美術もアートマーケットも、もっとも盛んな世界の都市の一つです。また、国が違えば美術に対する考え方も、お金の流れも違います。そこで私の母国である日本の状況と、いま住んでいる中

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