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彼女は純粋に聞いてくる

「見て〜」


お箸の画像が送られてきた。



「もらったの〜」



凄く嬉しそうだ。



割り箸が相場だと勘違いしていた彼女は漆風に黒で染められ、和柄が描かれたお箸に大興奮している。



「新品なんだろうな?」



貰うのは勝手だがただの欲しさに使い回しをもらっている可能性もある。



「もちろんよ!」



とりあえずはよかった。







ーーー







「あーまた午後を無駄にしたわ」


とある企業から面接の招集を受けていた彼女からメッセージが届いた。


面接の招集をかけた企業が彼女に準備していた席がどうやら彼女のやりたい仕事ではなかったらしい。


「もう、どいつもこいつもやってらんないわ」

既に面接を受けずに断った企業が2社もある。

「面接を受ける前に準備している席を聞くべきだったわ。じゃあ面接なんか断ったのに。」

「そうだね。次回から聞くべきだよ。」

この連絡を返すのがしんどい。
でも返信しないとキレてくる。

当たり前のことを当たり前にせず当たり前の結果に当たり前の言い訳をするのがイタリア人。特に南は酷い。

僕の彼女はLinkdenという人材登録サイトに登録をしている。

既に何社からも面接の招集を受けている彼女は優秀だ。

マーケティングを得意分野とする彼女の大学・大学院での成績は抜群で常にトップクラスにいる。

それが故にプライドも半端じゃなく高い。

招集を受けた企業の所在地が少し中心から離れているとその時点で招集を断ったり、席がつまらないという理由で召集を断ることは稀にある。

今回面接を受けた企業はローマの一等地にオフィスを構える企業だ。

だが彼女は企業が準備していた席を聞いていなかった。

即答で「No, grazie(結構です。)」
と言ったらしい。

夕方の微妙な時間からの面接だったため午後を潰されたと怒っている。

夕食に友達と寿司をやけ食いしに行くらしい。


彼女が家に着いて1枚の写真が送られてきた。


「見て〜」


お箸の写真だ。


「もらったの〜」


イタリアには中国人が経営する似非日本料理の食べ放題のレストランがたくさんあり、そこには割り箸や黒の野太いお箸が置かれており、それらのお箸が相場だと勘違いしていた彼女は漆風に黒で染められ、和柄が描かれたお箸に大興奮している。

イメージ図


「新品なんだろうな?」

「もちろんよ」

よかった…

「これ、髪にも使えるじゃ〜ん」

「は?」

あーなるほど。
恐らく、彼女はかんざしの事を言っているのだろう。

「知ってるとは思うけどお箸は本来髪を止めるためのものじゃないからね」

「え、でもジャパンフェスに行った時に見たじゃない!」

「あれは『かんざし』と言って髪を止める専用のものでお箸ではないんだよ!」

「でもみんな止めてるよ?」

中国人がお箸を使って髪を止めてる画像が送られてきた。

「あのな、日本と中国は違うし、とにかくお箸は食器です!フォークやスプーンを髪の毛止めるのに使いますか?使いませんね!そういう事です!」











彼女は純粋に聞いてくるのです。

彼女が日本を知る道はまだまだ続きます。


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