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メンタリングの役割【論文メモ】

突然ですが、3月24日(木)20:00よりHer Pivotフォーラム2022が開催されます。詳細は下記Peatixをご覧いただければと思いますが、なかなか聞くことのできない話を沢山聞ける滅多にないチャンスですので、奮ってご応募ください。

FIBAの基調講演やユーロリーグ、Bリーグで働く女性によるパネルを同時通訳ありで聞く機会はほぼないと思います。スポーツビジネスに興味がある方はもちろん、女性活躍に興味がある方、キャリアに迷われている方など、多くの人にとって実りのある時間になることを確信しています。夜遅い時間にはなりますが、夕食食べながらでも、コーヒー飲みながらでもOK。ぜひ気軽に参加してください!

というのが、今回のnoteの主旨で、以下は最近読んだ論文のメモです。
上記フォーラムの主催者Next Big Pivotの代表者である梶川さんよりある質問を頂いたのですが、残念ながら記憶にもメモに残っておらず、何か出来ることないかなぁと探してたどり着いた論文です。
(質問に対する答えにはならなかったのですが、今まで触れてこなかった分野で興味深い部分もあったので、自身のnoteにメモしておきます)

論文について

The Role of Mentoring for Women in Upper Management in the The Role of Mentoring for Women in Upper Management in the National Basketball Association (NBA) National Basketball Association (NBA)
Manuela Picariello(University of Tennessee, Knoxville)
博士論文(2017年)

こちらの論文をベースとしたと思われる新しい論文がJournal of Global Sport Managementに掲載されているようです。こちらはアクセスフリーではなかったため内容は読んでいませんが、アブストラクトを読む限り、博士論文と結論は同じでした。

論文の概要

博士論文ということもあり、ともかく長いので、結論だけ先に読むのも手です。その場合はP.72からどうぞ。

この論文ではメンタリングがキャリア形成に与える影響について調査するために、NBAで5年以上働いている10人の女性マネージャーにインタビューを行ったものです。
リサーチクエスチョンは下記二つ。

①How do female upper managers in the NBA describe mentoring?
②What role does mentoring play in their development for leadership in the NBA?

Picariello(2017), p.34

上記RQを探るためにインタビュー参加者に6つの質問を行っています。論文内ではその一部が引用される形で著者の結論を補強しています。

ちなみにメンタリング理論はKathy.E.Kramが提唱した理論が現在も影響力を持っているらしく、この論文でもKramの理論に当てはめて考察が行われています。(私はメンタリングについてはド素人なので初めて知りました)

この論文の結論は、

①女性にとって、メンタリングはキャリアアップと専門性を高める機会を支援する重要なツールである、という先行研究を裏付ける結果をインタビューを通して得た。
②両性のメンターを持った参加者は、キャリア支援において重要な「コーチング」と心理社会的支援において重要な「カウンセリング」の機能をいずれも経験し、重要であると捉えていた。
③メンタリングは経歴や年齢、ジェンダーによって組織が強制的に与えるものではなく、本人が望むことで自然発生的に、有機的に実施されるべきである
④メンタリングを長期的に成功させるためには、組織内におけるインクルージョンが重要である

P.72-83

大体この4つにまとめられるのではないかと思います。
もちろん、それぞれに先行研究の補強(もしくは先行研究とは異なる示唆)やインタビューから得られた根拠が細かく説明されています。

興味深かった部分

まず先行研究のレビューで、「メンタリングに関する論文の9割近くは量的研究」という記述があるのですが、驚きました。この論文のようなインタビュー調査が主かと思っていたからです。おそらく内容分析に近い論文が多いのではないかと思っています。インタビュー形式ではなく、アンケート(選択式)を収集し、それを内容分析して傾向をみるといったものではないかと。

特に社会学に近い分野の研究手法とデータは、社会学以外の分野の方および一般の方から、とても不信を買っているので、博士論文ともなれば内容分析+質的分析(インタビュー調査)があればより良いのではないかと思います。ただ著者の記載通り、9割近くが量的研究なのであれば、そこは先行研究に譲ったという見方も出来るかもしれません。

次に、メンタリングはメンターおよびメンティー双方にとってメリットのある関係性でなくてはならない、という点。
言われてみれば当然ですが、前職はメンターとメンティーは会社側が設定し、ほぼ100%職場の先輩がメンターという形でした。ある意味、メンターも「先輩社員になったのだから、当然メンターになる」という不文律のもと、メンターになっていたと思うのです。

論文内でのインタビューでは、メンターも”選ばれる立場”であることが示唆されています。日本企業のメンタリング制度の実態も知りたいなと感じました。(自分の会社にメンタリング制度があるのかないのか知らないので、まずはそこからか・・・笑)

最後に、私は今までメンターは無条件に自分を導いてくれ、困ったときに助けてくれる人、というイメージだったのですが、そうではなくむしろ普段は伴走者として同じ目線に立ってもらい、必要に応じて経験を還元してくれる存在なのかなと認識を改めました。

メンターとメンティーの関係を良好にするために、メンティーには「自分が今どういう立場なのか」「自分はこれからどうなりたいのか」といったキャリアに関する意思が必要です。社会人としてのビジネスマナーやプレゼンの仕方、組織における振る舞い方は教えられても、本人の望みはメンターでも教えることは出来ない、そういうことなのだと思います。

その他、「女性であることが、特に男性が多く働くスポーツビジネス界では不利に働くことがある。しかし、だからといって”女性だからメンターが必要なのだ”という誤ったメッセージを発することは避けなければならない。両性ともにメンターは必要であり、同時にメンターのサポートを必要としない人もいる」という点も考えさせられました。

私が読んだ博士論文はどなたでもアクセス可能のようでしたので、興味がある方はぜひアクセスしてみてください(ただし長いですよ、そこだけは覚悟のうえで)

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