サカイムツミ

自分自身はあまり人に相談をしないのに、人からの相談を受けることを生業としています。読ん…

サカイムツミ

自分自身はあまり人に相談をしないのに、人からの相談を受けることを生業としています。読んだ方が、くすっと笑ったり、少しほろっとしたりする、そんなような記事を書きたいと思っています。 好きな人物はナンシー関、野村克也、イビチャオシム

マガジン

  • 花屋のはなし

    30代の頃、どうしても花の仕事がしたくて、ホテルの花屋で4年ほど働いていました。そのときのエピソードをまとめています。でも、花の話より人の話のほうが多いです。

  • 仕事のはなし(毎月10日ごろ更新)

    キャリアコンサルタントという仕事をしている私から、毎月ひとつずつ、仕事に関する記事をお届けするシリーズです。毎月10日ごろに更新予定です。

  • その愛はベストで確実か?(ドラマ シークレットガーデン考)

    2010年から2011年に放映された、ドラマ シークレットガーデンについて書いています。私は「愛の不時着」に負けず劣らずの不朽の名作と感じています。同じように感じている方に読んでいただけたらとても嬉しいです。 *マガジン画像はNetflixより転用しています。

最近の記事

くちなしとナカイさん

くちなしが満開になっているのを見て思い出した。 ナカイさんは、製薬会社の重役だった。 公家のようなお顔をされていた。 「くちなしは虫がつくでしょう?」 ほんのりした関西の言葉で話す。 何というか、品と可愛げがある方だった。 「いい仕事をすると、いい花が咲きます。ナカイ」 お知り合いの昇進祝いに送った鉢植えのメッセージにそう書いてあった。 独特のかわいらしい筆跡で。 それを見た店のスタッフ全員、心を鷲掴みにされていた。 もちろん私も。 周りの人はきっと、ナカイさんに

    • 玉置浩二という人

      玉置浩二のコンサートに行った。 ファンかと言われるとそうではなかった。でも、フェスなどで彼の後には歌いたくないというミュージシャンが多いという噂を聞いて、一度は生で歌声を聴いてみたいと思っていた。 いったいどれくらいうまいのだろう。 ホールには、私より少し上、50代くらいの方が多い。見る限りごく普通の人たちだ。 コンサートが始まった。意外にも、トークは全くなかった。 とにかく歌う、歌う、歌う。休憩前には何かMCがあるかと思ったがそれもない。 そして休憩のあともひた

      • 人生にツキがある

        浪人して通い始めた予備校には、チューターという方がいた。 いわゆる担任、のようなものだ。 高校までの担任と違うのは授業を担当しないこと。 我々のクラスのチューターはアオキさん。 当時「おじさん」と思っていたが、今の自分より全然若い。 最初の面談が入校後しばらくしてあった。 休みの日はどこで勉強してますか?と訊かれて 「それが、入った寮のすぐ近くに区立図書館があったので、そこで勉強してます」と答えたら、アオキさんは、 「そうですか、それはいいですね。人生にツキがありま

        • 国力ということ

          花屋で働いているとき、そこは有名なホテルのロビーにあったので、普通に生活していたら会えない人を見る機会がたびたびあった。 その中で、一番素敵だなと思った人は、 男性ではアメリカ合衆国のパウエル元国務長官で、 女性ではフランソワーズ・モレシャンだった。 パウエルは、洋服の上からも鍛えた身体がわかり、頭脳の明晰さを人柄が支えているようで、知性が鎧を着ているってこういうことかと思わせる風貌だった。 フランソワーズ・モレシャンの美しさは、言葉で表現するのが難しいけれど、一言で

        くちなしとナカイさん

        マガジン

        • 花屋のはなし
          7本
        • 仕事のはなし(毎月10日ごろ更新)
          3本
        • その愛はベストで確実か?(ドラマ シークレットガーデン考)
          11本

        記事

          質問しよう(6月のひとこと)

          キャリアコンサルタントという仕事をしている私から、毎月ひとつずつ、仕事に関する記事をお届けするシリーズ、 第3回は「質問しよう」です。 4月に入社された方は、3か月目に入って、少し環境に慣れてきた頃でしょうか。そうでない方は、ゴールデンウィークが終わって、夏休みまで少し間があり、ちょっとしんどい時期かもしれません。無理をしすぎず、休みの日は好きな過ごし方をして、自分を労わってください。 さて仕事でわからないことがあったとき、皆さんは他の人に質問をしていますか? 今はネッ

          質問しよう(6月のひとこと)

          京都に行くと思うこと

          京都は東京をうらやましく思っていない。 京都に行くたびに思うことだ。 おおかたの地方都市やそこに住む人は、少なからず東京に憧れや羨望を抱いていると感じるし、 街並みにもその気持ちが反映されているけど、 京都だけは、東京にそういう気持ちを持っていない。 それが京都に行くと感じることだ。 東京のはやりすたりを気にすることなく、京都は京都のフィルターで大事だと思うことを大事にして日々を暮らしている。 きれいに掃除された家の玄関先、玄関先の菊の懸崖の鉢、花屋のディスプレイ、本屋

          京都に行くと思うこと

          ビューティ会

          こんなふうな名前の会に仕事で参加することがあった。季節は初夏だったと思う。 商業ビルのなかの、美容関係の小売店だけが参加する意見交換・情報交換の会だ。 10年以上も前のこと、美容関係だから女性だらけ。 アドバイザーとして参加している関係者や美容ライターもほぼ女性ばかり。 会場で椅子に座りメモを取ったり発言したりと、一応そつなく参加しながら、私はぼんやりと「ビューティな人がひとりもいないな」と思っていた、自分も含めて。 そりゃ立場上みんな身ぎれいにしているし、肌も髪も

          ビューティ会

          インコグニートな日々

          転職した会社には、小言の多いおばあちゃんのような上司と、兄弟のような同僚たちがいた。そして、ひたすら働く日々だった。 この上司の小言は、人格に食い込んでくる。 最初に注意されたのは、電話の出方だった。 「ニワタさん、電話の出方がよくないなあ」 既に社会人生活10年以上、初めて電話の出方で注意を受けた。 「ニワタさんはただでさえクールに見えるんだから、そういう電話の出方をしてると、本当にそういう人だと思われちゃうよ」 え、ビジネスの電話でしょ?クールで何がいけないの?

          インコグニートな日々

          西麻布

          35歳で転職した会社は、西麻布にあった。 表参道の駅から骨董通りを抜けて、高樹町の交差点の先。 大学生の頃、20代の頃、なんどか高樹町の富士フイルム本社の前までは行ったことがあった。 でもそのたびに、見えない結界みたいなものに阻まれて、その先に足を踏み入れられなかった。 お前のような小娘が来る場所じゃないよ、と言われているような気がしていた。 その場所に毎日通うのだと思うと、不思議な気がした。 入社の面接は別の場所にある本社で受けたので、様子がわからず、初出社の日は何を

          ぺらぺら

          会社を辞めようと思ったのは、自分が、ぺらぺらの人間だと思ってしまったからだった。 特にこれというきっかけがあったわけではない。 ほとんど記憶がないくらい、仕事ばかりしていた3年ほどの間は、そんなこと考えもしなかった。 きちんと役割を与えられ、会社に骨を埋めようと思って働いていた頃は、会社員として一番幸せだったような気がする。 自分の仕事にも会社の存在意義にも、何の疑問もなかった。 いつのころからか、会社の名前と自分の名前が、ボンドでくっつけたみたいに分かちがたくなった

          その愛はベストで確実か?(シークレットガーデン考)おまけ

          10回で終わりにしようと思っていましたが、まとめきれなかったことがあり、また終わるのが名残惜しくて、おまけとして付け加えることにしました。楽しんでいただければ幸いです。 ※ネタバレもあります、ご了承ください。 おまけ ■音楽 とにかく音楽の使い方が印象的で素敵です。よく取り上げられる曲以外で私が気になったのは ・第1話、清潭のクラブでジュウォンとウヨンが会うシーンで演奏されているジャズ(ソウルフルでかっこよすぎる演奏) ・その後 ハンテソンが歌う、雨に関する歌(イジュンソ

          その愛はベストで確実か?(シークレットガーデン考)おまけ

          伯母の箪笥

          もう80歳を過ぎた伯母がいる。農家から農家に嫁いだ人だ。 その伯母が嫁入りの時に持ってきた箪笥があるという。 ひとつはふとん箪笥。昔は一般的だったのだろうか、ふとんをしまうための箪笥。 もうひとつは、普通の箪笥だが、上の引き戸がガラスになっており、そのガラスから透けて見えるように、鶴亀の模様の布が貼ってあるそうだ。 私は見ていないのだが、伯母の家で実物を見た妹は「あんなきれいな箪笥は見たことがない」と言っていた。 その伯母の息子、つまり私の従兄が、趣味のギターを弾く

          その愛はベストで確実か?⑩(シークレットガーデン考)

          シークレットガーデンの脚本には、精神分析の大家ジークムント・フロイトの考え方が色濃く反映されているように感じます。今回はフロイトの影響について書いてみます。 ※ネタバレもあります、ご了承ください。 ⑩ フロイトの影響 ■夢 フロイトと言えば夢判断です。ドラマの中ではライムの親友アヨンが話す夢のストーリーが、展開を予言していきます。 「あなたと社長が車でどこかに行くのよ。空は真っ暗で社長が泣いててあなたは寝てた。おじさんがそれを見てるの、赤いバラをもって(第7話)」 「真

          その愛はベストで確実か?⑩(シークレットガーデン考)

          その愛はベストで確実か?⑨(シークレットガーデン考)

          シークレットガーデンには、いろんな本や映画からの引用がスパイスのようにちりばめられていて、これも魅力のひとつだなと感じます。今回はこの、素敵な引用について書いてみます。 ※ネタバレもあります、ご了承ください。 ⑨ 素敵な引用 ■パリの恋人 ウヨンがジュウォンに「「パリの恋人」の真似はやめろ」と言うシーンがあります(第10話)。ウヨンが言うこの「パリの恋人」はおそらく、同じキムウンスクさん脚本のドラマ「パリの恋人」(2004年制作)を指していると思います。ライムとジュウォンと

          その愛はベストで確実か?⑨(シークレットガーデン考)

          その愛はベストで確実か?⑧(シークレットガーデン考)

          シークレットガーデンの魅力は、主役・脇役含めてその登場人物の魅力でもあると感じます。今回は、気になる脇役について書いてみます。 ※ネタバレもありますので、ご了承ください。 ⑧ 気になる脇役 ■パク専務  可愛い悪役として登場するこの方。ジュウォンになったライムが「声がとても素敵ですね」とほめる場面がありますが(第8話)、確かに声がいい。あと、「クリスマスにフラレちまえ」と会議の資料に書くシーン(第14話)、気になってよく見ると、すごい達筆なのです!この方にハングルの書き方を

          その愛はベストで確実か?⑧(シークレットガーデン考)

          その愛はベストで確実か?⑦(シークレットガーデン考)

          シークレットガーデンの魅力は、主役・脇役含めてその登場人物の魅力でもあると感じます。今回は、主役のひとりキムジュウォンという人について書いてみます。 ※ネタバレもあります、ご了承ください。 ⑥ キムジュウォンという人 この人は、容姿端麗・頭脳明晰・財閥の御曹司と、いろいろなものに恵まれて育っていますが、唯一足りないもの、それが親からの無条件の愛、だと思います。(キルライムが父親からもらっていたのが無条件の愛だったのと対照的)。 母プノンは彼を愛しているように見えますが、そ

          その愛はベストで確実か?⑦(シークレットガーデン考)