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魅惑の色彩 天才の描線 光琳×蕪村 金襴手×乾山:3 /東京黎明アートルーム

承前

 この展示は師走の、もういくつ寝ると……といった時季まで開催されていた。そんなタイミングも考慮してか、おめでたさを感じる展示作品もちらほら。

 古伊万里金襴手の華やかなうつわには、ありとあらゆる吉祥の文様が金彩を用いた密な構成で配されており、ハレの場にはふさわしい。俗に「赤玉」と称される鉢など暖色系の上絵を施すものが多く、寒さ厳しい折の宴席には打ってつけといってよい。

 地階の展示室に出ていた光琳の軸物2点は、水墨の小品。
 いずれも簡素な筆致で、細部を描きこまないあたりに、かえって筆技のたくみさを感じさせる佳品となっている。
 この2点のお軸も、お正月にはふさわしい。
 まずは、大黒様。

 カワイイ。
 誰でもひと目で心奪われてしまうような、愛嬌のあるお姿だ。

 本紙の寸法は、短冊を横に3枚並べたほど。そこにちょろちょろっと描かれているのである。このサイズ感が、とてもよい。
 ツイッター投稿でも紹介されているように、この大黒さんは缶バッジ化されていた。
 なるほどたしかに、正円のなかにうまくおさまる構図であるし、持ち歩きたくなるようなマスコット的な愛らしさだ。おめでたくもある。じつに缶バッジ向き。
 缶バッジを机上に置いて毎日見ていたら、あるとき、大黒さんが担いでいる袋の線のおもしろさに気がついた。右から起筆して、するっ、する……と、けっして急がずに筆を動かしていく。鷹揚な筆遣いだ。
 頭巾や打出の小槌、靴に差された濃い墨も、よいアクセントになっているなと感じた。
 見るたびに味が増していくような絵だと思う。

 類似の作はMIHO MUSEUMにも所蔵されている。

 こちらの大黒さんは、腹に一物を抱え、なにやらたくらんでいそうな顔つき。東京黎明アートルームの大黒さんは、頭身が一気に下がり、筆致も簡略、なにより笑顔にキャラクター的な親しみがある。個人的に友達になりたいとすれば、こちらのほうか。

 隣には、宝船の絵もあった。

 海原を無人(神)で疾駆する宝船。
 これまた、自在な筆遣いだ。奔放な波は、大黒さんの袋の線と通じるところがある。これぞ、展覧会名にもある「天才の描線」。

 どちらのお軸も、お正月の床飾りとして重宝されてきたことだろう。年越しを前にして、おめでたいよいものが観られてうれしかった。(つづく)


※私事ですが、スマホを紛失しました……昨日更新がなかったのはその影響。どうしたものか……
 →無事見つかりました。ご心配をおかけしました。


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