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魅惑の色彩 天才の描線 光琳×蕪村 金襴手×乾山:1 /東京黎明アートルーム

 中野の東京黎明アートルームでは、江戸絵画や中国・日本の古陶磁を中心とした展示が、ほぼ1か月間隔のハイペースで切り替わる。10月の末にうかがった「特別展  浦上玉堂」が数少ない例外で、ふだんは館蔵品のみで展示を回している館である。
 今回の展覧会は「魅惑の色彩  天才の描線 光琳×蕪村  金襴手×乾山」。絵画とやきものの二本立て/趣の異なる二者を組み合わせる手法は、この美術館では定番のスタイルだ。
 意外なコラボレーションは、異種格闘技戦的なせめぎあいあり、予期せぬ化学反応ありで楽しい。コレクションの幅の広さ、お蔵の深さを同時に感じさせる点もまた好もしい。さらに、展示スペースが適度で集中力を切らすことなく鑑賞ができるところもよくて、お気に入りの美術館のひとつとなっている。

 開館は2015年だが、それ以前から図録や出版物に「TOREKコレクション」という所蔵者名がちらほら出ていることには気がついていた。
 なかでもその名前を世に最も知らしめたのは、与謝蕪村の名品《峨眉露頂図巻》(重要文化財)だったろう。MIHO MUSEUMの蕪村展にも、前身の「TOREKコレクション」名義で出品されていた。
 本展は、最も知られた所蔵品といってよい《峨眉露頂図》が展示される、年に一度の機会。思い返せば、わたしが初めてこの館に足を運んだのも《峨眉露頂図》を観るためだった。久々のご対面となる。
 さらに、蕪村に加えて光琳、乾山、肥前磁器の金襴手まで同時に観られるというのだから、一度で二度三度おいしいことになる。
 展示の冒頭を飾ったのは乾山焼の名品の数々であったが、やきものの話となると調子に乗って長くなってしまうので、話ついでにまずは件の《峨眉露頂図》からはじめるとしたい。(つづく


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