見出し画像

ゴッホと静物画 ―伝統から革新へ:1/SOMPO美術館

 パンデミックにより開催取りやめの憂き目に遭った展覧会が、続々と復活を遂げている。
 現在開催中のものでいえば、国立科学博物館の「和食  ~日本の自然、人々の知恵~」、そして本展・SOMPO美術館の「ゴッホと静物画 ―伝統から革新へ」が挙げられる。

 ゴッホの《ひまわり》で知られる、西新宿のSOMPO美術館。設立母体の名称変更にしたがって、これまでに幾度も館名を変えてきた。かつての名称で記憶されている方が、かなり多いのでは。

・東郷青児美術館(1976年~)
→安田火災東郷青児美術館
→損保ジャパン東郷青児美術館
→東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
→SOMPO美術館(2020年~現在)

 ご覧のごとく、保険業界の再編に大きく振り回されてきた。いまとなっては「損保ジャパン」の看板がとれていてほんとうによかった……といった感もあるが、2020年の改称がこれまでと大きく異なるのは、移転をともなっていること。
 本社ビルの隣接地に美術館だけの建物が新築され、開館以来の本社ビル42階から移転。40代になって、念願のマイホームを得たわけだ。写真・右手前が美術館棟。

 ※プランの初見時は「こんなところに土地あったの!?」と驚いた。

 鑑賞ついでに東京の眺望を楽しめなくなったのはちと残念ながら、美術館の扱いが格上げされたともいえそうで、関係者でもないのに鼻高々だった。

 この建物のお披露目は2020年5月28日に予定されていたものの、緊急事態宣言により延期。解除後の7月にずれこむとともに、秋に予定されていた本展は中止となった。
 忘れかけていた頃、捲土重来の報が入ってきた。同じ秋、ぴったり3年後に会期が設定されたのである。

 そんな本展は「静物画」に焦点を定め、館蔵の看板作品・ゴッホ《ひまわり》をメインに据えた、この館ならではの企画。オランダのクレラー=ミュラー美術館やファン・ゴッホ美術館をはじめ、国内外から静物画の油彩25点が集結している。
 大規模なゴッホ展は、2021年の東京都美術館「ゴッホ展─響きあう魂 ヘレーネとフィンセント」以来。
 上野の展示室では、他の作家の作品がゴッホ作品と章を分けるかたちで20点ほど出ていたけれど、今回は44点、ゴッホ作品と混ぜて展示されていた。ゴッホがどのような絵に接し、影響を受けたかが、画題ごとにわかる構成となっていたのだ。
 アプローチにひとひねりが加わった新宿のゴッホ展を、振り返っていくとしたい。(つづく

 ※上野のゴッホ展のレビュー。


バショウとイチョウ、それにシュロ。
小石川植物園にて



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?