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インターネットの向こう側にいるのは誰なのか〜自分と同族だと勘違いしてしまう認知バイアスの話〜

今日は電話対応、ネット対応が多いお仕事をしている方向けの記事です。


メルカリでよくものを売っています。

本格的に始めたのは昨年末あたりからなので、まだまだ勉強することも多いのが現状です。

なので日頃から、他の人が何をどんなふうに売っているのか、またどんな対応をすると「悪い」の評価をもらってしまうのかなど、よく観察するようにしています。

その中で気になるのが、購入者が販売者からもらう「悪い」の評価の内容なのです。

「購入後、一度も連絡がなく不安なお取引でした」
「なかなか評価連絡をしてもらえなかった(*)のでこの評価です」

*メルカリは購入者が評価連絡をして、初めて販売者に売上が渡るしくみになっている

このような、商品うんぬんの話ではなく、取引そのものに関するクレームがけっこう多いんですよね。中には「二度と取引しません!」と激昂したような文面も目にします。

まず、「購入後いちども連絡がなく不安なお取引でした」に関しては、正直「いやほんとか?」という気持ちです。

メルカリって基本的に、コメントのやり取りを行わなくても発送から受け取りまでができる仕組みになっています。

メルカリが推奨する発送方法を選べば、荷物が今どういう状況なのかが取引ページで一目瞭然にわかるようにもなっています。不安になることなんて何もありません。

なのでただ単に「こっちが挨拶したのに返さないのは不愉快」っていう、腹いせの評価にしか見えないんですよね。

売り上げが入らないから評価連絡を早くしてほしいっていうのもわかります。

だけどこの評価連絡って発送から9日以内にしなければならないと期限が決まっていて、その期限が過ぎたらメルカリが強制的に終了し、売り上げが入るシステムになっています。待っていれば必ずお金は入ってくるのです。

私もビジネスとしてやっているので焦る気持ちは痛いほどわかります。

が、それを評価に反映させてしまうのはいかがなものかなぁと思ったりします。

それに、相手にもいろんな事情があるかもしれないですよね。

「挨拶がない」しかり「評価連絡がなくてうんぬん」しかり、もう少しネットの向こう側にいるのがどんな人なのかを想像してみてもいいんじゃないかなってよく思うんです。


属性が違えばコミュニケーションの仕方も変わる

顔の見えない相手と取引するときに違和感を感じたら、想像力を働かせることが大事だと思っています。

やりとりする相手は、必ずしも自分と同じ属性、あるいは自分が想像する属性(性別・年代・職業・国籍など)とは限りません。

そして属性が違えば考え方やコミュニケーションの取り方も違ってきます。


出入国在留管理庁の資料によると、日本には現在351万人の外国人が暮らしているそうです。

その人たちはもちろん日々の暮らしに買い物が欠かせないわけで、実店舗だけでなくネットショップやフリマサイトなどを利用することもあるでしょう。

中にはまだ日本語がそれほど上手くない人もいるかもしれません。上手く話せないからこそ実店舗じゃなくネットショップを利用するのかもしれません。

もし自分の商品を買ってくれた相手がこんな人だとわかっていたら、冒頭の販売者たちのうちのどれぐらいが「ちゃんと挨拶しろ」ってコメントをつけるでしょうか。

おそらく購入者の背景を知ったら、半分以上の人が「仕方ないか」って思うんじゃないかと思います。


また、シニア層のスマホユーザーも近年大きく拡大しています。

MMD研究所の調べでは、2012年にスマホを使っていたのはシニア層のおよそ12%だったのに対し、2023年には90%を超えています。

MMD研究所ウェブサイトより

スマホに慣れてくるうちに、ネットショッピングやフリマサイトで商品を買う機会も増えてくるでしょう。

現に私から購入してくれるお客様の中にも、60代以降と思われる女性がときどきいます。

孫に買ったとか、昔を思い出して懐かしくて買った、などのコメントから想像したことにすぎませんが、若者でないことはまず間違いありません。

いくらスマホに慣れてきたからといって、このような年代の人たちが若い世代のようにいち早く返信をしたり、アプリを使いこなせるとは限りません。むしろ全く期待できません。

気を利かせて「スマホは不慣れなのでご容赦ください」などと自己紹介に書き込める購入者がいたらかなり上級者です。

そんなことをつゆ知らず、相手は自分と同じようにスマホやアプリを使いこなせると思っていると、

「なぜ返事しない?」「なぜ評価連絡をしない?」と怒りが湧いてくる。

仮にこうやって怒っている人が、白髪のおばあさんとやり取りしていることに気づいたら、同じことを言うのでしょうか。たぶん多くの人は言わないですよね。


「相手は自分と同族だ」と思ってしまう認知バイアス

SNSやフリマサイトなどで知らない人と取引をする際、よほど意識していないと、私たちはつい「相手は自分と同族だ」と思ってしまう、そういう認知バイアスがあります。人間の癖みたいなものです。


相手のことがわからないとモヤモヤしますよね。

そのモヤモヤを埋めるために、私たちは自分自身の属性や、経験や、価値観を「きっと相手も同じだろう」と投影してしまうことがあります。

「相手も自分と同じような、20代で昼間に働いて夜には家に帰ってくる、日本人の独身女性だ」などという勘違いが起きてしまうんですよね。

そうやって自分と似た属性だと思い込むことで、安心してコミュニケーションができるようになるんです。不安を回避するために埋め込まれたプログラムみたいなものなのでしょう。

加えて私たちはつい、自分が常識、自分の考え方は普通だ、と思ってしまうきらいがありますよね。

そうした思い込みも、相手の行動を非難する原因になりえます。

メルカリ上で「挨拶をするのは常識だ。してこない相手はおかしい」と怒るのはその典型例ではないでしょうか。

ヤフオクやイーベイではほとんどの人が挨拶なんてしてこないんですよ。

買い物をしたら挨拶を交わさないといけないなんて文化、メルカリぐらいじゃないですかね。

それが世の常識だと思っている人の怒りはなんとも理不尽です。


ネットの向こうにいるのはどんな人なのかを想像しよう


そんなわけで、知らない相手と対峙するときに、少し冷静になって「相手は自分と全く違う人かもしれない」と考えることができればまた違ったものの見方ができると思うんですよね。

もしかしたら、自分と違ってすごいおじいさんかもしれないとか、健常者じゃないかもしれないとか、いろんな想像が働くと思うんです。

そもそも、自分と相手は文化や考え方が違って当たり前なんだから細かいことでイライラするのはやめようと思うかもしれません。

反対に、コミュニケーションにちょっと違和感を持った時点で、「何かあるのかな?」と想像をはたらかせ、より丁寧な対応を心がけられるようになるかもしれません。


もちろん、どう考えても想像が及ばないこともあります。

実は以前こんな記事を書いていまして。

ヤフオクで取引する外国人が、落札したのにお金を払わない、商品が届いたのに到着ボタンを押さない(これやってくれないと売上が入らない)のに?困っているという話でした。

メルカリの話と違うのは、相手が過去ヤフオク上で何千回、何万回と取引をした実績のあるベテランの業者だということがほぼ確定している点です。

だから「ちゃんとしてほしい」と言う話をしたんですね。


もしかしたら何か事情があるのかもしれないけど、私の頭では想像に及ばなくて、中国通の日本人の方にも聞いたけどやっぱりわからなかった。

こっちも仕事だし、あっちも仕事なんだから、ほんとせめて最低限の仕事だけはしてくれって今この瞬間も思っています。

でもメルカリの場合は取引に不慣れな個人が非常に多いことがわかっています。それは評価数を見てもわかることです。

あるいは一般的なネットショップのお客さんや、お店に問い合わせてくるお客さん、ネット上で何かを依頼してくる人とかも、基本的には素性のわからない人だと思います。

世の中いろんな人がいるんで、少し想像してみてもバチは当たらないんじゃないですかね。

個人同士の取引ならまだしも、私たちのようなお代をいただいてご飯を食べているような者ぐらいは、少しだけ頭のすみに入れておいてもいい気がします。

それではまた次回☆

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