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新兵庫〝珍百景〟Ver.5

  こんにちはド・ローカルです。お馴染みとなった新兵庫〝珍百景〟。「次回シリーズはいつアップされるのですか?」など、多くの方から、いやもとい。まあまあ多くの方から声か寄せられましたので、期待に応え、第5弾いってみたいと思います。
 今回は2019年に電子版「神戸新聞NEXT」でもかなり読まれた「妖怪ベンチ」=冒頭写真、「60度傾いた松」、「月イチしか出合えない跳ね橋」、「石畳にカメ」の4本を〝珍百景〟に認定しました。まずは透明人間が座る、妖怪ベンチからどうぞ!

 JR福崎駅近くの「福ふく温泉」。ひとっ風呂浴びた後の出入り口で「雪女」に出会った。ベンチの中央で正座を崩し、やや体を傾けている。アイスキャンデー「ガリガリ君」のように青白い体に冷気を感じつつ、隣のベンチに目を移すと、傍らに「透明人間」の立て札がある。
 福崎町は近年、町内各地に「妖怪ベンチ」を設置している。雪女に続く新作なのか。立て札には「愚か者には見えない透明人間 あなたには見えますか?」。挑発に乗り、虚空を見つめて10秒。だが、木材の木目があるだけだった。
 諦めて座る。思えば幼い頃、投手と捕手と打者しかいない野球で、いつも塁上の走者を担ってくれたのがアイツ。そう、塁に人がいることにする「透明ランナー」だ。懐かしんでいると、隣でアイツがほほ笑んでいるように思えた。

(2019年5月26日付神戸新聞朝刊)

雨ニモマケズ 倒れないマツ 神戸・再度公園

60度傾いたマツ=神戸市北区

 雨ニモマケズ、風ニモマケズ…。この木を見つけた時、宮沢賢治の有名な詩が浮かんだ。
 神戸市北区山田町下谷上の再度公園内にあるマツの木。長さは20メートルほどで、周りのほとんどのマツが真っすぐ育っているのに、この1本だけが60度ほどに傾いている。
 「災害か何かで、倒れかかったのでしょうか」。公園を管理している森林整備事務所に尋ねてみると、「確かに不安になる傾きですが…」と同事務所長。「でも、倒れてません。この木が長い年月風雨を耐え抜いた証しでしょう」と笑う。
 どんな天災にも負けず倒れないマツ。「私も社会の荒波に負けない人間になりたい!」。六甲山の山中で自身に固く誓い山を下りた。

(2019年8月29日付神戸新聞朝刊)

出合えば幸運?機会は月1回! 尼崎の跳ね橋

 カンカンカン―。尼崎市の臨海部を運転中、踏切が鳴って停車した。あれ、線路はないけれど…と次の瞬間、思わずのけぞった。目の前の車道がせり上がってくるじゃないですか!!
 坂道はぐんぐんきつくなり、立ちはだかるようにほぼ直角に。何かの発射台か。車を降りて回り込むと全容が分かった。
 1966年完成の跳ね橋「東高洲橋」。県によると、かつては車道下の運河を頻繁に船が往来。橋は何度も跳ね上がって工業地帯を支えた。輸送の大半が陸上に移った今、活躍を見られる機会は月1回程度という。
 「車道の跳ね橋は県内でここだけ。運がいいですね」と担当者。「いえ、端(はし)から見ては何が何だか…」。あれ、掛(架)かってます?

(2019年8月19日付神戸新聞朝刊)

石畳にカメ!! 神戸ハーバーランド

 神戸ハーバーランドのはねっこ広場にカメがいる? 全く動かない? そりゃ大事件だ!
 どれどれ…。うーん、カメカメしてない(実在のカメとは違う)けど、これは確かにカメだわなあ。形態からすると、イシガメかクサガメの仲間かなあ。
 普通の石畳の一角になぜカメがいるのか。問い合わせても分からんかったって、そりゃそうやろ。設計図にもない、現場の作業員の思いつきだと思うよ。
 ちょっとした遊び心。世の中へのかすかな抵抗感。コンプライアンスが闊歩(かっぽ)する時代だからこそ、いいよなあ、こういうの。バーンと取り上げたってよ!
 ―以上、ウミガメ研究の権威、須磨海浜水族園の亀崎直樹・学術研究統括の談でした。

(2019年4月3日付神戸新聞朝刊)

 <ド・ローカル>
 1993年入社。新認定の珍百景4件いかがだったでしょうか? 妖怪ベンチと60度傾いたマツ、石畳のカメは、動かないので取材は比較的スムーズだったのですが、跳ね橋は月イチにしか開かないので、写真を2度、取り逃し、3カ月近く撮影に要するなど少し苦労したようです。

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