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百物語 第十一夜~第二十夜

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百物語 第十一夜から第二十夜までをまとめたマガジンです。
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記事一覧

百物語 第十二夜

西棟校舎、三階の女子トイレ。
その左から数えて3つ目の個室。
夏休み、登校日にすると決めていた約束。

西日の射し込むトイレはこもった空気は息苦しく、だけれどもその不快ささえふたりには楽しみとなっていた。

「あとどれくらい?」
「あと3分で6時だよ!」

西棟の三階の個室に夕方6時に花子さんが出るというふたりの通う小学校に伝わる七不思議。
ありふれた学校の七不思議。
けど、ふたりには

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百物語 第十四夜

 小学生の頃、父の車に乗って、家族全員で遠出をしたことがあった。

 もう二十何年も昔の話になるから、それ自体の記憶はほとんどない。

 覚えているのは、帰り道のことだけだ。

 夜だった。

 父が運転をし、母は助手席に乗っていた。私たち…私と姉と妹は、後部座席に並んで座っていた。

 寝つきの良い姉と妹は早い段階で眠りについていたが、普段から眠りの浅い私は、疲れているのに変に目が冴えてしまって

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百物語 第十五夜

女性が隣についてくれるような店でその女性と上手く話が噛み合ない時に、遊び慣れていない子供みたいで恥ずかしさはあるけれど、「ねえねえ、霊感ってある?」なんて話をしてみることがある。

これまでの会話が弾まなかった女の子に限って、心霊話には盛り上がることはよくあることだ。

ただ彼女たちの話す実体験談や友達の話は、どこかで聞いたことがある内容で、聞きながらそんなもんだよな、と思うことが多い。

それで

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百物語 第十六夜

九州のK県N市に住んでいます。

時々遊びに行くよりほかは、九州を出たことがなく、N市以外のところに住んだこともありません。ちいさな田舎町ですが、個人的には住みやすく気に入っています。

県内の女子大を卒業後、隣の市のモールに就職したのを機に、携帯の契約を親から自分に変えました。

新規契約にしたので、番号など一新され、友人知人には知らせましたが、そのほかの通販サイトなどは面倒で、なんとなくそのま

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百物語 第十八夜

お盆に帰省をしたときのことだ。

妹夫婦とその甥とでショッピングモールへ出かけることとなった。
年に一度くらいしか甥とは会うことはない。けれどちゃんと向こうは覚えているようで、俺に構ってほしがっている様子を見るとついつい甘やかしてしまう。

この時も甥と二人でショッピングモールに入っているおもちゃ屋の中をぐるぐるとまわり、ひとつだけと約束したプレゼントを探していた。
甥はショウケースに張り付き、そ

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百物語 第十九夜

母の友人のご婦人の話である。

数十年前、旦那さんの転勤で山あいの村に引っ越した次の日の朝、玄関先にちょこんと、見慣れぬ碁石のようなものが置かれていたらしい。

拾い上げてみると、外側は碁石のようだが、内部のほうに輝きが見えた。その時は特別何とも思わなかったそうで、不思議な石だなあと思いながらも、庭先に放っておいたそうだ。

だが、そのあくる日も…ふたつ、横に並べるようにして、また石が置かれていた

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百物語 第二十夜

小学生の頃、クラスメイトの女子に霊感があると自称する子がいた。

休み時間にそれぞれのグループで遊んでいると、ふと混ざってきては、「昨日の夜こんなお化けが出たんだよ」と一方的に怖い話をしてきた。
ある時には授業中にも関わらず急に席を立ち、「ほら、あそこ見て!血だらけの女の子がいる!」と校庭を指差した。

そんな具合なので彼女には友達がひとりもいなかった。

いま考えてみれば、クラスで話題の中心にな

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