2022年4月の記事一覧
疲れた時は芥川が良い
作家は疲れてくると会話文が増え、つい「と云って煙草を吸った」とか「と云って笑った」とやたらと煙草を吸わせ、笑わせるようになると書いていたのは井上やすしの『自家製文章読本』だっただろうか。谷崎の会話ばかりの作品を続けて読んでいると、どうもこちらが疲れてくる。そういう意味では『鮫人』も『月の囁き』もどうも描写が良くない。『鮫人』は説明で、『月の囁き』は絵になっていない。この点夏目漱石がいかに飛びぬけ
もっとみるシンプルな読みに向けて
これまで私は夏目漱石から谷崎潤一郎までのいくつかの作品について、何か書いてきた。それを「新解釈とは言えないまでも私なりの感想のようなものをまとめてみました」とでも書いてしまえばいささかでもお行儀が良かろうものを、私は「宇宙で初めての新解釈です」と云わんばかりに書いてきた。これはどう考えても私なりの感想のようなものではない。現に、『途上』のからくりにさえ、誰一人気が付いていなかったのではないか?
もっとみる