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芥川龍之介論2.0

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2022年4月の記事一覧

作家にとって思想とは何か③

作家にとって思想とは何か③

 牛肉が安かったので今夜はすき焼きにしようと考えた。長ネギと、切れ目の入った椎茸は既に家にある。しらたきと焼き豆腐を買おうと豆腐専門店に行ったらそもそも焼き豆腐がなかった。コンビニにはない。スーパーにはある。そこでふと考えた。何故焼き豆腐は普通の木綿豆腐の三倍以上の値段で売られているのかと。
 グーグルに質問してみて驚いた。グーグルは音声として「焼き豆腐」を認識しないのだ。当然文字では認識する。つ

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芥川龍之介の天皇論

芥川龍之介の天皇論

 これまであまり真面目に論じてこなかったが、芥川龍之介にもそれなりの天皇論、維新観というものが勿論ある。あるけれどもなかなか指摘されてこなかった。

 これは芥川の言ではなく、大久保湖州の『家康と直弼』のそのままの書き抜きではあるが、わざわざ書き抜いたからには、ここに芥川の意思が働いていることにはなろう。

 芥川は批判のために引用したのではなく、この文章を賛美しているのだ。そこで天の声と書いてみ

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疲れた時は芥川が良い

疲れた時は芥川が良い

 作家は疲れてくると会話文が増え、つい「と云って煙草を吸った」とか「と云って笑った」とやたらと煙草を吸わせ、笑わせるようになると書いていたのは井上やすしの『自家製文章読本』だっただろうか。谷崎の会話ばかりの作品を続けて読んでいると、どうもこちらが疲れてくる。そういう意味では『鮫人』も『月の囁き』もどうも描写が良くない。『鮫人』は説明で、『月の囁き』は絵になっていない。この点夏目漱石がいかに飛びぬけ

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シンプルな読みに向けて

シンプルな読みに向けて

 これまで私は夏目漱石から谷崎潤一郎までのいくつかの作品について、何か書いてきた。それを「新解釈とは言えないまでも私なりの感想のようなものをまとめてみました」とでも書いてしまえばいささかでもお行儀が良かろうものを、私は「宇宙で初めての新解釈です」と云わんばかりに書いてきた。これはどう考えても私なりの感想のようなものではない。現に、『途上』のからくりにさえ、誰一人気が付いていなかったのではないか? 

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