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牧野信一論2.0

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記事一覧

牧野信一の『嘆きの孔雀』をどう読むか⑦ 月光姫か

 前回は芥川が金の話ばかりしていると書いた。  そんなこともないな。季節感がなくなってい…

小林十之助
1か月前
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鏡花の弟子? 牧野信一の『嘆きの孔雀』をどう読むか⑥

 これは「私」が美智子と艶子さんの二人に向かって「そういう話」をしているのか、本当に四人…

小林十之助
1か月前
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割とリアルだ 牧野信一の『嘆きの孔雀』をどう読むか④

 ※期間限定のポイントが余っている人、これ買って。↑  若い男女が歩いていた。どちらもス…

小林十之助
2か月前
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その理由は後で解るだろう 牧野信一の『嘆きの孔雀』をどう読むか③

 一昨日はこれまで読んできた牧野信一の小説には当たり前のように父がいないということを書い…

小林十之助
2か月前

母はいる 牧野信一の『嘆きの孔雀』をどう読むか②

 見違えるほどに生い茂った砂浜のカラスは、革命家気どりの電化製品によってお試し期間を待た…

小林十之助
2か月前

すらすら書くなあ 牧野信一の『嘆きの孔雀』をどう読むか①

 さして季節感のない軽はずみな苛立ちによって、セイタカアワダチソウの穂先は軽くひしゃげ、…

小林十之助
2か月前
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割合に呆然とした 牧野信一の『凸面鏡』をどう読むか⑧

 割合に呆然とした、  指先から羞恥知の果に落ちて、   完全にわからないわけではないが完全には解らない。まだ直腸にうんこが半分残っている感じだ。下半身を蛇に飲み込まれて仕えているカエルのようなものだ。  やがるでえ、は中里介山、小栗風葉、神田伯山他使用例があるが、少なすぎて江戸弁とも決めかねる。それにしてもこの感情のふらふらした様子にはついていけない。  どうしてほしいのか分からない。せめて肉欲の方に流れればわかる感じがするのだが、どうも精神に留まっている。その感じ

何てえ人でせう! 牧野信一の『凸面鏡』をどう読むか⑦

 新しく取り換えたばかりのマウスのように、牧野信一の文章は距離が測りかねる。こちらが如何…

小林十之助
2か月前
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?の発音は無理 牧野信一の『凸面鏡』をどう読むか⑥

 昨日は道子の恋文で鼻を噛んだのは兄ではないかと誤解されているのではないかと書いた。もう…

小林十之助
2か月前

前は違ったのだ 牧野信一の『凸面鏡』をどう読むか⑤

 昨日は牧野の設定崩しに振り回された。  ちょんちょん軽めの足払いでけん制しておいて、掴…

小林十之助
2か月前

まだ兄弟がいるかもしれない 牧野信一の『凸面鏡』をどう読むか④

 昨日は、凸面鏡で親友の姿が歪み「鼻でか」が現れたと書いた。それにしても日本アイスクリー…

小林十之助
2か月前
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予測できたはずなのに 牧野信一の『凸面鏡』をどう読むか③

 結局人間の感情などというものは言葉で捉えたつもりでもそこから少しずつずれているものだ。…

小林十之助
2か月前
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グワーンと鐘が鳴る 牧野信一の『凸面鏡』をどう読むか②

 三島由紀夫はそんなことを書いてみる。生殖は人間の生々しい一面であり、生物の本質だからだ…

小林十之助
2か月前

十五秒足りない 牧野信一の『凸面鏡』をどう読むか①

 この作は大正八年四月のものとされているので、『ランプの明滅』よりも先に書かれた可能性が高い。  そしていきなりのホモフォビアのような、ホモのような話である。  しかし「僕が若し女ならば」と書いてあるので、ホモではないな。  気持ちの悪いと言いながら笑っているからホモフォビアでもない。  親友の「生命を棄てゝも君に恋をして見せるよ」という言葉は『春の雪』の最後で本多の手を握る松枝清顕よりもからっとしたもので、よく考えてみると何とか清顕の親友としてとどまろうと微妙に距離