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バリバリ運動していたシニアの上級者が退会した理由~運動したつもりになっちゃうプールのこと~

ども!長野県長野市にあるフィットネスクラブの支配人をしているこばやしです。クラブは善光寺まで歩いて行ける距離にあります。シニア向けのフィットネスクラブや子ども向けスイミングの運営をしたり、万が一の時に役立つ救急法の普及活動もしています。学生時代水泳部からの水泳経験を生かして、プールでレッスンもやっています。

競合ひしめく長野市のフィットネス業界でどこも生き抜くことに必死だったところにコロナの追い打ち。「選択と集中」でこの荒波を乗り切ってやろうと今年1月にシニア向けクラブにコンセプトリニューアルオープンしたフィットネスクラブのお話です。

今回は、運動したつもりになってしまうプールのお話。運動はただやればいいのではなく、理解して運動することが大切。しかもプールでは、下手したら、逆に体を弱ってしまいます。これを読んでいる方、またはご家族でプールで運動をしている方がいたら是非ことを伝えてください。

バリバリ運動していた70代の会員様が退会した理由

今から15年近く前、上級でバリバリ練習されている方が退会した理由は、驚くことに脚が弱くなったからでした。

その女性は70代。プール歴は15年以上になります。もともとは、泳げなかったのですが、60歳のころからコツコツ泳ぎを習い、自分でも頑張った結果、上級クラスで泳げるようにもなりました。マスターズという水泳大会にも出たほどです。

ある時、その女性がしばらくいらっしゃらない時期がありました。心臓の病気になって入院していたとのことです。そして、退院はされたのですが、ご本人から退会したいと申し出があり、もうクラブには通えないとのことでした。原因は、入院中に脚の筋力が一気に弱くなってしまい、日常生活も大変になってしまったとのことでした。

突然、入院しなければいけなくなっても、それまでの筋力が十分にあれば、入院中に筋肉量が減っても回復は早いのですが、脚の筋肉量がもともと少ないと一気に筋肉がやせ細って、「病気は治ったのに歩けなくなってしまう」という事態になります。この女性は、もともと脚が細い方でしたので、他の偏りももっと筋力低下してしまったのかもしれません。

でもなぜ、運動していたのにそんなにも筋力が落ち、自立できないほどに脚が弱くなったのか・・・運動していたのだから回復も早そうなのに・・・

答えは簡単。プールでの運動で脚を使わなかったです。これ、実は上級者の方に見られる傾向。うまい人ほど脚を使わないで泳いでしまいます。

健康のためにプールへ行ったからと言って運動にならない真実

なぜ、バリバリ泳ぐ上級者が脚を使わないかというと、水には浮力があり、スムーズに進むためにはストリームラインと言って、体を水平にして、流線形にすることが基本です。このフォームがとれたら、少ない力でも楽に進むことができます。

例えば、一枚の発砲スチロールの板が水に浮かんでいるとしましょう。その板を、指で軽く押したとしたらどうなるでしょうか。

すーーっと水の上をすべるように進みそうですよね。

では、その発砲スチロールが真ん中を境にして90度水面下に折れ曲がっていたとしたらどうでしょうか。さっきと同じ力で指で押しても、水面をすべるようにすーーっとは進みそうにありませんよね。

物は水の上に水平に浮かぶと少ない力で進めます。なので、下手に脚を動かすことでひざが曲がり抵抗が生まれ進みにくくなるよりも、脚(キック)は最低限の動きにとどめ、腕(プル)グイグイ進んでいったほうが、楽に気持ちよくすーーーっと進むのです。

これは、楽に泳ぐためのテクニックにはなるので、上級者になればなるほど楽に泳げてしまいます。

当然、上半身は使っているので上半身の運動と心肺機能の運動にはなっています。ですので、全てダメという事ではないのですが、脚を鍛える意識がなく、こればかりを行ってしまうと逆に脚が弱くなっていってしまい、どんどん細くなります。

長く楽に泳げるため、心配持久力向上にはいいかもしれませんが、キックだけの練習をしたり、いつも数本は全力でキックだけをやるとか、水中ウォーキングでしっかり水を蹴り上げたり、または、ジムで脚のトレーニングをしたり、走ったり、歩いたり・・・そういった脚の運動を意識して行うことがとても重要です。

また、プールは水の特性上、浮力で浮かべてしまうので、自分で意識して動かなければ、少ない力で移動ができます。水中ウォーキングをやられる方もよくいらっしゃいますが、ここが理解できていないと、歩幅が小さく、水の抵抗を受けずに歩くようになり、運動をしているつもりでも全く運動になっていないこともあるので注意が必要です。

この女性の脚を弱くしてしまったのは私のせいでもある

本来、こういった警鐘を指導者が常に鳴らして、利用者に伝えるべきだったのですが、当初私は、お客様のニーズである「楽にかっこよく泳ぎたい」をかなえる事だけを考えていて、なんのために水泳をやるかの意味を考え合ったり、水泳を通じてどうなりたいかを話したり聞き取っていませんでした。

シニアの方は、行動範囲が狭くなりやすく、歩くことが少ない場合があります。長野県では車所持率も高いのでなおさらです。ひょっとしたら都会の方の方が歩かれるのではないでしょうか。だから、クラブで泳いでいても、下半身を使っていなければ、活動量が低下しているシニアの方と同じく脚が弱ってくるはずです。筋肉に関して言えば、腕の筋肉はあまり衰えないのに対して、太ももやお腹の筋肉は衰えやすく、70代になると、20代の頃に比べ6割程度まで減少します。

この女性に、私はこの事を伝えられなかった・・・・

本当に悔しいのは、ご本人は運動をやっている認識がありながらも、体を弱くさせてしまったこと。

申し訳ないことをしてしまったといつも感じています。なので、こういったことになる方が出ないように意識した指導が必要だと思いました。本当にその方の事を考えて指導する。技術だけではなく、本質をとらえる。指導者の原点ですよね。

特にシニアへの指導は「手段」を「目的」にしない事

本来、この女性は健康にいつまでも自立した生活ができるようにと水泳を始めていましたので、きれいに泳ぐことは目的ではありませんでした。あくまで目的を達成するための手段です。

これ以来私は、お互いしっかり目的を共有し、そのために何をやるかの手段を選択するよう指導しています。

そうでないと、健康になりに来たのに結果的に健康にならなかったら本末転倒で、信じてついてきて下さった皆様に嘘をつくことになるからです。

なので、時にシニアの皆様をビシビシしごきます(笑)もちろん、楽しみながらやっていただくので、皆さん苦しいながらもニコニコしています。良い意味で甘やかしてはいけません。その時の調子を確認した上で、しっかり運動していただく必要があります。

プールで泳がれる方は、脚を鍛えることを忘れないでください。上達すればするほど忘れやすい事なので、いつも意識して運動してください。スイマーで脚が細い人は多いです。多くの方に意識してほしい事です。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。皆様のプールライフがさらに素晴らしいものになることを願っています。

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