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雨と逃避行
しの、すこし話をさせてね。
彼女は口を開かない
俺はさ…
君が好きだ。
好きだよ。しの。
今…君に伝えることが愚かだと思ってくれていいんだけど、あのね。
君が好きだったんだ。
君が死にたいと思うことも、君が逃げたいと思うことも、もう止めないし、慰めないよ。
でももう君を離さない、君を見捨てない。
君が嫌いな全部を俺も嫌いでいてあげる。
だから、小さな独白を、俺の話を少し聞いてくれないかな。
あれはまだ俺が幼くて、稚拙で、幼稚で、愚かで、愚鈍で、まるで頼りない、小さな小さなガキの頃。
僕には大切な人がいてね、僕を守ってくれる一つ歳が上の女の子遥ねぇって子がいたんだ、華奢な俺はいつも遥ねぇに守ってもらって…
今も夢に見る、彼女が死ぬ間際の、ゴム人形のように弾け飛ぶ体、鉄臭い血の匂い、生ぬるくドロドロとした液体が手からするりと流れて行く感覚。
あの日も今日みたいな雨の降る日だった
しの…篠崎みゅう。僕は君に救われていた。
あの日言ってくれたこと、あの日話してくれたこと。その言葉にずっと救われていたんだ。
きっとこの気持ちだって、本物じゃないのかもしれない、ずっと君に僕は遥ねぇを重ねていた。
君を救うことができれば、この罪悪感に行き場ができる気がしてた。
あの悪夢から逃げるために、僕の罪を君に重ねて正当化していた。
いろんなことをして、いろんなことを知った今。
君がこんなに小さくて、君がこんなに温かいなんて見ることもしなかった、知らなかった。
今ならケジメがつけられるから。
俺ときて欲しい、二人で宮崎に。
そして二人は逃げ出した。
一週間の短い短い逃避行。
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