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One Lebanon 再び輝きを取り戻してほしい|気になる中東

前回記事で紹介したテレビ東京「未来世紀ジパング 謎のモザイク国家 レバノン」(2015年8月10日放送)では、レバノンの人々の親日的な様子も紹介されていた。70年前の敗戦から立ち直り先進国の一員にまでなった日本を見て、「いつか自分たちも日本のように」と思ってくれているようだ。

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古い話で恐縮だが、私が20代の頃にエジプトやヨルダンを旅行した際も、日本はアメリカに原爆を落とされ、そこから立ち直った、だから俺たちと日本人は友だちだ、ということはよく言われた。

以前の記事で、イランでは日本のNHKドラマ「おしん」が大人気だったことを紹介したが、中東の人々の日本人への共感度は今も高いようだ

日本の中にいるとなかなか分からないが、世界には日本の戦後の歩みや平和国家としての姿を尊敬し、学ぼうとしてくれている人々も数多くいることを、もっと知るべきではないだろうか。これから日本が進む道が、このような人々の期待や理想を裏切らないようにすべきだと思う。

先々週に発生したベイルート大爆発の結果、ベイルートの市民は政府の腐敗と不作為を強く糾弾し、大規模なデモが発生する事態になっている。これは爆発事件よりも以前から、レバノンが深刻な経済危機に陥っていたせいだ。

レバノンではこれまで、高い経済成長にもとに高金利政策がとられてきたが、昨年(2019年)夏頃より外貨流入が減少したことをきっかけに銀行の経営が急激に悪化。通貨レバノン・ポンドの急落と物価高騰を招き、取り付け騒ぎに発展。秋には銀行と政治家を糾弾する激しいデモと騒乱事件が発生する事態となっていた。

今年(2020年)3月には公的債務900億ドルのデフォルト(債務不履行)となり、国際通貨基金(IMF)の緊急融資を要請する動きとなっている。

この記事によるならば、レバノンの歴代政権および金融業界が、リスクを放置してきたことが原因とされている。

そんな中での今回の大爆発事件。これも政府の怠慢と不作為が引き起こしたとして、人々の怒りが沸騰しているのだ。

その怠慢と不作為は、共和国成立以来固定化された政権構造による政治腐敗によると、人々は見ている。またその腐敗が、イスラム教シーア派の政治政党ヒズボラの低所得者階級における支持拡大につながり、ヒズボラの議席増と影響力の拡大を招いている。

恐らくレバノンの政治家たちの中には、長年の内戦や軍事侵攻を経験し、先々の成長や安定よりもいま目の前の利益を重視する、ある意味では刹那主義的な考え方が支配しているのではないか。国家の安定と発展のために、リスクをヘッジし、持続的な成長をコントロールしようという発想が不足していたことが、経済危機、そして今回の大爆発事故を招いたのではないかと推測する。

レバノンのアーティストたちの中には、「モザイク国家」と呼ばれる複雑な民族、宗教事情を超えて、「One Lebanon」を作りあげようとする動きもある。

レバノンが長年育んできた音楽や芸術の力が、再びレバノンが輝きを取り戻すための鍵になるかもしれない。

先日、SNSにこのOne Lebanonのメッセージが投稿された。"Beirut has died a thousand times and been reborn a thousand times..."「ベイルートは千回亡くなったが、千回よみがえってきた。」

私がいつか一度は行ってみたいと憧れる国、レバノン。国難を乗り越えて、もう一度復興を果たしてもらいたい。

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