「森林浴」ストレスホルモンを下げる自然の効能
野鳥観察中に気づく
心持ちが軽くなる感覚
野鳥好きの私は、休日になるとバードウォッチングのために山に登ったり、鷹柱(タカの渡りのために群舞すること)がみられる場所まで電車で隣の市まで行ったりしていました。ですが、体調を崩してから、かかりつけ医に「無理のない範囲で歩くように」と言われ、仕方なく近くの海辺に出たり、公園を歩く程度にしています。
体調が優れなくても、少し木々がある場所まで行くと、心持ちが軽くなるような気がします。それはシンプルに体を動かしたことによる血液循環が理由だと思いますが、それだけではないような気がしています。自然のなかで生きていた生物の、原始的な欲求が満たされているような、充足感を得られるような、そんな気分の良さが得られるのです。
1982年から「森林浴」という言葉が生み出され、「森林に行くとリラックス効果が得られる」とされてきました。実際、人体の生理的効果についても研究されていますので、簡単に紹介したいと思います。
1990年の実験で
コルチゾール低下が報告
1990年に実施された実験では、森林浴した人から採取した唾液が調べられました。この唾液中に含まれる「コルチゾール」というホルモンを指標に調査したところ、森林浴にはリラックス効果があると科学的に認められました。コルチゾールとは、人間がストレスを受けた際に、脳からの刺激によって分泌されるストレスホルモンのことです。森林浴をすると、このコルチゾールの濃度が低下するということです。
また2000年代後半には、森林部と都市部において、それぞれ同じスピードで歩行した場合(歩行実験)、座って眺めた場合(座観実験)の比較実験も行われています。歩行実験でも座観実験 でも、森林部のほうが都市部よりも唾液中のコルチゾール濃度が低くなることがわかりました。それだけでなく、脳の前頭前野の活動を調べても、森林部での歩行実験、 座観実験のほうが沈静化していたことも明らかとなりました。
小鳥のさえずりを聴くと
セロトニンが分泌
こうした研究はあくまで森林浴についての生理的効果ですが、「森林浴のついでに野鳥観察をする」と、よりリラックス効果が期待できるそうです。野鳥の会が発行している資料によると、野鳥のさえずりにはストレス抵抗を高めるホルモン「セロトニン」を促す効果があるとされています。
私自身、木が擦れる音や川のせせらぎに混じって聞こえてくる、小鳥のさえずりに心癒やされた体験は何度もあります。木々が多い場所は、川辺や海辺よりも美しい声で鳴く鳥が多いので、森林浴の効果と合わさって高いリラックス効果が期待できると考えられます。
新生活が始まるこの季節、気候はのんびりと穏やかなのに、新しいことを覚えるために慌ただしく体と心が疲れやすい時期になるのではないでしょうか。そんなときはぜひ、休日に森林浴へ行ってみてはいかがでしょう。森林までハードルが高く感じる人は、木々がたくさん生えている場所でも、リラックスできるかもしれません。
春は小鳥たちもよく顔を出す季節です。緑に囲まれながら、自然が奏でる音色に耳を傾けると、素敵な休日を送れるますよ。
参考文献
・「木と人のサイエンス6 森林浴」日刊木材新聞 2021年7月10日
・降矢英成(監修)「バードウォッチング健康法 鳥を見て体と心を癒やす」公益財団法人 日本野鳥の会 普及室 2020年
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