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小さな一歩

 初めて手に取った雑誌は、『Number』だった。ラグビー特集号で、当時最強だった早稲田が表紙を飾っていた。ラグビーを始めて間もない8歳のころ、親父が買ってきたものだったと思う。のちに優勝する権丈太郎の代で、五郎丸のインタビューも載っていた。

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 ページをめくると、明朝体で印刷されたテキスト。その後ろには「どうやって撮ったん?」と思わせる美しい写真の数々。まるでアートだった。文書に魔法がかかっている。スポーツ誌でこんな雑誌があるのか、と幼いながら強烈な印象を受けたことを覚えている。いつかここで書きたい。漠然と、そんなことを思うようになった。

 社会人になった今も、それは変わらない。入社して、どんな部署に配属されても、書くことだけは続けたかった。そして今回、いろんな縁あって、チャンスをいただいた。

 誰を取材するか、僕の心はもう決まっていた。帝京大4年の選手。1年生のときは日本一。けれども、4年生の最後の試合はメンバーから外れて大学4年間を終えた。いろんな葛藤、想いを抱えながら過ごしてきたのだろう。最後の試合でウォーターボーイを務め、チームのサポートに回っている彼の姿が、今でも脳裏に残る。誰も彼のことを書いていなかったから、なおさら話が聞きたくなった。

 どの競技、どのカテゴリーでも、勝者は讃えられる。スター選手はもちろん、活躍した選手はメディアに取り上げられる。それが世の摂理であり、当然、正しい。けれど、スポーツ(特に学生スポーツ)の真髄は、そこに完結しないと思う。チームの数だけ、人の数だけストーリーがある。そこに気づき、光を当てられるような人でありたい。

 いつか『Number』で書きたい。その憧れは、今の目標になった。そこへ向かって走る一方で、この2つを肝に銘じながら書いていきたい。自戒の意味も込めて、ここに記しておく。

「書くことは辛く、楽しい」。ー 篠原大輔記者 (朝日新聞『4years. 』初代編集長)
「カメラは銃であり、ペンはナイフである。幼稚に振り回せば、簡単に人を傷つける」。 上出遼平(テレビ東京プロデューサー『ハイパーハードボイルドグルメリポート』著者 )

 本業の傍ら、これからも走り続けます。誰も知らない、4年生のストーリー。よかったら、読んでください。





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