「資本コスト」に縛られない企業価値の主導権を握る:データの民主化が経営者にもたらすもの
こんにちは、Figuroutの中村です。
私たちの企業価値ダッシュボードサービスでは、「データの民主化」というコンセプトを重要な柱の一つとして掲げています。
「資本コストを意識した経営」ということが東証や市場から求められるようになっていますが、こうした企業価値にまつわる指標に振り回されていませんでしょうか?
もちろん資本コストは大事ですが、あくまでも単なる指標。経営として企業価値に対する指標を「マネジメント」し、投資家と向き合うべき、というのが本質です。
この記事では、この「データの民主化」が上場企業の経営者やCFOにとっていかに重要かを説明しながら、自社で企業価値にまつわるデータをマネジメントする意義について考えていきます。
データの民主化とは?
まず、「データの民主化」という言葉の意味を整理しておきましょう。これは、データのアクセス権限や分析ツールを特定の専門家だけでなく、企業のあらゆるメンバーが使える状態にすることを指します。データが一部の人だけに管理される時代は終わり、全員がデータを理解し活用できる環境が求められています。
多くの業界では、「情報の非対称性」を軸に事業が成り立ってきました。特に投資市場において、株価の変動理由や市場の動きをリアルタイムで把握することが困難なケースが多く、証券会社に依存せざるを得ない状況が長らく続いています。これは、企業側がデータにアクセスできないという「情報の非対称性」が存在していることを示しています。
「企業価値」を示す指標として「時価総額」は企業にとって最重要指標の1つですが、多くの企業でその指標は適切に管理されていません。
経営者や担当者の「個人の証券口座」やYahooファイナンスといった個人投資家向けの一般サイトでその最重要指標である「株価」のウォッチがなされているのが実態です。
「データの民主化」により、情報の非対称性が拓かれ、効率性が上がった業務や業界はいくつもあります。
たとえば広告業界においても、以前は広告配信の効果を知るには広告代理店に頼るしかありませんでした。しかし、デジタルマーケティングの進展やGoogleアナリティクスの普及により、広告主自身がデータを分析し、広告効果を直接把握できるようになりました。結果として、業界全体が大きく変わり、広告戦略の最適化が加速しました。この流れは、企業価値を管理するIRや経営者にとっても重要な教訓です。
ドラッカーの教え:「可視化できないものはマネジメントできない」
経営学の巨匠ピーター・ドラッカーは、「可視化できないものはマネジメントできない」という有名な言葉を残しています。企業価値を本気で高めたいのであれば、まずその価値に影響を与えるデータを把握し、コントロールできるようにすることが不可欠です。
経営者として、「株価がなぜこう動いているのか」を理解するためのデータが社内で管理されていない状態では、適切な意思決定を行うことは困難です。情報が外部に依存している限り、社内で主体的な戦略を構築することが難しくなるため、企業価値向上に向けた取り組みも十分に機能させることができません。
データの民主化がもたらすメリット
では、「データの民主化」が企業にもたらす具体的なメリットを見てみましょう。
1. 解釈の恣意性を排除できる
データが一部の外部者に依存していると、解釈の偏りや恣意性が入りやすくなります。株価の騰落率レポートなどは、基準日となる始点を少し変えればその示す騰落率数値は大きく変わります。
また、企業価値算定のときなどにも用いられる競合ベンチマーク選定なども、恣意的な選定が可能で、それにより結果の見え方が変わってしまうことがあります。
これらデータの恣意性は解釈するのが人である以上避けられませんが、データを自社で管理することで、こうした恣意的な解釈の存在を把握し、透明性の高い意思決定が可能になります。
2. タイムリーな意思決定が可能になる
市場の変動に即座に対応するためには、データへのタイムリーなアクセスが不可欠です。証券会社にいちいち依頼しているようでは、リアルタイムな意思決定が難しくなります。データの民主化により、社内で迅速に情報を分析し、即座に対応策を講じることができるようになります。
3. 組織全体のリテラシーが向上する
データを外部から得るのではなく、自社で収集・分析することで、組織全体のデータリテラシーが向上します。これは、単に数字を扱うスキルだけでなく、データの背後にある投資家行動や市場の動きを洞察する力が養われるということです。組織内でデータを管理することにより、社員全員が経営の本質に迫る力を持つようになります。
企業価値の向上には「データの民主化」が不可欠
企業価値を向上させるためには、外部の証券会社やアナリストに頼るだけでなく、自社でデータをマネジメントし、迅速かつ的確な意思決定を行う体制を整えることが大切です。「データの民主化」を推進することで、企業は単なる情報の受け手から、データに基づいた主体的な戦略を立てられる「攻めの経営」の実現が目指せます。
DXの1つの軸として扱われる「データの民主化」は現代の経営にとって不可欠な要素です。情報の非対称性をなくし、企業価値をリアルタイムで捉える力を持つことで、経営者はより確かな未来を切り開くことができるでしょう。これこそが、企業の持続的な成長を支える土台となります。
金融庁や東証が掲げる「資本コスト経営」はこの文脈に則ったものです。
資本コストは大事ですが、「東証に言われたからその数値を開示する」といった表面的な対応では、何も生まれません。
「投資家と向き合い、データに基づいた主体的な経営の意思決定」が本質であり、そのためにデータの民主化は不可欠です。
「資本コスト」と言われてもいまいちピンとこないという経営者の方の声も耳にしますが、まずは手の届く範囲でグリップできる企業価値にまつわる経営指標を「マネジメント」するところから始めるべきではないでしょうか。
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