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コミュニケーションの仕組みと仕掛けを考える

こんにちは。

マーケティング視点で読解力を高めるノートでは、小さくてもファンを増やす仕組みと仕掛けがわかると題し、デジタルネイティブ時代の情報発信を主たるテーマとし、中小企業や個人事業主がオンラインチャネルを活用する際の前提となる、情報接触態様の変化を読み解き、IDやSNS、そして口コミを科学して理解するノートをお届けしてまいります。

第1章 デジタルネイティブ時代の情報接触
第2章 知らぬままに置いてけぼりになるリスク
第3章 生活者理解のために必要ないくつかのこと
第4章 口コミが生まれる、広がる、その理由を科学
第5章 ファンを作るために必要なことはひとつだけ
第6章 オリジナリティとどこにもないストーリー
第7章 ファンを増やす、共感を得る仕組みと仕掛け
(4)コミュニケーションの仕組みと仕掛けを考える


1.ファンづくりを始める仕組みを整える

前節では、事業者としての使命やこだわり、内に秘めた想いと、お客様のライフスタイルや価値観の変化、顕在化しているニーズを掛け合わせ、重なった部分を、ファンを作るための情報発信とコミュニケーションを進めていくためのオリジナルのコンセプトとしてまとめるステップを皆さんと一緒に進めてまいりました。

本節では、各社固有のコンセプトを起点とし、具体的な仕組みと仕掛けについて考えてまいりたいと思います。私がファシリテーターとしてご支援したSNSを活用して自社および商品のブランディングを行うための研究会では、中小企業、小規模事業者、そして地方の食品クラスタの事業特性や組織風土、そして人的資源や意思決定の構造を想定し、後戻りなく、最初の1歩を踏み出す際に、予めファンづくりの仕組みをプランニングし、設計図に基づいて、一つずつ準備を進めていくことをお勧めしております。

具体的には、ターゲット&コミュニケーションプラン検討と、運用プラン検討という2つの演習を通じ、いくつかのアクションを事前に想定していただき、言語化、形式化を進めるとともに、研究会に参加する企業の皆様が相互に発表することで、他社の工夫やアイデアから気づきを得て、自社の取り組みとして、採り入れて頂けるようにしています。

今回は、研究会の簡易版として、集合型の研修を代替する本noteの図表や解説をご覧頂き、ターゲット&コミュニケーションプランの設計と運用プランの検討という2つの演習の内容の一部を疑似的にご体験いただくとともに、皆様にも、ファンづくりの1歩を踏み出すための事前準備を、頭の中で進めて頂ければと考えております。

ファンづくりを始めるための仕組みを整えるために、食品クラスタの経営者や、自社のブランド、商品に関する情報発信とコミュニケーションを企画設計し、運用されるご担当者の方が、予め想定、設計いただく準備事項について、簡単にまとめましたので、以下の図表をご覧ください。

まず1点目の準備事項は、「責任者」は誰かを決めるというアクションです。地方の食品クラスタの場合、経営者が自らファンづくりの陣頭指揮者であり、企画者、発信者であることも多いのですが、会社組織の中で、ブランドや商品の担当者、会社の規模によっては広報やPR担当の方の発案で、ファンづくりに取り組まれることもあり得ます。

例えば、経営者や意思決定者と、企画、発信の方が異なる場合、会社の方針として、ブランドや自社の商品としてファンづくりや、共感型マーケティングに取り組む、という意思決定が必要になります。

ご担当者の方は、誰を重要なお客様として考えているのか、共感を獲得するために発信するコンテンツは何か、それは、ターゲットが求めるものに合致しているのか、得られる効果や効用の規模や期待値と、このアクションに対して発生する稼働や費用は妥当なのか、意思決定者の方や経営者の方にご説明をされるのではないでしょうか?

この際、重要になるのが、前節で言語化、形式化したファンづくりに取り組むためのオリジナルのコンセプトになります。「誰に」、「何を」、「どのような体制や手段」を通じて実行するのか、そして、「どのような効果、効用」を期待する取り組みなのか、について論理的に説明することができれば、経営者や意思決定者の方も、ご納得され、このファンづくりのアクションについて、後押ししてくださるでしょう。

私がファシリテーターを務めた研究会では、漠然とSNSを使って情報発信に取り組んだらいいのでは思っていたけど、私自身がSNSを利用することが怖かったり、及び腰になっていることに加え、社内で理解してもらえるか、確信が持てなかったので、研究会にご参加されたという方がいらっしゃいました。

ご本人は、SNSを通じて、自社の商品を多くの方に知って頂きたいと思っており、代表取締役である旦那さんと、商品製造の責任者の息子さんに、何回か、アカウントを作って発信してみないか、と水を向けたそうなのですが、その度に、ツレない返事で、なかなか、最初の一歩を踏み出せていないというお悩みを抱え、ご相談にいらっしゃいました。

私が回答した内容は、以下の通りです。

単にSNSを使って自社の商品を発信してみないか、という粒度でご相談をされると、経営者や意思決定をされる方にとって、評価する材料が少なく、この取り組みの価値も、準備の大変さも、ファンづくりの必要性や、利用するツールやサービスの良し悪しについても手に取れないため、評価しづらいんだと思います。

一方、研究会への参加を通じて、ご自身の言葉で言語化、形式化された、自社の商品の魅力や生活者にとっての価値を発信していく目的、意図、固有の経営資源の存在と、それを求めている顧客像に加え、コンテンツの内容や、同じような規模の食品クラスタが既に着手し、ファンづくりを進めている事例や、発信の工夫もとに、要否を説いた場合、経営者や意思決定者はどう思われるでしょうか?

もしかすると、前向きに、やってみよう、応援すると、言ってくださるのではないかと、ご説明を差し上げ、オリジナルのコンセプト作りを、ご支援させて頂きましたところ、現在は、InstagramとFacebookアカウントを作られ、自社の商品を用いたオリジナルのレシピを発信されていらっしゃいます。※2019年12月22日時点で、「#」ハッシュタグで共感者が当該商品や企業名を相当数発信されているので、共感の連鎖が起きていることが確認できました。

2つ目の準備事項は、社内の体制、役割分担を考えていくことです。ファンづくりのためのコンセプトを体現するコンテンツをどのような形で生み出すか、誰が企画して、ビジュアルにし、解説やメッセージを付与し、発信するのか、予め運用を含めて整理をしておく必要があります。

企画、撮影、テキストメッセージの作成やタグの考案、共感してくださった方々とのコミュニケーションの全てを、お一方で行う場合や、経営者や意思決定者が全てを一人称で行う場合は、この限りではありませんが、企業や事業者によっては、いくつかの役割に分割し、協力、協調しながら進めていくケースが想定されます。

例えば、農産物の栽培、収穫の過程を画像に収め、製品に加工するまでのプロセスを、商品を心待ちにしている方にお届けする、というケースで、商品のPRや広報を担当される方は、栽培の工程や、製造の工程にいらっしゃる方に、写真の撮影や共有をお願いすることがあるかもしれません。

この際、オリジナルのコンセプトにそって、主旨をご説明し、ファンづくりの目的や仕組み、仕掛けと目標をご理解頂くことができていれば、同じ方向を向いたチームの一員として、目的に沿った質の高い写真画像を送ってくださるでしょう。

共通の目的をもって、同じベクトル向き役割分担をして進めるチームと、取り組みの目的や意図を知らされず、単に作業や仕事して取り扱われてしまうケースでは、アウトプットの精度、品質に大きな差が生じますし、社内で前向きな協力を仰ぐことができるか否かは、ファンづくりのアクションを継続できるかどうかの、大きな分かれ目になりますので、オリジナルのコンセプトを活用した事前のご説明や、協力の取り付けは、重要な予備作業と言えるでしょう。

3つ目の準備である目標の設定については、次項でご説明いたします。

2.共感者、ファン度を計る仕組みと目標

3点目の準備事項は、ファンづくりの目標を設定すると同時に効果の測定と進捗を把握するための仕組みを用意することです。

食品クラスタは営利企業であり、事業の最終目標は事業の売上からかかるコストを差し引いた利益や手元に残るキャッシュになり、一般的な事業の目標やKPIは、商品別の販売点数や、売上高、顧客数、取り扱うチャネル数といったものになりますが、共感型マーケティングで設定する目標やKPIは、それとは異なります。

共感型マーケティングは、最終消費者、購買者の一つないし二つ手前にいる、SNSの情報連鎖の起点となる「共感者」に対するアプローチです。

このモデルで最も重要な視点は、共感者(ファン)を生み出すことであり、マーケティング活動の主目的も、最終消費者による購買金額や数量の多寡ではなく、共感者を通じて、興味関心や価値観、ライフスタイルが近しいフォロワーに広がっていく量(伝播の力)の最大化に置くべきだと考えています。

共感型マーケティングにおける、共感者、ファン度を計る仕組みや指標について、簡単にまとめましたので、以下の図表をご覧ください。

共感型マーケティングモデルで、食品クラスタの皆様の目標は極端なことを申し上げれば、影響力を持つ(多数のフォロワーがいる)情報連鎖の起点となる最初の1名を共感させることですから、最低限の目標は、「最初のファンを1人作る」です。

ただ、せっかくですから、継続した情報発信を通じ、一人でも多くの方に共感者、ファンになって頂くことを想定し、常に共感者の数、ファン度を計測し、発信しているコンテンツが大事なお客様に届ているのか、共感者を起点とした情報伝播がどれくらい広がっているのか、を定量的に計り、事前に設定する目標値とを比べながら、コンテンツに工夫を加え、改善し続けるというPDCAのサイクルを回す仕組みを採り入れることを、お薦めしています。

さて、共感型マーケティングに取り組む食品クラスタは、共有の起点となる共感者の数や、情報伝播の範囲や量をどのような指標を通じて把握し、いかにして取得(計測)したらよいのでしょうか?

ここでは、Twitter、Facebook、Instagramを取り上げ、それぞれのSNSのサービスの特性から、共感量を計る指標をご紹介したいと思います。

まず、計測手段ですが、各SNSサービスから、アカウントを取得し、情報発信に取り組まれる方向けに、無償のアナリティクス機能、インサイト把握機能が提供されていますので、ご興味がある方は、以下のWEBサイトにお目を通し下さい。

Twitterアナリティクスについて

Facebook「インサイト」について

Instagram「インサイト」について

続いて、各SNSサービスのアナリティクスツール、インサイト把握機能で計測できる指標の中で、共感型マーケティングを実践する事業者はどのような視点を持って、共感者の増減や、ファン度の推移を確認したらよいでしょうか?私は、どのSNSサービスを利用しても、以下の3点だと考えています。

1つ目は「到達量」です。各SNSサービスに投稿し、発信したコンテンツをご覧になった方のアカウント数(ユーザー数)であり、「インプレッション」という呼び方をしているSNSもあります。

2つ目は「共感量」です。各SNSサービスを通じ、情報を届けられた方が心が動かされ、共感の意を表明してくだったアクションの回数であり、具体的なアクションとして、「いいね」というポジティブな意思表示や、「コメント」や「返信」という、一段進んだ感想や気持ちの表明、そして、Facebookにおける「シェア」やTwitterの「リツイート」といった、共有の起点となったアクションの回数です。

ここで、共感量は、3つに区分して評価する必要があると思います。一括りに共感量という書き方をしておりますが、コンテンツが持つ共感を喚起する力の強さによって、レベルの異なる3つのアクションがあるためです。

共感力「低」レベルは、発信者である食品クラスタとその投稿に対する「意思表示」という共感であり、いわば、片方向の情報伝播です。

共感量「中」レベルは、ボタンの押下に留まらず、食品クラスタやその投稿に対する感想や気持ちを、言語化してテキストを打ち込み、コメントや返信をしてくださるもので、これは双方向の情報伝播になっています。

そして、共感量「高」のレベルが、最も共感量が多く、ファン度が高いアクションであり、共感した気持ちを、自身が起点となって、他者(フォロワー)にも知らせたい、広く届けたいというモチベーションが喚起され、「シェア」や「リツイート」してくださったものは、SNSの特徴である発信者を起点に情報連鎖が繰り返される、多方向の情報伝播であることがわかります。

3つ目は「応援量」になります。特にInstagramでは、自社のブランドや商品に込めた想い、お客様にお届けしたい価値をテキストに換えた「#」ハッシュタグを利用することにより、ブランドや商品の価値を受け取った共感者が、内発的な動機から自身のアカウントで情報を発信する際、「#」ハッシュタグを付与して投稿をしてくださることがあります。

応援量は、このような、共感者の方が自社ブランド、商品を表す特徴やストーリーといった事業価値をテキストに換えた「#」ハッシュタグを付与して投稿してくださった回数を指しています。

これから、自社の固有のオリジナルのコンセプトを起点としたファンづくりに取り組まれる食品クラスタの皆様には、「到達量」、「共感量」、「応援量」について、それぞれの目標値を事前に設定し、定期的なモニタリングを行い、共感量で申し上げれば、最も広範な情報伝播が期待できる共感量「高」レベルのシェアや、リツイートを促す力を備えたコンテンツを企画し、継続した改善と発信にお取組み頂き、自社のブランドや商品に対するファンをお一人でも多く増やしていっていただければ、幸いに思います。

第7章(4)コミュニケーションの仕組みと仕掛けを考える、では、共感型マーケティングの活用コンセプトを起点とし、ファンづくりの第1歩を進める事前の準備として、周囲の方からの理解を取り付け、同じ目的ゴールに向かうための環境を整えることや共感を喚起するコンテンツを発信するための効果検証の仕組み等の予備作業について、ご案内いたしました。

第7章(5)ファンづくりの仕掛けと工夫、では当方がご支援した食品クラスタが進めているファンづくりと情報発信の実例から、共感を喚起するコンテンツの特徴や発信の工夫を読み取り、ご紹介してまいります。
 
ここまで、ご一読いただきありがとうございます。マーケティング視点で読解力を高めるノートでまとめた電子書籍のコンテンツも、ご覧いただけたら、幸いです。

 マーケティングの視点で見聞きし、読み解き、整理、体系化したこと事を発信しています。発信テーマ別に目次を用意していますので、気になる記事がありましたら、ぜひご覧ください。


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