見出し画像

共感を勝ち得るための工夫とは(唯一、ひとつだけ)

こんにちは。

マーケティング視点で読解力を高めるノートでは、小さくてもファンを増やす仕組みと仕掛けがわかると題し、デジタルネイティブ時代の情報発信を主たるテーマとし、中小企業や個人事業主がオンラインチャネルを活用する際の前提となる、情報接触態様の変化を読み解き、IDやSNS、そして口コミを科学して理解するノートをお届けしてまいります。

第1章 デジタルネイティブ時代の情報接触
第2章 知らぬままに置いてけぼりになるリスク
第3章 生活者理解のために必要ないくつかのこと
第4章 口コミが生まれる、広がる、その理由を科学
第5章 ファンを作るために必要なことはひとつだけ
(3)共感を勝ち得るための工夫とは

第6章 オリジナリティとどこにもないストーリー
第7章 ファンを増やす、共感を得る仕組みと仕掛け


1.誰からの共感を得たいのか


本章では、工夫次第で情報を届けられる時代の幕が開けたことについて環境の変化をご説明するとともに、共感を喚起し、ファンを獲得するコンテンツの特徴について読み解いてまいりました。

本節では、本章のまとめとして、規模の大小を問わず横一線のスタートラインに立っている皆様が、未来に向けた大事なお客様像を設定し、そのお客様から共感を勝ち得るための基本的な考え方や求められる工夫についてご案内するとともに、デジタルネイティブ時代のマーケティングセオリーを整理したいと思います。

デジタルネイティブ時代に最も重要なお客様は「共感してくださる方(ファン)」であることは分かってきましたが、「共感してくださるファン」を作るために必要なことは何でしょうか?私が考える最も重要なアクションについて、簡単にまとめましたので、以下の図表をご覧ください。

共感者像

「彼れを知り己れを知れば,百戦殆うからず」という、孔子の言葉もあるとように、デジタルネイティブ時代のマーケティングにおいて、最も必要なことは何か、と尋ねられた場合、私は「顧客理解」にある、と回答しております。

そデジタルネイティブ時代の重要なお客様である「共感者像」を想起することが、何よりも重要で、全てのアクションの起点になると考えているからです。

私がご支援した地元の農産品を加工して販売する食品クラスタの企業を例にとると、有機栽培で採れるブドウを加工したワインを生産している企業であれば、「どのような食のシーン」で召し上がってもらいたいのか、を考える必要があり、「召し上がっていただくお客様が持つ、どういったニーズに応える商品であるべきか」、お客様一人ひとり異なるライフスタイルや価値観に着目し、共感してくださるターゲットを想起する必要があります。

ブドウの品種や味の特徴、価格帯によっても異なりはずですが、ある商品は、「毎日の2人の食卓に彩を与え、会話を弾ませるために、気軽に開けらえて、手作りの夕食と共に、美味しく召し上がってほしい」、私たちのオリジナルワインは、楽しい食卓のお供として、飲料者の楽しい会話を引き出す役割である、という生産者側の想いの先に、共感を勝ち得たいと考えるターゲット像が見えてまいります。

職人がこだわって作る「麹」の商品を生産する事業者であれば、麹の成分が持つ機能に着目し、召し上がっていただくお客様のどのような課題を解決する可能性があるのか子細に検討することが、顧客理解の第1歩であり、商品化のヒントにもなり得ます。

「麹」には、人間が本来持っている機能を正常に保つために必要な酵素を豊富に含み、あるべき本来の姿に導く力があると科学的も立証されてきました。麹を用いる商品として甘酒がありますが、甘酒には点滴に匹敵するほどの栄養が含まれており、しかも体内の熱や毒を排出してくれる解毒作用があります。

甘酒を商品化する際の、ターゲット像は、生産者の志からも導くことができ、「体調不良、疲れを感じる方に、召し上がっていただき、健やかな毎日を過ごしてもらいたい」という想いの先で、自社の商品の存在や「麹」が持つ機能について、共感してもらたいターゲット像が明確になってきます。


ライフスタイルや価値観、生活者が抱えている課題感を言語化し、解像度を上げていくことが、=(イコール)、誰に伝えたいのか、という共感者像の設定のために必要であり、全てのプランニングの起点だと言えるのではないでしょうか?

2.共感を得るためにかかせないことは

前項で子細に検討し、自社の商品に込めた想いや生産、製造に至る志を含めたバックグラウンドを発信し、共感者を勝ち得ようとする際、一つだけ留意する点があります。

例えばFaceBookやTwitter、InstagramといったSNSのアカウントを開設し、共感を喚起する力を持つコンテンツを発信する際の、留意点について、簡単にまとめましたので、以下の図表をご覧ください。

画像2


SNS(ソーシャルネットワーク)を活用した情報発信に限定することなく、オンラインメディア(WEBサイトや動画配信)を用いる場合に、共通して言えることですが、私は、「世界観」を規定することが重要だと考えています。

世界観とは「貫くテーマ」「ストーリー」のことを指しており、自社のブランドの存在や、こだわって届けたい商品について、知ってもらいたい、理解を得たいと考える共感者像を明確にすると、その方たちに届けるべき「志」や「こだわり」、「エピソード」といった、生産者の内面にある
「ストーリー」はおのずと規定されます。

顔の見えないマスに対する情報発信とは異なり、デジタルネイティブ時代は「個」にフォーカスし、「個」とのコミュニケーションや、「個」に対する告知、「個」への伝達が前提になります。

そのため、自社のブランド、自社の商品について共感を得たいと考えるターゲットが持つニーズと、情報発信時の「世界観」の合致があって初めて「共感」が生れ、「共有」という、ポジティブな口コミのアクションが生まれます

例えばですが、デジタルネイティブ世代の気持ちは、移ろいがちなため、以下のような事象が容易に起きえます。

前回、目にした時は、商品開発のバックグラウンドやこだわり、あるいはビジュアル、世界観について「イイね」と思えてフォローしたのに、今日受け取った情報は「歳末の値引きセールの案内」で、その商業的な感じに「なんか醒めた」ので、フォローを外した。


このオンラインチャネルは、何を発信するアカウントなのか、そのストーリーは私にとって意味があるものなのか、あるいは、関係のないものなのか、一目で理解ができるようにするとともに、意味のあるコンテンツの場合は、継続して受け取りたい、フォローしたいと思っていただき、共感へと繋げるていくためには、世界観をブラすことなく、一貫性をもった情報発信が求められる、という点についてご理解いただけたのではないでしょうか?

3.共感型マーケティング


ここで、デジタルネイティブ時代に、中小企業や小規模事業者が活用したいソーシャルネットワークを活用したマーケティングセオリーについて、整理したいと思います。デジタルネイティブ時代のマーケティングプロセスを、簡単にまとめましたので、以下の図表をご覧ください。

デジタルネイティブ時代のマーケティング

共感を生むコンテンツを生み出す力とその引き出しは、全ての中小企業、小規模事業者に内在している固有の情報資産です。

世界観を備えた一貫性のあるテーマとストーリーを発信することで、「共感・ファン」を得ることが、1stStepになります。

自社のブランドや商品に対するこだわりや、商品が生まれるまでのストーリーに触れた共感者が共有することが、2ndStepであり、SNSのネットワークを通じ、共感の連鎖が生まれ、広範に伝播していくという3rdStepを経て、生まれた口コミの大きな渦(スパイラル)が、4thSTEPとして、注文や購買というアクションを誘発する、というのが、デジタルネイティブ時代の「共感型マーケティング」モデルだと考えています。

このモデルの一番大きな特徴は、注文や購買頂く最終消費者をターゲットとし、直接的なメッセージを届けているわけではない、という点に求められます。

直接的なメッセージとは、「麹」を扱う商品である「甘酒」を例にとれば、商品名、価格、原材料名、内容量や賞味期限、値引きの額やクーポン、商品画像等を指しており、商品の甘酒の購入を促すメッセージです。

「共感型マーケティング」モデルの場合、発信するメッセージは「共感・ファン」を獲得するために最適化された内容になります。


甘酒を召し上がっていただきたいターゲットの顔やライフスタイルを想起しつつ、甘酒と麹の成分が、例えば冷え性の方や、大変疲労を感じているお客様の課題を解決する、という効果効用にフォーカスしたメッセージや、甘酒の新商品が生まれるまでの過程、産地の御米を炊き、丁寧に仕上げるこだわりの製法、美味しく召し上がってもらうためのレシピ等、商品のバックグラウンドにある物語を発信していくため、直接的なメッセージとは一線を画していることが、お分かりいただけると思います。

「共感型マーケティング」は、最終消費者、購買者の一つないし二つ手前にいる、SNSの情報連鎖の起点となる「共感者」に対するアプローチであり、情報発信内容の信ぴょう性に疑問を感じ、情報の真偽を確認することにコストを支払いたくないデジタルネイティブ世代が、内発的な動機の下で投稿する個人の口コミを重視するという、世代の価値観と情報接触態様の変化を捉えた間接的情報伝達のモデルだと言えるのではないでしょうか

2010年代の後半から、情報発信にかかるコストが劇的に低下し、規模の大小を問わず、SNSの情報伝播の構造を活用し、自社のブランドや商品の存在を地域や国を超えて発信し、共感者を勝ち得ることができるようになりました。

次項では、このような情報発信や、情報接触態様の変化をデジタルネイティブ時代のマーケティングセオリーとして改めて整理したいと思います。

4.中小企業、小規模事業者に必要なことは1つだけ!


本章では、令和情報伝播の構造や、時代にあわせた顧客理解の必要性、共感を勝ち得るための留意点についてみてまいりましたが、最後に、本章のまとめとして、従前のマーケティングモデルと、「共感型マーケティングモデル」の相違点を、整理してまいります。

従来型のマーケティングとデジタルネイティブ時代のマーケティングモデルの特徴を、対比してまとめましたので、以下の図表をご覧ください。

まとめ

従来型のマーケティング手法である、テレビや新聞、ラジオや雑誌といったマスメディアを用いて、広範に同一のメッセージを大量に届けるモデルは、生活者の価値観や行動スタイルの同質性を前提としており、AIDMAモデルを下敷きとして、最終消費者、購買者を目掛け、ストレートにブランド名や商品名、機能、スペック情報を直接的に届けるモデルであり、多額の費用を必要とするため、実施できるのは、体力のある大手企業に限られていました。

上記の図表で、ターゲットは基本的に全員であり、明確に顔が見えないなかで、広く告げるという広告手法が、時代と共に移り変わる情報接触態様(スタイル)との間に距離を生み、伝えたいけど、伝わらない、というGAPを生む原因となっています。

一方で、デジタルネイティブ時代の主たる情報入手、情報発信の手段であるSNSの特徴は、内発的な動機から「個」が発信し、多様な価値観や行動スタイルを持つ「個」が、用途や目的に応じてSNSを通じて口コミを手繰り寄せる、というものです。

口コミのスイッチを押す、人の心を動かす力を持ったメッセージは、ターゲットとなる方に、どのような価値を届けたいと思っているか、という志に基づき、商品を作る過程で生れる世界観、一貫したテーマやストーリーであり、この情報に触れた共感者が起点となる情報連鎖のネットワークを通じ、自社のブランドや商品の特徴が、共有され、伝播していき、最終消費者に届けられる、という「個」と「個」の繋がりにフォーカスしたモデルだと言えます。

このモデルで最も重要な視点は、共感者(ファン)を生み出すことであり、マーケティング活動の主目的も、最終消費者による購買金額や数量の多寡ではなく、共感者を通じて、興味関心や価値観、ライフスタイルが近しいフォロワーに広がっていく量(伝播の力)を最大化させることになると考えられます。

少し、極端なことを申し上げると、影響力を持つ(多数のフォロワーがいる)情報連鎖の起点となる最初の1名を共感させることが、共感型マーケティングの成立要件です。

従って、中小企業、小規模事業者の皆様が行うたった一つのこととは、「最初のファンを1人だけ作る」ことであり、知恵を出し、工夫を施し、ここに全精力を傾けるべきではないかと考えています。


第5章(3)共感を勝ち得るための工夫とは、として、誰に価値を届けたいとするのか、ターゲットを念頭に置いた世界観に基づく情報発信の必要性や中小企業、小規模事業者にとって、共感型マーケティングが事業機会(チャンス)になる理由について、解説いたしました。

第6章 オリジナリティとどこにもないストーリー、では、FacebookやTwitter、Instagramを使い、情報発信に取り組まれている地方の飲食店や小売店、加工食品の製造業者をご紹介し、中小企業や小規模事業者のオリジナリティ(個性)をどのようなスタンスで発信されているのか、先行事例のなかから、参考になるポイントを読み解きたいと考えています。

 ここまで、ご一読いただきありがとうございます。マーケティング視点で読解力を高めるノートでまとめた電子書籍のコンテンツも、ご覧いただけたら、幸いです。

 マーケティングの視点で見聞きし、読み解き、整理、体系化したこと事を発信しています。発信テーマ別に目次を用意していますので、気になる記事がありましたら、ぜひご覧ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?