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Hajdu Szabolcs『Bibliothèque Pascal』ファティ・アキンがロブ=グリエ作品を撮ったら

2010年のアカデミー外国語映画賞のハンガリー代表に選出されていることから、その年を代表する作品であることは間違いないのかもしれないが、全編に渡ってルーマニア語で展開するこの摩訶不思議な冒険譚がハンガリーの代表とは、にわかに信じがたい。MUBIのレビュアーもこの年はムンドルッツォ・コーネルの『Tender Son: The Frankenstein Project』を選んでいる(今後変わるかも)。

娘の親権を取り返すためにこれまでの人生を語るモナ。イベントを企画するも失敗し、旅した先の海岸でヴィオレルという不思議な男に出会い、彼との娘を産み、金のためにと顔馴染みのおじさんについていき、"パスカルの図書館"というロールプレイ系娼館(?)に売り飛ばされ、云々。娘が眠ると楽隊が湧いてくるのは面白かったが、それ以外はひたすら微妙。

画面の明るさや物語の意味不明さはそれぞれファティ・アキンとアラン・ロブ=グリエを思い出すが、アキンにあった頭が吹っ飛ぶような音楽もロブ=グリエにあった訳のわからない不条理さも欠如している。致命的なのは、確かに不条理ではあるんだけど、筋があるから意味(というか前後関係)は分かってしまう点であり、だからこそ分かろうと頭が働いてしまうのが残念だった。加えて、色彩も鮮やかだけど鮮烈ではないので、記憶にも残らない。脳天をぶち抜くようなショットがあまりないのだ。一番覚えているシーンは浜辺でヴィオレルが撃たれるという『囚われの美女』と全く同じシーンだった。

しかも結局、娘に会うために"これまでのことは嘘でした"と認めることになるのだ。これだと、ここまで語ってきた話がホントであれ嘘であれ映画ごとひっくり返っているじゃないか。これまでの時間はなんだったんすか。

・作品データ

原題:Bibliothèque Pascal
上映時間:105分
監督:Hajdu Szabolcs
公開:2010年3月18日(ハンガリー)

・評価:20点

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