Ion Popescu-Gopo『A Bomb Was Stolen』爆弾片手に街へ繰り出す
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Ion Popescu-Gopo『A Bomb Was Stolen』爆弾片手に街へ繰り出す

Knights of Odessa

ルーマニアの近代アニメ学校の創設者イオン・ポペスク=ゴーポによるセリフのないサスペンス映画。元々はデザイナー兼漫画家としてキャリアをスタートした人物であり、後に"Gopo's Little Man"と呼ばれる有名なキャラクターの生みの親となった。そんな彼の初実写長編作品である本作品は、その年のカンヌ映画祭のコンペに選出された。本作品は会話がまったくないコミカルなサスペンス映画だが、主人公がトボケ顔でギャグをやり過ごすタイプの作品ではないのがまず面白い。彼は常に巻き込まれた側の人間であり、自身の抱えるカバンに爆弾が入っていることを知らない。だからこそ異様に静かに作られた映画の中で、主人公の軽率な行動がいずれ爆発を引き起こすかもしれないという緊迫感が際立っている。しかし、最も異様な緊張感があるのは、爆弾を持つ前の冒頭10分なのだ。凹凸もなにもない絨毯を敷いたかのような人っ子一人いない平原で、一本だけ咲く花を拾い上げると、ヘリコプターに追われ、バケツみたいなフルフェイスヘルメットをかぶった人々に囲まれてしまう。ヤンチョー・ミクローシュやガール・イシュトヴァーン『The Falcons』みたいな平原を思い出すロングショットが強烈。

続けて、職を探して街にやってきた主人公は、偶然軍事施設の前を通りかかり、爆弾を狙うギャング団とそれを守る軍隊の攻防を目撃してしまう。彼は入り口で突っ立っていたら爆弾入りのカバンを授けられ、それを施設に返すために持ち歩き続け、ギャング団はカバンを付け狙う。ギャング団と軍隊の攻防は二度登場するんだが、列を成して走っていったり、ギャング団と向かい合って殴り合ったりするなど、軍人の行動が明らかにエルンスト・ルビッチ『牡蠣の王女』を模倣しているのが嬉しかった。部下たちが軍人たちと殴り合いをしている地下で、ギャング団のボスが情婦と二人で踊り狂ってるのも最高。

ラストで漸くかばんの中身が爆弾と気付いた主人公が、それを無力化して社会に還元していく姿に、ストレートな反戦への想いが込められていた。ファンタジックな世界観がここで現実へとファンタジックに接続される。素晴らしい!

・作品データ

原題:S-a furat o bomba
上映時間:72分
監督:Ion Popescu-Gopo
製作:1961年(ルーマニア)

・評価:70点


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東欧/旧ユーゴ/ロシア/サイレント映画愛好家。好きな女優は必ず寡作。筋金入りの非線形天邪鬼。2022年はハンガリー&ブルガリア&香港NWを中心的に。2020年代はカンヌ映画祭のコンペ作品をコンプするぞ! 依頼等はknightsofodessa0715 at gmail まで