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【その後2】精神疾患にかかった本人や家族が医療に繋がるのは難しいよねって話

★このマガジンの説明・記事一覧
精神病院に強制入院、その後…について

今日で妻が退院してから1週間。
退院後1週間の妻の様子については、昨日の「【その後1】精神病院から退院して1週間、妻の様子まとめ」でも書いたが、本当に落ち着いた。

ただし、電気治療の影響なのか一時的な記憶障害が出ていたり、服薬しているオランザピンのせいか眠気が強かったり、食欲が増していたり、常にボーっとしているため、「退院したから、体調バッチリです!」という感じではない。

▲薬のせいか、妻は眠そう(写真は眠そうな我が家の猫、かわいすぎる)

それでも入院して良かった。
僕としては入院させたかったワケではない。入院させたくなかった。それでも調子の悪い状態を脱せたので、入院した甲斐はあったと思う。

妻が精神科に強制入院となった経緯については、別マガジン「精神科の閉鎖病棟に、妻を強制入院させた話」にて書いているが、入院までのハードルはとんでもなく高かった。

まず、患者である妻が病院を断固拒否。
私は病気じゃない」「あなたの方が診てもらった方がいい」といった感じで、ちょっと病院で診てもらおうか、とはいかなかった。

▲調子の悪い人ほど「自分は正常だ!」と言う。妻も言ってた。

メンタルの調子が悪い人ほど「自分は正常なんだ!」と言う。だから通院も拒否。まぁ、あなたはビョーキ!なんて言われたら、誰でも反発したくなるだろう。

ココに関しては世の中の人の理解されづらく感じたかな。他の人からは「奥さん調子悪いんだ?病院行けばいいじゃん。」みたいなことを軽く言われたが、その都度「それができたら、苦労しないんだよ!」と言いたくなるのを我慢して苦笑いするしかなかった。

こういった場合は、病院の人に口裏を合わせてもらい受診をする、一緒に診てもらう、有無を言わさず連れてくといった感じになるらしい。我が家の場合は、再三に渡る説得の末に妻が「あなたも診てもらうなら行ってもいい」と言ってくれた。

しかし、次は病院が見つからない。
一緒に診てもらう、という条件だったので最初は夫婦カウンセリングをできる病院を探していたが、そういったことをやっている病院は少ない。近所にあるメンタルクリニックに片っ端から問い合わせたが全滅だった。夫婦で異なる主張をしている場合、どうしても仲裁になってしまうため、病院としても面倒を見切れないんだとか。

困っていたところ、子供家庭支援センターから大きい病院をいくつか紹介してもらえた。入院可能な施設を持っている病院。妻の状態を知ってる職員さんからは「メンタルクリニック的なところでは手に負えないだろうから、大きい病院の方がいい」とも言われた。

余談だが、それまで子供家庭支援センターは子育てのことを相談する機関くらいに思っていたが、心を病んでしまう親は少なくないようで、こういった情報も持っているそうな。意外だったが助かった。

▲病院は全然予約が取れない…早くても2週間後とか

これでようやく医療と繋がれる…」と思ったが、紹介された病院は、どこも予約が取れない。こっちは今すぐにでも診てもらいたいのに、予約は2週間~1ヶ月後くらい。

それでも幸運なことに予約なしで診てもらえる病院があったので朝イチで行った。診てくれたのは、その病院の副院長先生。妻を診断した副院長先生は、「躁病かもしれない」「服薬したり、入院した方がいいよ」と言ってくれたが、妻は断固拒否。この段階では任意入院の提案だったが、病識がまったくない妻は当然のように拒否してしまった。

ようやく繋がれたと思った医療とはあっさり切れてしまった。めっちゃ絶望。どうすりゃいいんだと悩み、病識がないが治療は必要なので医療保護入院や措置入院も検討せざるを得ない…と覚悟した。そのため、警察や保健所、児相、子供家庭支援センター、市の保健士さんとも相談。

その間、妻と言い争いになることも多く、何度も警察へ通報された。何回目かには身の危険を感じた僕は長男を抱えて外に逃走。裸足で追いかけてきた妻と駅でもみ合いになり、警察に保護されたこともあった。

▲何度目かの通報の末、妻は警察から通院を約束させられた

度重なる通報と状況を重く見ていた警察は、妻に「あなたは病院に行きなさい」と約束させた。通院する病院は、妻が見つけてきた。院長がメンタルヘルス系の漫画を多数出しているYメンタルクリニック。

都内の大都市にクリニックを展開、駅から近く予約も取りやすいので良いと思ったのだろう、僕も一緒に行くことにした。

でも、Yメンタルクリニックは最悪だった。
通院する際は、医師の診察+心理士のカウンセリング30分or60分が1セットだったが、特に医師の診察がポンコツすぎて話にならない。

▲5分の診察では、何も解決せず無意味だった。

医師の診察はきっかり5分。
5分経過すると「時間ですので終了です、次はカウンセリング受けてください」と言われて診察は強制終了。こっちは病状の説明すらできず終わってしまう。こんな形だけの診察、意味があるのだろうか。

Yメンタルクリニックは、効率を徹底追求しているので、1日で大量の患者を診られる。最短当日でも診てもらえる点は良かったが、肝心の診察が超絶流れ作業。

僕からすると治療する気がない病院。重度の精神疾患があるような場合、Yメンタルクリニックはまったく役に立たないように感じた。※あくまで僕の個人的な感想です。

そんなYメンタルクリニックだが、カウンセリングは良かった。担当の心理士Sさんは、妻の状態が尋常ではないとすぐ気付いてくれた。そして、「この病院だとダメだから、しっかりした病院に行った方がいい」と個人的な繋がりのある病院まで紹介してくれた。結局、医療保護入院となったため、心理士Sさんの教えてくれた病院には行かなかったが、本当に感謝している。

ここから先の話は、別記事「強制入院1日目:精神科に医療保護入院させた当日の話」に繋がる。2回目のYメンタルクリニックに通院後、僕は妻を精神科に医療保護入院させた。

精神疾患の患者や家族が医療に繋がるのは難しい。
いくつものハードルがあり、うまく超えられるとは限らない。

患者本人や家族が病院に行くことに抵抗を感じたり、病院が見つからなかったり、予約が取れなかったり、適切な治療じゃなかったり…本当に高い高いハードルがある。

医者もピンキリで、必ずしもしっかり診てくれるワケじゃない。流れ作業でテキトーに話を聞いて、知らーんという医者もいる。患者側としたら、しっかり診てくれてバッチリ治療してくれることを期待しているが、そうでもない医者も少なくないのかもしれない。

▲精神疾患の家族を閉じ込めてた、みたいなニュースは他人事と思えない。

まれに、ニュースで精神疾患にかかった自分の家族を長らく閉じ込めていた…みたいな話を見聞きすることもあるが、そうせざるを得ない事情がわかってあげたくなる自分もいる。

とてもじゃないが「家族を閉じ込めるなんてヒドい!」なんて言う気になれない。それだけ患者と向き合うのは大変なことなのだ。一緒に死んだ方がいいかも…と考えたくなるくらい追い詰められる。医療と繋がれずに不幸な選択をする人がいてもおかしくない。

何より「病気じゃない!」と訴えている人を病院に連れてくのは簡単じゃない。民間の搬送サービスなんかもあるが、1回利用で60万円くらい取られるので、とてもじゃないが気軽に利用できない。

僕の妻は、周りの助けもあって幸運にも医療と繋がった。紆余曲折はあったが、比較的早期に治療を受けることができ、良い方向に向かっているハズ。

しかしながら大変な思いはしたので、精神疾患にかかった本人や家族がもっと医療に繋がりやすくするにはどうすれば良いのか、自分に何かできることはないか…そんなことをずっと考え続けている。

つづく。

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