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210405ロケバス移動中に考えた写真のこと

毎日文章を書けなくても写真だけは撮ろうと決めた。撮っても人に見てもらえなければそれは撮っていないのと一緒。これは、かつて師匠に言われた言葉だ。未だに写真は撮って寝かすものだとという考えはあまり変わらない。大げさに言えばそのときに撮った1枚は5年後、10年後のためにあるような気がしている。その時にしか撮れなかったものと思える写真は現像してすぐ確認しても実感が湧かない。とはいえ、そんなことを言っていても写真で稼ぐことはできない。商業写真は今やスピードが命。納期が撮影した翌日ということだってある。いや、早朝撮影当日納品なんて日もある。

情報を発信していく上で、自分のことを伝えるのか、俯瞰した目線で物事を伝えるのか、大きく分けてこの2つではないかと思う。自分のことを伝えるというのは日記に近い。俯瞰した目線の代表は報道だ。ここで評価の対象になるのは、共感を得るか、役立つ情報なのかの違いではないだろうか。日記を書いたところで、何者でもない他人の日常なんて読んでいても面白くない。映画でいうところのメイキングで面白いのは、すでに別の形として評価された作品があるからであって、その裏側が見られるからこそ面白い。だからこそエンタメとして成り立つ。この順番が逆になると、作品の販売促進を目的としたリリース情報として扱われる。芸能人のブログは表舞台で見る姿とは違った視点から知れる情報、いわばその人の裏側(私生活)を垣間見ることができるからエンタメとして成り立っている。つまり、誰が書いているのかが重要で、何者でもない他人の日常においては、それを読んだ読者が他人の日常に共感を覚えるか否かで評価は変わる。

そして、俯瞰した目線というのはそのフレームに写っているそのものが主題であって、そこ自分の存在を入れ込んではいけない。例えば、広告や報道写真など個人の主観ではないものである。ロケバスに揺られながら考えた写真のこと。できれば役立つ情報を、人のためになることを書いていきたい。と言っても、これはあくまで個人の日記であり、ブログであり、エッセイである。

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写真の役割は大きく分けて3つ。伝達・記録・表現に分けられる。毎日写真を撮るというのはこの3つの中では記録に近い。

伝達の機能として代表的なものが報道写真。そのとき起きた事実を伝えるための写真。それは新聞でも雑誌でもWEBでも人に伝わる写真を撮ること。そこに個人の主観はいらない。第三者として目の前で起きた事実を切り取ることが目的である。基本的に商用写真は何かしらの目的があって撮影という手段で人に伝えるものだ。商品を売ることが目的の写真。ポートレートだって宣材写真として、その人を売り込むために使用される。料理写真も同様にお腹を空かせた消費者に対していかに美味しそうに撮るかというスキルで対価を得る。ある意味表現に近いものもあるが、表現においては、目的なんてどうでもいい。ドストレートに自分の内から湧き出る何かを形にしたものだったり、外からやってくるものに対して自己を媒介に写真として形に残すものだったり、そこに意味はあってもなくてもいいもの。と書いてしまうとだから芸術は分かりにくいと言われてしまう。芸術がなんだか分からないものと思うのは、その時代によって芸術の解釈が変わるからだ。歴史と教養さえあれば、その時代に作られた作品の背景は理解することができる。ちなみに、現代アートは僕にはわからない。大口叩いて「芸術」なんて言葉を使えば、さも自分は理解していますという雰囲気が出てしまうが、はっきり、僕にもわからない。話はそれてしまったが、自分の目線で主題をどうするか決められるのに対し、伝達における主題はそこで起きたことだけ。

記録というのは自分の身の周りを切り取っていくことももちろん、資料とし後世に残すためのものも記録にあたる。他にも、法的拘束力のある証拠写真だって記録である。レントゲン、胃カメラのような医療写真も記録だし、プリクラだって若かりし自分の肖像として、10年後に見たら青春の思い出がそこには保存されていることになる。ポートレートが宣材写真として使われれば伝達だと先述したが、遺影として使われればその人が生きた証として記録となる。

ここで今まで考えたことをぶち壊すことになるが、写真の機能は大きく分けて3つというのはあくまでカテゴリ分けの際に便利なだけで、写真は何にでもなりうる媒体ということだ。プリクラが教科書に載ればそれは資料として扱われる。行方不明のニュースとして新聞に載ってしまえばそれは報道写真。昔の手帳から出てきたらそれは個人の思い出。写真が扱われる箱によってそれらの役割は変わるのだ。写真って刹那的で素敵…というのはそこに写ったものが儚いのではなく、写真という行為そのものが刹那であるからこそだ。

2021年4月5日、23時58分。きっと更新する頃には日を跨ぐだろう。今朝は都内からロケバスで海まで行き撮影。往復3時間の近場とはいえ車内で揺られながら考えていたことを日記として記す。


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