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感想を送る「仕掛け」づくりに苦慮するソナーズのこれから

前書き

二次創作小説の投稿先として、pixivと並行してソナーズを利用しています。投稿数は決して多くはありませんが、投稿しておけば誰かが見てくれるもので、コメントやいいねがちょこちょこついていましたが、ここ一ヶ月程度、私のアカウントは、ぱったりと静かになりました。

ソナーズ公式のアップデート履歴(トップ画面の下の方に記載されている方)を確認するとこまごまと修正をしているようです。水面下で何かしら開発を続けているようですが、ユーザのホーム画面への告知はなく、運営側の動きがわかりにくいです。マシュマロとソナーズが合体していた頃はあれだけ投稿のあった公式のツイッターアカウントも静かです。

以前にユーザにこっぴどく怒られたのが効いたのが、告知を出しづらくなってしまったのかな。それでも開発は続けているようなので、ソナーズの良かった点、良くなかった点について少しだけ振り返って、ソナーズを利用しているユーザとして、勝手にソナーズのこれから先のことを考えてみたいと思います。

ソナーズの良かった点

  1. 感想を送ることに着目したサービス

  2. スピーディな開発・シンプルなシステム設計

  3. ユーザからの意見を取り込む姿勢

  4. 文章ごとの「いいね」、「いいね」ボタン連打機能など読み手の気持ちを細やかに可視化する試み

色々あったけど、ソナーズは目の付け所の良いwebサービスだと思います。ソナーズの構想を聞いて、見込みユーザはシステムの完成を期待してたからこそ、公式のあんまりな態度にがっかりしてしまいました。

ソナーズは作りがシンプルです。そのためか、去年の年末から今年の一月くらいまでは新規実装に関する告知も多く、実際に使ってみても、バグだらけで使えないということも(私が知っている範囲では)なかったように思います。これは地味かもしれないけど、結構すごいことです。だから、システムを実際に作っている人(開発担当者)はシステム作りに関しては優秀だったんだろうなと思います。

基本的にユーザからの意見を積極的に取り入れようという姿勢も良かったと思います。感想閲覧上限機能についてはすったもんだありましたが、最終的にユーザの希望が受け入れられました。文章ごとの「いいね」や「いいね」ボタンを何度でもクリックできるなど、読者の作品に対する気持ちを細やかに伝えられるアイデアを盛り込んだところも良かったです。

ソナーズの良くなかった点

  1. 公式の態度

  2. ユーザのリクエストに頼りすぎている仕様検討の甘さ

  3. ユーザ母数の絶対的な少なさ

  4. ユーザを増やすためのプロモーション不足

項目1についてはもういいでしょう。項目2についてですが、これはソナーズの良かった点と表裏一体になってしまうのですが、ソナーズはユーザの意見を積極的に取り入れるという姿勢が強いために、十分な仕様検討が開発内部でなされているのか疑問に感じることがありました。

ソナーズ側が謳う「感想をもらった人が受け取るだけで終わらず他の人にポジティブな反応をすることで、『創作の好循環』がより促されるのではないか」(引用元:ソナーズに関するお詫びと対応につきまして 「感想に表示制限を設けた仕様」)という考えと「サブスクリプションによる感想の閲覧上限の解除」は矛盾が生じます。サブスクリプションに入るほどのソナーズの利用ユーザにこそ、感想をたくさん送ってもらわないと感想が循環しないからです。

感想の閲覧上限解除目的にサブスクリプションに入ったユーザが積極的に感想を送り続けてくれるかと言われたらさすがに難しいでしょう。現在こそ、感想の閲覧上限機能は撤廃されましたが、ユーザに指摘されなければ、感想の閲覧上限やサブスクリプションによる閲覧上限解除の仕様で開発するつもりであったはずなので、仕様検討をきちんとしたのかなと疑問に思う訳です。

項目3,4が一番問題。ソナーズはβ版がリリースされてからまだあまり時間が経っておらず、既存の小説投稿サービスに比べて、利用ユーザ数がまだまだ圧倒的に少ないはずです。利用ユーザ数は、全てのwebサービスやソフトウェアにとって大きな課題です。少しだって多い方がいい。利用ユーザを増やすためには、使いたいと思うサービスを開発して、ターゲット層に的確にプロモーションしていかないといけません。水面下では何か頑張っているでしょうが、少なくとも表向きのプロモーション(ツイッターやソナーズ内での告知)は活発とは言えません。むしろ停滞しています。これではユーザはじりじりと離れて行くばかりで、新規獲得は難しいでしょう。

ソナーズのこれから

では、どうしたらいいのか。
『新規ユーザの獲得』。これに尽きると思います。

  1. ユーザ視点のシステム開発

  2. 正式リリースに至るためのフィードバック獲得

  3. webサービスを継続していくための収益基盤

  4. 書き手同士で感想が循環する、もしくは読み手から感想をもらう環境づくり

これらは全て継続的な新規ユーザの獲得なしには達成できません。なので、ソナーズはまずどんな微細なバグ修正でもいいから、システムを開発しているアピールやソナーズというwebサービスがあることを継続してターゲット層に周知していかなくてはなりません。実際に感想がどの程度来たかどうかについては、ユーザが積極的に発信していかないといけませんが、ソナーズが謳うような『感想が届く』システムであれは、ユーザは喜んで感想がきたことを発信するでしょう。

ツイッターで「ソナーズ」で検索をしてみると、現在も投稿している人も多く、「反応ありがとう」というツイートも見かけます。同時に「ソナーズは、よくわからなくて手が出ない」と躊躇する人もいるようなので、そこを後押しする公式の宣伝ツイートやユーザの疑問への的確な返答が定期的にあれば、じわじわとユーザは増えて行くと思います。すでに利用しているユーザも機能の新規実装やアップデート報告があれば「きちんとサービスを稼働させてるな」と安心します。

現在、未実装の『データで見える』機能が実装されて、大々的に告知されたら新規ユーザを獲得するチャンスが巡ってくるかなとは思います。ただやはり、一時ユーザが増えるだけではあまり意味がありません。継続してサービスを使い続けたくなるシステム開発やそれに伴うプロモーションは必要です。

そもそも感想がくるにはどうしたらいいのか?

この疑問については、書き手の力量とかプロモーション力とかは置いておいて、環境的、システム的な観点から考えて行きましょう。

  1. 作品を読む人の数が多いに越したことはない

  2. 意識的に探したときに的確に見つかる(読み手の目に留まる その1)

  3. 意識的に探してないけど、お勧めとして表示されて興味を持つ(読み手の目に留まる その2)

  4. 書き手が感想が欲しい人だと読み手からわかる

  5. 感想を送る手順に煩わしさがない

まずは『たくさんの人に読んでもらう!』。ここをクリアしないと『たくさんの感想』は来ません。例えば読み手も書き手も十分にいる活気のあるジャンルで、一つの短編を100人が最後まで読んで気に入り、クリックするだけの「いいね」が10回+1つか2つの文章の感想が来たら、結構打率が良い方ではないでしょうか。

少し話がずれますが、もしかしたら「こんなに文章の感想ってもらえないの!?」とこの割合に驚く人もいるかもしれません。ですが、普段、自分の気持ちを言語化する習慣がない人が改めて感想を書こうと思うと結構ハードルが高いものです。同人誌即売会で壁配置されるほどの人気のある作家さんの場合だと「この人、人気でもうたくさん感想貰ってるだろうから自分は送らなくてもいいか」となってしまい、逆に全く感想がもらえなかったり、小さなジャンルであれば「この書き手さんを支えたい」という気持ちが読み手側に強くて、同人誌10冊に対して、2,3件くらいの割合で感想が貰えたりするかもしれません。スタンプや「いいね」ボタンも勿論感想の一つですが、今回は「文章の感想」に絞って考えていきます。

この割合(100人の人が作品を最後まで読んで、且つ作品を気に入り、その内の1人が文章の感想を送ってくれる)で感想が貰えるとして、10件の文章の感想をもらうには1000人が読んで、且つ作品を気に入る必要があります。

ソナーズは閲覧数が表示されないので、上記の割合で『短編1つに対して、pixivで10件の文章の感想をもらえる状況』を考えてみましょう。pixivの閲覧数は一瞬だけ小説ページを開いて閉じても閲覧数にカウントされるので、作品に表示される閲覧数と実際に最後まで読んだ人の数に乖離があるはずです。作品を最後まで読んでくれても、気に入ってくれないと感想を送ろうとはなりません。ブックマークをつけてくれた人は最後まで読んでくれて、且つ作品を気に入ってくれた読者と判断できます。

私個人の経験なのですが、私の二次創作作品は大体閲覧数の1割前後のブックマークが付きます。(シリーズ物の場合は、1つ目の更新が短編と同等のブックマークがつき、途中は閲覧数に対するブックマーク率が1割をやや下回り、最終章でブックマーク率が一割近くに戻ります)閲覧数に対するブックマークの割合は個人差があるはずですが、他の人に聞けなかったので、この割合を参考にして考えてみます。このブックマークの付き方はジャンルの規模や作品の傾向によって本当に大きく変動すると思うので、「そういう人の例」として捉えてください。

つまり、私と同じようなブックマークの付き方をする書き手が、pixivで1つの短編に対し、10件の文章の感想をもらうなら、ブックマークが1000前後必要で、1000ブックマークをもらうには、10000人くらいの人の目に作品のタイトルが留まり、作品をクリックしてもらう必要があります。つまり感想をそれなりの数もらうには読者の閲覧数が圧倒的に必要なのです。

ソナーズであれば、pixivのブックマークに相当する人(作品を最後まで読んで、気に入った人)が積極的に送ってくれるかもしれませんが、それで作品に対する閲覧数が少なくても良いということにはならないはずです。

項目2,3についてです。探して見つかる機能はタグ機能があるから良いとしましょう。pixivのお勧め機能でお気に入りの作品を見つけた人も多いと思うので、お勧めが表示されるといいかなと思いますが、多分実装に手間やコストがかかりそうなので、ソナーズ内の検索機能についてはしばらくは現状維持だと思います。

項目4についてです。ソナーズは投稿の段階で感想が欲しいかどうかを選択できるし、ソナーズに投稿している段階である程度感想が欲しい人だと判断できるので、項目4も問題ないと思います。項目5も作品のラストに感想を送るボタンや文章単位での「いいね」機能、作品末の「いいね」ボタンがあるので、こちらも問題ないと思います。

ソナーズの感想を送る「仕掛け」

でも、ソナーズはそもそも閲覧数に頼らず、ソナーズ内の『仕掛け』によって、感想を送ることを促すサービスでした。それが「同一作者の次作品を読むには感想を送る必要がある機能」、「感想を送ることで解除される感想閲覧上限機能」(サブスクリプションに入らない場合、感想の閲覧上限は他の人へ感想を送ることで解除される仕様でした)です。ですが、これらの仕掛けは、ユーザからの猛反発により撤廃。この動きをユーザの要望を汲み取っていると見るか、仕様がふらふらして頼りないと見るかは、難しい所です。ですが、炎上騒ぎになるほどの反発のあった機能なので、結局はユーザに受け入れられなかったでしょう。

この感想を送る仕掛けの二本柱を失ってからのソナーズらしい感想に関連した機能といえば、現状、文章単位の「いいね」や「いいね」ボタン連打機能くらいです。そのため、ソナーズはこれから感想が循環する仕掛けづくりをしなくてはいけません。

個人的に思いついたのは、感想を送った実績に対する称号機能や感想の件数に応じたポイント還元とかですが、前者はともかく、後者はポイント目当ての雑な感想が横行しそうですし、ポイント目当て(かもしれない)感想にもやもやする書き手が出てくるかもしれません。

当初の構想通りに閲覧数に頼らず、仕掛けによって感想を促すのであれば、ユーザに受け入れられる、新しい仕掛けを考えてなくてはなりません。開発コストなどの都合でソナーズが当面現状のままであるのなら、数字に囚われずに作品を発表できる環境などを売りに利用ユーザの拡大をしていくしかありません。

開発側が新しい仕掛けづくりに悩んでいるのであれば、「感想を送る側」の気持ちに寄り添ってみるのがいいでしょう。どれほどソナーズがバグがなく、堅牢な、システムとして完璧のサービスであろうとも、作品を読んだ人が感想を書かなければ、ソナーズというwebサービスの意味は、大きく失われるからです。

「たくさんの人から感想をもらうシステムや環境づくり」という観点からソナーズの先のことを勝手に考えました。勿論、反応は期待せず、閲覧する人を限定して、のんびりやりたいなど、使い方はその人次第です。

感想とは何か

最後に感想が欲しい書き手の一人して、『感想』とは何ぞやと改めて考えました。感想は『自分の心の動きの軌跡』かなと思います。つまり『感想をもらう』ということは『人の心の中を知る行為』です。人の心を動かせた。これに勝る喜びは中々ありません。だから作品を作る人の多くは感想が欲しいのです。

ですが、同時に通常、人は自分の心を早々簡単に他人に見せません。感想に限らず、誰かが自分に心を見せてくれたなら(愛の告白とかね)、そこには大きな敬意が必要です。

「一言でもいいんだから感想書けばいいじゃん」とか、「♡をクリックするだけじゃん」と言われても、程度の差こそあれ、それらは全て自分の心を晒す行為なので、人は感想を送ったり、「いいね」でリアクションすることに無意識にでも躊躇します。

感想を積極的に送っている人も、文章を書いている時は「こんなこと書いて変に思われないかな? ちゃんと喜んでもらえるかな?」と不安です。でも不安を差し引いても有り余るプラス(感想をもらった書き手さんの喜び)があるのを知っているから、感想を書くのです。

「感想を欲しい」とアピールするのはいいですが、過度に求めるのは良いことではありません。感想をもらうことを目的としたwebサービスがあってもいいですが、開発側は心を晒して感想を送る人への敬意の気持ちは常に忘れないで欲しいなと思います。感想閲覧上限という機能は、感想を読みたい書き手の気持ちを煽った以上に、せっかく感想を送った人の気持ちや行為を踏みにじる行為であったからあれだけ炎上したのだと思います。


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