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私の夫と小栗旬が繋がる世界線を見つけました【書評】あのこは貴族

「お里が知れるで!」
何か行儀の悪いことをしたとき、私は母からよくこの言葉を言われていました。
お里が知れる=言葉遣いや仕草によってそのひとの生まれ育ちが分かるということです。

21年間過ごした大阪の田舎から初めて上京したとき、東京出身の人達と自分の間に埋められない溝を感じていた私。
しかし数年前から、その溝を感じなくなりました。
本日はその理由をうまく説明してくれた本の紹介をしたいと思います。


本の紹介:あのこは貴族

映画化もされた小説です。

主な登場人物は、地方生まれで都内の私大に通うため上京するも実家のトラブルで金欠となり大学を中退した経験を持つ美紀と、東京生まれ・東京育ちで毎年お正月は有名ホテルで親族と共にパーティーをするようなお家出身の華子。
いままで全然違う世界で生きてた2人が、東京でひとりのハンサムな男性を通じて出会うお話です。

ここまで書くと、お、貧乏vs金持ち(田舎vs都会)のバトルか!とワクワクされた方もいるかもしれませんが、私はこの小説のテーマは逆だと思っています。
すなわち、テーマは「和解」。

とても読みやすい作品なので、どのような和解が描かれているのかと気になった方はぜひ読んでみてください。


私のコンプレックスとプライド

ネタバレを避けるため、この本で描かれている内容と少し近い私の経験について書いてみます。

私はこの本で言うところの「美紀派」でした。
父はもともと個人で商売をしていましたが、バブル崩壊の煽りを受けて私が物心つくころには我が家は割と経済的に困っていました。
なので進学先はもちろん、お金のかかからない公立一択でした。

私の周囲の場合、大学に入学したときくらいから美紀派と華子派は自然と分かれていた気がします。
私の周りには「地方の公立(共学)出身」の女の子が集い、「私立中高一貫校(多くは女子校)」の女の子達とは、仲が悪くはないけど『なんか合わないよね』という暗黙の了解のもとお互いに距離感を保っていました。

「地方の公立出身組」は、けして恵まれた環境ではないが努力してそこそこの学歴までたどり着いたことにプライドがありました。
一方で、「私立中高一貫校組」のもつ、なんとも言えない余裕だったり、親との異常な仲の良さだったり、人の悪口を言わないクリーンな感じに羨ましさを感じていました。

私達の溝が消えた夜

私の「私立中高一貫校組」に対するコンプレックスは、就職で上京したときにピークに達しました。
というのも、「東京産まれ・東京育ちの私立中高一貫校組」は大阪の数倍ギランギランに眩しかったからです。

私が学校帰りに公園で蚊に刺されながら友人と武勇伝デンデデンデンを踊っていたとき、彼らは渋谷のど真ん中のタワレコで洋楽を聴いていたというのだから住む世界が違いすぎました。

社会人になって3年たち、2つ下の後輩の指導係になりました。
彼女は渋谷のタワレコどころかドイツで毎週クラッシックコンサートを聴いていたという、「東京産まれ・東京育ちの私立一貫校組」より更に上位クラス(←あくまで私の考え)の「帰国子女組」の女の子でした。

大学時代であれば、まず行動を共にしないタイプの彼女。
愛読書が少年ジャンプの私と文藝春秋の彼女の間に共通の話題があるはずもなく、ぎこちない師弟関係となりました。

しかしそれが解けたのが、1年後。
ミーティング終わりになんとなく一緒に食べに行ったランチで、初めて彼女から「男」の話題が切り出されました。

「K子先輩、私先週初めて合コンにいきました」
「ほう(合コンなんて行くんや)」
「一回りくらい上の方なんですが、ひとり良いなと思う男性がいました」
「ほう(年上派なんや)」
「LINEを交換して2人で会う日にちを決めてるんですけど」
「ほうほう」
「平日の昼休みにしかLINE返ってこなくて中々予定が決まらな」「それ既婚者じゃない??」

その男のFacebookを見つけ出したところビンゴで、彼女は既婚者なのに合コンに参加した大馬鹿者にひっかかる一歩手前でした。
彼女の怒りはランチタイムではおさまらず、その晩はじめて2人で終電まで飲みました。
酔って男への罵詈雑言を口にしながらも、いつも通り膝の上にアイロンがけした可愛いハンカチを置いている彼女は、私にとってすっかり「おもしれー女」になりました。

いままで20数年間、まるで違う人生を過ごしてきた私達の溝はそのとき急になくなってしまったのです。

生まれ育ちで解決できることなんてそんなにない

駄目な男。
イケてない上司。
一生イヤイヤ言ってる2歳児。

学生の頃は知らなかったけど、生まれ育ちや実家の太さ、もしくはサバイバルで培った努力がなーんにも生かされない、どうにもならないことってめちゃくちゃ一杯あると気づいた今日この頃。
そしてその壁の厚さたるやえげつないので、生まれ育ちの溝なんて飛び越えて近くの人と徒党を組むほかなくなるのです。

最後にタイトルの話

私は女性なので、男性もこういった類のコンプレックスがあるのかは分かりませんが、ある日Instagramでこんな動画が流れてきました。

それはテレビ番組の切り取りで、映るのはモテ界の圧倒的強者・小栗旬。
彼が言っていました。
「子供が産まれてから、Eテレほど感謝してるものはない」と。

…えー!小栗旬ってEテレの話できんの?!ドドドドドッ(←好感度が爆アガりする音)
小栗旬さまと我が夫がイヤイヤ期の2歳児を前にして繋がれる(かもしれない)世界線がここにあるのだなと感動してしまいました。

生まれ育ちの話とはまた異なりますが、交わりそうのない世界にいる人の話としてタイトルにしてみました。


この記事が、美紀派の方にも華子派の方にも何か伝わるものがあれば幸いです。





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