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熊の飼い方 24

影 13

 ほぼ変化がないという環境では時に激しい感情が生まれる。ふとした時に、どうしようもないぐらいの感情が湧き上がってくることがある。知らぬ間に頭で思っていたのもが体の全てに浸透している。行動に出た時には、ことが終わってしまっている。今日は、流れてくる同じ食材が三回ほど手に収まらず、突然怒りが巻き起こった。
 気付いた時には、医務室のベッドで寝ていた。後から聞くと、ひどい荒れようだったらしい。突然、機械を拳で叩き始め、その後、足で機械に穴が空くほど蹴ったそうだ。ただ同じところを何回も、何回も。それだけにとどまらず、周りにいる人にも手を出し、殴り出したらしい。大声を出しながら。
 高校時代にも似たようなことがあった。家で勉強している時だ。問題集を解いていて自分が不得意としているところに丸が全くつかなかった。そのことに腹が立った。マンションで暮らしていたために大きな声が出せなかったため、シャープペンシルを思いっきり何度も机に突き刺した。それに満足がいかず、机を殴った。手が折れるほど。手に痛みを感じだした時には机突っ伏して寝ていた。誰にも当たれなかった。自分だけが傷つけばよかった。それがエスカレートしてしまったことに少しの苛立ちを覚えたがそんなことはどうでも良く感じた。
 殺風景な白い壁に覆われ、カーテンで窓が遮られていたため、現在が何時なのか分からなかった。湿布の匂いが鼻孔をすり抜ける。天井には、大きな丸い蛍光灯が存在感をだし、明々と僕を照らしていた。それにすら苛立ちを覚えている。僕は照らされるべき人間ではない。なぜ照らしているのだ。しかし、体が痛く少し動かすのすら困難な状態にあった。さらに怒りがこみ上げそうになったが、目を閉じるとともに外界を遮った。

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