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熊の飼い方 1
プロローグ
運命なんて言葉はあるのだろうか。人生が上手くいっている人の決め台詞か、上手くいかない人の言い訳にしか思えない。
ただ毎日の繰り返しの中で変化が起こっているだけである。その中の大きな変化を運命という言葉で片付けているだけだろう。
今日も同じ作業を繰り返す。機械のように。
だが、不満などない。なぜなら心は大きく動かないから。大きな不安に飲み込まれることがないから。
これが僕の普通なのである。この生活が一生続けばいいと考えている。何も考えず、同じ作業を繰り返す。
そしてこれが、僕にとっての幸福なのかもしれない。これ以上の幸福があるのかと聞かれれば、無い、とは言い切れない。だが、これ以上の幸福が起きれば、不幸になった時の振れ幅が大き過ぎて耐えきれなくなってしまうのではないか。そのようなことを考えていると、仕事の時間が終わる。
今日も一日が終わった。この満足感によって自分が生きているのだと実感することができる。
淡々と作業を行い、一日に終止符を打つ。昔であればもどかしい気持ちになっていたのかもしれない。だが、今ではこれが日常なのである。
他の人に言わせればこれが僕の運命なのかもしれない。だが、運命などという言葉に縛られることさえも腹がたつ。
僕がいるべき場所はここで、この場所で死んでいくのだ。
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