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熊の飼い方 14

影 8

 自室で部屋を見渡しながら考え事をする。
 古代にもし自分が生きていたら、戦時中に自分が生きていたらなど自分がその時代に生きていたら生存しているだろうか、などと考えることがよくある。
 現時点でラインの仕事をしているが、このような仕事は西洋諸国に使われている奴隷の人々はいたって普通の事だったのだろうと感じる。それに加えて少しでも作業が止まると強固な棒や縄でできた大きな鞭で殴打されていた。それに比べると現代では、手が止まっても言葉で罵倒されるか、止まり過ぎると心配されるような世の中である。現代に生まれて良かったのか悪かったのか。答えは明白である。しかし、今の自分はどうだ。この変化の無い退屈さに嫌気がさしてしまっている。これは現代人が変化に耐性ができ過ぎたからではないのだろうか。
 無常とはいうが、ここまで多くの変化があると少しの変化には反応しなくなってしまうのは当然のことである。だが、敏感な人はどうだろうか。変化に対応しきれなくなり、時代や流れに取り残される感覚に常に苛まれる必要があるのではないだろうか。僕みたいに。天井を眺めながら、この天井も明日、隕石が落ちてきて崩れるかもしれないと思い、怖い気持ちになった。僕はこの世界に何か残せたのだろうか。
 今日は外が騒がしい。喧嘩だろうか?カラスの泣きわめく声も聞こえる。
 人間は進化しないだろう。これから先も。
 僕は人間として生きていく自信を少し無くした。

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