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冬の農作業が身体を強くする

 農業をやっていた頃、「暑い日も寒い日も外仕事で大変ですね」とよく言われていた。食育授業で学校に行くとコピペのように先生方から言われたし、小学生たちからも似たような言葉をかけられる。確かに体力的にはキツイかもしれないが、精神すり減らすような仕事よりはラクだと思いつつ、そのキツさがあるからこそ、身体は強くなっていきます。

 ちょうど「ICEMAN 病気にならない体のつくりかた」という本を読んだこともリンクしたので、冬の農作業が身体を強くした実体験を書いていきます。読んだ本はこちら↓。


冬の農作業

 冬の農作業はどんなものか。丹後は豪雪地域ではないけれど、年に数回は雪が積もります。年によるけど、30センチ以上は毎年積もる。雪の多い年は、60センチ以上積もる日が1週間おきに発生することも。

 雪が積もっても畑には、大根、かぶ、ごぼうなどの根菜類は植わっていて収獲する必要があります。雪をかき分けながらの収獲で、普段より2~3倍の時間がかかります。

 雪は手でかき分ける事もあればスコップでどけるパターンもありケースバイケースです。雪をどかして見える葉っぱを確認して、土の中の野菜を掘り出します。ちなみに土の中は外気と比べて温かいため野菜が凍ることはありません。

 厚手のゴム手袋をして、雪をかき分け、野菜を掘り起こし、コンテナに入れていきます。雪が多いとかき分けるのにも時間がかかるし、雪の重さで土が締まって掘り起こすのも大変です。手先は冷えてくるし、通路は雪でいっぱいなので足元からも身体は冷えていきます。

 ビニールハウスでの作業は直接雪に触れることはありませんが、ハウス全体が雪に覆われて冷蔵庫のように寒い中での作業です。野菜を収獲したり、春に向けて片付けをしたりと、身体を激しく動かすことは無いので、身体は自然と冷えていきます。

 冬の農作業で一番大変だったのが、ビニールハウスの雪下ろし。ビニールハウスに積もった雪は、ハウス内が外気より温かい為、気温差で勝手に溶けて滑り落ちていきます。滑り落ちた雪はビニールハウスの両サイドにどんどん溜まっていくのですが、積雪が多いとビニールハウスサイドに高い雪の壁が出来上がります。

 高い雪の壁がどんどん高くなると雪の滑り落ちる場所が無くなってしまい、ビニールハウスの屋根雪が積もり続け、ハウス全体が潰れてしまいます。これを防ぐ為に、雪の壁を除去しなければなりません。僕が働いていた農場では、人力でスコップを使ってひたすら雪かきです。

 100メートルほどあるビニールハウス横に出現した雪の壁をひたすら雪かき。全身運動ですが何時間も雪かきしていたら身体は冷えるし、指先の感覚も無くなっていく、修行のような時間。

血管の収縮と膨張

 そんな厳しい寒さから作業場に帰ってきて、濡れたカッパから温かい作業着に着替えて暖をとり、生きた心地を噛み締めます。身体の冷えは徐々にほぐされ、温かい飲み物を飲んだりしながら過ごす時間。特に冷えていた指先は、温まりだすと逆に熱を帯びてほかほかになり、時にはピリピリと痺れを感じるくらいです。

 「ICEMAN」に記載されている血管を鍛える、というのはこういった農作業を通じて自然と行われています。冷えた指先は血管が収縮している状態で、そこから温かい環境にもどることで膨張。これが定期的に繰り返されることで血管が鍛えられ、血流が良くなる。

 農業を始めたての頃は顕著にこの感覚を味わうことになります。極端に冷えてから温まる感覚は、都会にいて体験できるものではありません。雪国であれば、氷の中に手や身体を突っ込んで出すトレーニングを、半強制的にやらされている環境です。

 慣れないうちは風邪を引いたり、なかなか体温が戻らなかったりもしますが、徐々に身体が慣れていき、温まった時に感じる痺れも無くなっていきます。

寒さに強くなり風邪も引かなくなる

 血流が良くなれば体温を維持する力も強まり、寒さに強くなります。もちろん、バッチリ防寒して農作業を行いますが、身体が寒さに順応すると少し動いただけで身体はポカポカです。慣れていない人に比べて着重ねする数も少なくなります。

 一度、都会から来た人たちを雪の中畑案内をする機会があったのですが、僕は薄手のナイロンパーカー一枚で見学に来ていた人たちはダウンジャケットやコートを着込んでいて「寒くないんですか!?」と驚かれました。

 冬に限らず季節の変わり目の寒暖差でよく風邪を引いていた事も無くなります。都会でサラリーマンをしていた頃は、少しの気温変化ですぐ風邪を引くくらい弱かったのですが、農業を始めてからは1年のうちに風邪をひくことがほぼ無くなりました。

 風邪を引かなくなると、逆に体調が崩れかけているとすぐに分かります。いつもより身体が重い、喉に違和感がある、変な咳が出はじめた、など。これに気づきやすくなると、初期段階で早めに休んで回復できるので、このサイクルが風邪から遠ざけてもくれました。

 冬の農作業で身体が強くなったことで身体への理解が深まり、更に身体が強くなる。自分のベストを知っていれば、歳を重ねるごとにすべきメンテナンスも認知しやすくなるので、大きな怪我や病気をする前に気付いて行動するクセを続けて、仕事も家族との時間も楽めれば御の字ですね。

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