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パズルとカメラ

僕は君への想像を 満たす言葉を欲しがった
君は不安定な情緒を 煽る言葉に病んでいた
僕は土曜日 留守電に 拙い言葉を吹き込んだ
君は火曜日 落書きに 感じた言葉を書き込んだ

最初の言葉 あの言葉 消えないしシミのようだった
僕は誰かのせいにして 君はすました顔をした

僕は左のポケットに 卑しい言葉を忍ばせた
君は右手のジェスチャーに 際どい言葉を匂わせた
僕は上からあふれでる 甘い言葉を飲み干した
君は下からにじみでる 苦い言葉を舐め取った

かすれる言葉 あの言葉 冷めない熱のようだった
僕は嫌がることをして 君は恥らうフリをした

僕は君との相性に 合わす言葉をあてがった
君は無邪気に笑っては 軽い言葉でフイにした
僕は会う度 君の身に 潜む言葉をまさぐった
君は済む度 窓際に 白い言葉をふかしていた

浮かない言葉 あの言葉 おぼろな月のようだった
僕は次第にムキになり 君はその夜 飲み過ぎた

僕はベースを注ぎ足して 過去の言葉を聞き出した
君は記憶を引き出して 膿んだ言葉を吐き出した
僕はやるだけやりながら 不意の言葉にうろたえた
君は酔うだけ酔いながら すえた言葉になえていた

しなびる言葉 あの言葉 黄ばんだ爪のようだった
僕は何かに苛まれ 君は何かを咳き込んだ

僕は心に触れそうな 素手の言葉をためらった
君はどこかで単純な 無地の言葉を待っていた
僕は2人の関係に 余計な言葉を持ち込んだ
君は瞼の裏側に 空しい言葉を秘めていた

誰かの言葉 あの言葉 枯れない花のようだった
僕はパズルに病みついて 君はカメラに飽きていた

僕は寝る前 耳元で 信じた言葉を囁いた
君は明け方 うわ言で 知らない言葉を呟いた
僕は何度か振り返り 君の言葉を確かめた
君は時折 立ち止まり 僕の言葉を捨てていた

交わした言葉 あの言葉 触れない頬のようだった
僕はいつかに恋をして 君はいつもの夢を見た

僕は6月 部屋の中 梅雨の言葉に濡れていた
君は7月 風の中 夏の言葉を吸い込んだ
僕はそのうちやってくる 悔いの言葉に怯えていた
君は尽きない退屈を 凌ぐ鼻歌 唄っていた

最後の言葉 あの言葉 合わない鍵のようだった
僕は頭を散らかして 君は瞳を乾かした

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