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潮騒

雨があがり 散り散りになった雲が 心を奪う
あの唄は嘘だ 上を向いたら あふれるくせに
砂をかんで 沈んでいく足元が 微熱を奪う
あの人は言った 秋の頃には お別れだって

交わしただけの約束は 夕焼け色をして
僕の空にゆっくりと 手を振って

流したものが気休めなら 向い風に乾きそうなのに
あなたがいない砂浜は もう
拭っても拭っても 涙がザラつくんだ

今思えば その時を安らかに 過ごせたのは
あの人にとって 幸せだったのかもしれない

あなたは誰の傷跡を 僕に触れさせたの?
僕の手をずっと さすりながら

話していないことなんて 何もない気がしていたのに
暮れなずむ水平線に そう
叫ぼうとしても 答えは聞けないんだ

帰り道によぎる声 サヨナラに聞こえて
潮騒は遠のくほど 僕の鼓動をしめつける

世界の続きを信じるのは すがることじゃないはずなのに
あなたがいないこの部屋はもう
信じようとしても 本当にならないんだ

どれだけ笑って泣いたなら 懐かしく思えるんだろう
遠くの遠さがわからなくて
笑っても 泣いても あなたに焦がれるんだ

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