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人間とアンドロイドのひと 第1話
第1話
高度に区画整理された東京市。
人口密度が高く、他人との物理的な距離が近いにも関わらず、心は砂漠に佇むかのように孤独である。まるで全ての人間が無機質な仮面を付けて暮らしているようだ。私に目を向けないこの冷たい世界では、アンドロイドだけが輝いて見える。
このご時世、能力が高く容姿も良いアンドロイド達が社会現象を巻き起こしていた。最新版の彼らは、体内の循環機能まで人間に似せた作りとなっ
人間とアンドロイドのひと 第2話
(第1話から読む)
第2話
おぼろげな朝日が差し込んできて私は目を覚ました。8時間ほど寝ていた。
昨日行った職業センターのアンドロイドは、世の男性が気の毒に思えるほど美男子型ばかりだった。
女の私としては悪い気がしないが、一方で美女型アンドロイドに対して冷たい目を向けている私としては、この悪習じみた容姿イズムをどうしても嫌悪してしまう。マスメディアが今まで外見を売り物にし続け、リテラシー
人間とアンドロイドのひと 第3話
(第1話から読む)
第3話
「一晩だけ部屋を貸していただけますか?」
なんという急展開だろうか。私の人生が短編小説だとしたら、今は起承転結の"転"の部分だろう。
先ほど容姿主義を風刺しておいて言うのも何だが、彼の顔はなかなか整っていた。凛々しい顔面を持って私に面を食らわせるとは軟派な若者である。
と、一秒足らずでここまで思考を巡らせたが、本筋のリアクションが取れない。とりあえずこ
人間とアンドロイドのひと 最終話
(第1話から読む)
最終話
目を覚ますと、若い男が部屋のソファで寝ている。そういえば昨夜、"居候"をやっている男性を泊めたのだった。普段と違う状況に一瞬戸惑ったがすぐ把握した。修学旅行の2日目の朝のような感覚に近い。見知らぬ天井を見つめながら「ああ、そういえば修学旅行に来てたんだ・・」と実感するのに時間を要したものだ。もう記憶もあやふやなくらい昔の話だが。
ベッドから立ち上がりテレビのス