「何を大切にするか」という基本思想がアメリカと日本では違う

ニューヨークで起業したとき、ぼくの胸には「憧れのアメリカ! どんなすごい製品や素晴らしいサービスに出会えるのだろう!」という期待ではちきれんばかりだった。

何しろマーケティング&ブランディングの本家本元である。

ビジネスのお手本、兄貴分。

ところがいざ暮らし始めると、トホホな話ばかり。

この経験から、アメリカ一辺倒の考えを変え、成功の定義そのものも根底から見直しましょう、という提案をしたのが『スローなビジネスに帰れ』(インプレス刊、後、日経ビジネス人文庫『スロー・ビジネス宣言!』)だ。2001年だから21年前。

書き出せばキリがないので、2つにとどめておく。詳しく知りたい方は上記のスロー本をご覧ください。いずれも新築のタワーマンションに引っ越した時のもの。

当時品質管理手法シックスシグマで有名だったGE社製冷蔵庫が備え付けであったのだけど、電球がない。

自分で買って、取り付けろ、ということなのか、最初から「付け忘れて」いたのか、わからない。品質管理シックスシグマはどこへ。というか、子どもも触る冷蔵庫内で裸電球を使うデザイン自体、いかがなものか。

ご覧のように、3つあるブラインドの左右の丈が短い。これはデザインなのだろうか。

繰り返し言いますが、新築です。オーナーは大手デベロッパー。
結局、引っ越すまでこのままだった。
これで、「何を大切にするか」という基本思想がアメリカと日本では違う、ということをしみじみ知った。

今朝読んだWSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)記事が面白かった。Russia軍の戦場ロジスティクス(武器などの輸送)は19世紀のテクノロジーをそのまま使っているとのこと。

アメリカ軍と比較すると、人と安全に関する根本的な思想の違うことがわかる。アメリカ軍は「できるだけ人を危険な目にあわせないように」「できるだけ効率よく」という思想でロジスティクスをデザインする。

たとえばこのたびアメリカがUkraineに提供することになったロケット砲運搬用5トントラックは1人の兵士で操作できる。対してRussiaはチームで当たらないと動かない19世紀のマシンだ。

アメリカが優れていて、Russiaがダメ、という話ではなく、要するに、社会システムとその根っこにある思想が違うとこんなにも変わる、ということが言いたいだけです。

この記事の結論は、「(その国の軍隊の能力が)社会システムを超えることはない」であり、これはビジネスにも言える。

ちょっと寄り道してしまったけれど、ビジネスの世界で、アメリカを模範とする考えはもはや有効ではない。そもそも日本とアメリカは「何を大切にするか」が違うのだから。

ところが、スーパーマーケットやコンビニを始めとする実店舗はどんどん「物体陳列場」になってきており、「接客」を省いている。これはアメリカ式である。

客が自分でレジやって、自分でタッチパネル操作して会計し、自分で袋に入れる。

お掃除ロボットが店内を徘徊するが、じゃまでしかない。

この導線;

誰のためのデザイン?
これは日本人のためのデザインか?

人を中心にしたデザインが、日本人は好きなのだ。

日本人のための、日本人による、商いのデザイン。
それを、本格的にやろうと思っています。

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