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どんな「欲しい」を創造するか

商品を売る時代ではないと、昨日書いた。どんな顧客を創造するか。言い換えれば、どんな「欲しい」を創造するか。

こんなデータがある(*)。全国2000人に金額を入れてもらった。
*岩崎邦彦さんの著作『農業のマーケティング教科書』(日経刊)から引用

トマトの購入に1回あたり(       )円まで払うことができる。
茶葉の購入に1回あたり(       )円まで払うことができる。

それぞれの平均値は「トマト」329円。「茶葉」848円。

次に、こんな質問をした。

おいしさの感動に(       )円まで払うことができる。
リラックスしたひと時に(      )円まで払うことができる。

2000人からの回答平均値は、次の通り。

「おいしさの感動」5,292円
「リラックスしたひと時」3,943円

「いくらまで払えるか」というのは、払う人が「どれだけの価値を感じるか」だ。つまり、価格というのは、感じる価値を数値化したものなのである。売る側ではなく、顧客サイドが感じる価値。あくまで感じる価値だ。「欲しい」を数値化する。売る側が原価これだけかかるから、利益これだけ乗っけて・・・とはじいた結果ではない。

1万円原価かかったところで10円でも売れないものがある。
10円の原価だが1万円で売れるものがある。この差は「欲しい」の差だ。

いまは、「売る」時代ではない。「共感して、買う」時代だ。そう、売るのではなく、顧客サイドが寄り添ってきて、買う。欲しいから、買う。

そのためには、売るサイドが、「欲しい」を正確にデザインする。帝国ホテルのカフェでキッシュをテイクアウトした。ついついクセで、「あ。今日持ち帰り用の袋、持ってたっけ?」と思ってしまうが、心配不要、そんなものは要らない。ちゃんと袋に入れてくれる。

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むしろ、持ち帰り用の袋を使われるほうがホテルサイドとしてはめいわくなのだ。スヌーピーやらペンギンやらの図柄の安っぽい袋をぶら下げたゲストがウロウロされると、傷がつく。何に傷がつくかというと、帝国ホテル価格に。

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小さなキッシュに大きなスペース。資源の無駄使いとかいう「正しい」意見もあるだろう。でも、毎日24時間やるわけではない。帝国ホテル利用するシーンは毎日24時間ではない。「たまに」。「たまに」購買は、コンビニやスーパーマーケット、ドラッグストアと違う。

「おいしさの感動」「リラックスしたひと時」はストーリーで決まる。「トマト」「茶葉」も、ストーリーがあれば、共感が生まれ、「欲しい」数値も上がる。「トマト」329円、「茶葉」848円それぞれ、10倍になってもおかしくない。「トマト」3,290円、「茶葉」8,480円。3,290円のトマト? 8,480円のお茶っ葉? それだけで興味わくよね?

先日、大阪うめだの雑踏を眺めながら、ここを歩いている人たち全員の衣服代金合計と、1981年・・・40年前、トラッドが流行していた頃だ・・・の同じ場所を歩いていた人たち衣服代金合計と比較したら、おそらく1/10、いや、もっと安くなっているだろうと思った。その頃、ユニクロもGUもない。服はちゃんと高かった。日本は、衣食すべてが安くなっているのだ。外国人がインバウンドで賑わったのは、日本が安いからなのである。だから収入も増えない。

商売人の楽しさは「欲しい」を創る楽しさ。「欲しい数値」を、高めましょう。

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