誘惑
行き先伝えたとき、あいまいな受け止めだった。
乗車した瓦町一丁目交差点から目的地帝国ホテルまではシンプル。
堺筋をまっすぐ北上、ライオン橋渡った先のY字を道なりに右へ
左折
南森町交差点を右折
左折
ここまで来たら次の天神橋一丁目交差点右折、目の前。
およそ10分以内。
大阪市内流すタクシーで、帝国ホテル知らない人、いないから大丈夫だろう。
あいまいな受け止めだったのと、「お待ち下さい。入れますので」とスマホに行き先案内させる様子、あぶないからずっと見てた。
南森町交差点を右折
左折
ちゃんとやった。あとは直進、右折だけだからつい油断、目を外した。
・・・と右折せず、直進する。
「ここ、右折やけど・・・」
「えっ!? すみません! あら、どうしましょう・・・」
「このままでいいので、どこか停めやすいところ、とめてください」
***************
かなり直進して、左に寄せ、停車した。
「申し訳ありません。300円でいいです」
メーター見ると1500円。
「いやいや、それではぼくの気持ちがおさまらないから、きちんとお支払いします」
さて;
上記*マークの時間、およそ3秒。
その間、何考えたか。
大阪市内流すタクシー運転するのであれば、「帝国ホテル」はマストスポット、ぜったい知っておかないといけない場所。というか、プライベートで一度でも行ったことがあれば、あの交差点を直進、ない。右折が自然に出る動作だ。
いや。
彼女はカツカツの生活してるのかもしれない。シングルマザー、守るべき子どもがいるかもしれない。
帝国ホテルなら、知っておくべきだ。「べき」という文字にもうひとりのぼくが反応した。「べきは、危険じゃないか?」「カツカツの生活は、彼女がしたくてしてるんじゃない。個人のちからではどうにもならない社会システムがそうさせている。だとすれば・・・」ロザリオの間が浮かんだ。
サグラダ・ファミリア、ガウディが生前唯一完成させていた内部空間「ロザリオの間」。副題「Tentación」、誘惑。
では、誘惑とは何か。
人間、どっちに転ぶかわからない。
カツカツと、余裕。
本人ではどうにもならない。
ロザリオの間にある「爆弾もった青年」と「祈る少女」。彼らは「どっちに転ぶかわからない」象徴として描かれている。
青年は、アナーキズムに、少女は大事な人を守るために、それぞれ「誘惑」に転びそうになっている。
人間の弱さ
それはいかんともしがたい。
どっちかに転ぶのは、「外」からの誘惑ではない。
自分の「中」にいる悪魔の誘惑。
だとすれば、「べき」とか、「知ってて当然」というので断するのは違う。悪魔の誘惑に負けることになる。
ここまで、*マークの3秒間、考えた。
なので、気持ちよく代金をメーター通り支払い、車降りた。「ありがとう」
約束時間ぎりぎりだ。
小走りで向かわねば。
「すみません。ちょっといいですか?」
・・・スーツ姿の男性。だれかに似てる。あ。おだみょん(おいでやす小田)や。
なんだろう。足止めて向き合った。
「あなたは、神を、信じますかーーーーー?」
この「誘惑」にも転ばず、足早に向かった。
<以下、ご案内>
2月9日、オンラインで
「ガウディとサグラダ・ファミリア」
についてお話します。
よろしければ。
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