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代表作とセーフティーネット

※頭にある考えを書き散らかした散文です
※気が向いたら校正するかも

デザイナーという職種には資格がない。正確には色彩検定やプロダクトデザイン検定のようなものはあるが、国家資格としての業務独占資格は存在しない。

なので極論をいえば「私はデザイナーです」と言い張ればだれでもデザイナーと言えなくもないが、実際に仕事を得られるかどうかという観点では正しくない。

ではどのようにして仕事を得るか。

工学部のデザイン系学科や美大のデザイン系学科を卒業しておけば、ひとまずポートフォリオをまとめやすく新卒採用時の関門はくぐりやすい。そもそも他の職種では全学部から募集しているのにデザインだけはデザイン系学科卒業者のみとしている会社は多い。

フリーランスでやっていくなら、デザインの実力と営業力と、あとはアワードの受賞歴があれば良いのだろうか。自分はまだフリーでやっていく予定はないので、このあたりは詳しく書けない。

ではインハウスデザイナーからインハウスデザイナーへの転職は?
自分はここでかなり苦労した。※明日から転職します。
新卒で働いた会社での仕事は難易度が高く、誰もが出来る仕事とは思わないし、スキルが付かないとは言わないが、如何せん代表作と言える仕事がない。仕事内容を説明しようにもかなり難しく、プロダクトデザインの作品集というよりは様々なステークホルダーの要望を整理し解決策を提示していったプロセス図になるだろう。が、守秘義務的に表に出せない情報が多く、やれなかった。なので下手すると働いているのにキャリアの空白期間とみられかねない。

自分のTwitterアカウントでFF関係の方のうち何人かが、自分がゴリゴリに企画からデザイン、モデリングまで担当した製品を購入して頂いたりもしているが、訳あって「私がやりました」などとは言えていない。

この代表作と言える仕事がないのは、デザイナーとしてはキャリア上のセーフティーネットが無いのと同じ状況なんじゃないかと最近思っている。

冒頭でデザイナーだと言い張ればと書いたが、実際には代表作と言える仕事、人に見せられる仕事が無いとデザイナーを自称し仕事を探すのは大変に困難だと感じた。特に転職エージェントさんから難色を示されたのは、結構メンタルに来た。60機種以上担当したのに…

転職を考える理由は色々あるだろう。
家族の都合、自身の体調、パワハラ、会社の倒産、戦争、その他不可抗力…
自分がそうしたいと考えるかどうかに関わらず、こういう世の中なので一社に人生のすべてを賭けるべきではないだろう。それは文字通りギャンブルだ。

何らかの理由で転職せざるを得ない時、代表作が無いとデザイナーとしてのキャリアの連続性を持たせることが難しいのではないだろうか。そういった意味で代表作はキャリア上のセーフティーネットだと考えている。

現職で自分たちがやったと言える仕事が出来る見込みがないことを悩んでいると相談したりもしたが、「君は有名になりたいんでしょ?」と一方的に決めつけられ、それ以上話が通じなかった。

代表作が欲しい有名になりたいは違う。

なので自主制作に力を入れる事にし、ささやかながらも自分で代表作を作ることにした。幸いな事に自主制作をきっかけに次の職を得ることが出来た。

制作している最中は自分の責任で夢中になれて、仕事での苦しみやらなんやらを全部自主制作にぶつけることが出来てとても良かったように思う。

一方で今冷静に振り返ってみると、自分の余暇時間のほぼすべてをそちらに振り分けるのはなんとも生活のバランスに欠いている。正直去年、一昨年はギリギリ出来た。コロナ禍と子どもが産まれたばかりでずっと家にいたからだ。子どもも良く寝てて、隙間時間を活用しやすい状況だった。

ただ今後も同じペースでやり続けられるか?まあ微妙だろう。ほぼ休みなく毎日手を動かし続けているが、他の事、例えば何らかのインプットもやらないとバランスが悪い。

もしも自分がインハウスのデザインチームの指揮をすることになるなら、チームメンバーの代表作と言える仕事を作れるように努めたい。業務外で努力をしないと代表作が得られない職場は(少なくともプロダクトデザイナーの職場としては)健全とは言えない。

上記のように転職せざるを得ない事由などいくらでもありうる。いつ何時、自分が原因ではない転職に迫られてもキャリアの連続性を持てるように、自分と一緒に働く人には胸を張って代表作と言える仕事を就業時間中に用意できるようにしたい。

あと、その前に自分の次の代表作も。


220919_追記①

「君は有名になりたいんでしょ?」という言葉が脳裏にこびりついてモヤモヤしたので追記。

思い返してみると「代表作」や「作品」という呼び方は違う専門分野の人にはあまり良い印象が無いのかも知れない。

おそらく「作品」という言葉にデザイナーが好き勝手に作った物だというニュアンスを持ち合わせている方が少なくない人数でいらっしゃるのだろう。

プロダクトデザイナー、あるいはインダストリアルデザイナーの役目は課題そのものを発見し、様々な制約の中でどうやって解決をするかを考え、表現することだとザックリ考えている。そんなことは他の仕事も同じだという意見もあると思うので、ここでは一旦「造形を通して解決する」としておこう。その成果物を作品と自分は呼びたい。

なので有名になるための踏み台として他人を使いたいなどとは少なくとも自分は考えていない。

「代表作」「作品」というワードにアレルギー反応を起こす方には「職務経歴書に書ける仕事をしたい」と伝えればたぶん良いのだろう。

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