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恋はアルコールの酔いと似ている


僕たちはどれだけ失敗しようとも、また次の恋を始める。
「もう恋人はいいかな〜」なんて言いつつも、新しいトキメキに撃ち抜かれる。

2年前の今頃、大失恋をした。
あの恋路の終わりにそんな大それた名前を付けたくもないけれど、あの時期は僕の人生においての大きな分岐点だったと思う。

あの恋をしている時、所謂 "恋は盲目" 状態に陥っていた。
悪い意味で、「誰になんと言われようと好きなんだ!」みたいな。
自分の労力を惜しまず、 "喜んで欲しい" その一心で尽力していた。いや、尽くしていたという自覚さえ無い。
何も考えずに行動していたように思う。
特に見返りが無くとも不満を抱かなかった。
正常な判断ができていなかった。

それがいつしか、独りよがりになっていった。

会いたい。ただそれだけで、今では考えられない行動をしていた。睡魔に襲われ、運転中に命を落としかけたことだって何度もある。

恋愛真っ只中では、てっきり "良い恋愛" をしているものだと錯覚していた。
今思えば、ひどく過激な恋だった。
「優先順位は特に無くて、予定が入った順番だから」などと偉そうな事を言っておきながら、全て彼女が最優先だった。
言っていることとやっていることが、明らかに矛盾していた。
アルコールに溺れるように、判断力が損なわれていた。

月日が経つにつれ、互いに堕落していった。
帰宅時間など決めたことは守らず、約束を破ることは容易かった。
ダメだと思いつつも、もっと一緒に居たいという互いの気持ちが軽率に交わってしまった。
互いに正常な判断ができなくなっていた。
そして、いつだったか「付き合っている時は、自分のことがどんどん嫌いになった」「年上なんだからもっとちゃんとしてよ」なんて言われてしまった。
それはさすがに責任転嫁では? とも思ったけれど、何も言い返せなかった。

子供だったのだ。

あの恋は、"恋" というもの自体に溺れていたのだろう。
"恋" に恋をして、彼女のことが好きなのだと勘違いしてしまっていたのかもしれない。

彼女のことは恋人としては好きだったが、人として好きかと聞かれたら「うん」とは言えなかったと思う。
もちろん尊敬する部分はあった。
しかし、彼女の "正義" を認めることは一度も無かった。
はたして、そんな恋愛が続くだろうか。

否。
人として好きではない相手と歩める未来など、人間には存在しない。

現在の恋人は、異性として好意を抱く前に、人として好意を抱いていた。
交際に至った理由はそれ。
今では、恋人としても人間としても好き。

今の自分から見て、元恋人と交際している頃の自分はお世辞にも好きとは言えない。
今の自分は、あの頃の自分よりは全然マシだ。

極めて等身大で交際できている気がする。
過去は無理をしていた自覚が無かったが、明らかに無理をしていた。
今はそれがない。
できる範囲で、してあげたいことと好意を与える。
でもやっぱり少しだけ無理することもあったりして、そこは学習しないな〜と思いつつも、まあいいかって。
でも苦痛じゃない。もし苦痛を感じたなら次回からは無理かもと伝えられる気がする。以前と違って。
とても良いのでは…?

少なくとも、周りの見えない恋愛はしていないはずだ。
これは、必ずしも僕が変わったとは言い難い。
恋人のおかげ、というのが正直なところ。
受け入れてくれるから、僕も自分自身を受け入れてあげられる。
無条件で優しくしたいと思える。そして、自分にも優しくなっていく。

交際当初は、以前の恋愛が基盤になっていたためか、恋人への気持ちが薄いような気がしていた。
でも分かった。
違う。
これが僕に合った恋愛なんだと。

水底に沈むような恋愛ではなくとも、雨上がりの街のように静かに隣を歩く。

自分のペースで、たまに彼女の歩幅に合わせたりして、上手く歩めているような気がする。
この恋は、精神安定剤みたいなもの。
以前の恋は、心を繋ぎ止めるためにドーピングを使用していたようなものだった。

ふと思い出して恋心が燃え上がる恋愛より、ふと思い出して優しい気持ちになれる恋愛の方が性に合っているのかも。


恋人は、よく語りあった方が良いように思う。
互いの思考を交流し、分け合い、受け入れ、学び、そして理解し合う。
追いかけるのではなく、手を取り合う。
僕らはできているだろうか?
もし今できていなくても、いつかできるだろう。なんとなく、そんな気がしている。

人間は一番最初に声を忘れるらしい。その次に顔、そして思い出の順。
数ヶ月後か数年後か、はたまた数十年後か、今の恋人は隣にいないかもしれない。
声を忘れてしまうかもしれない。顔も、思い出も。匂いだって。
そして、その時はお互いに新しい愛を育んでいることだろう。
でも、それでも、永遠の恋なんて無いかもしれないけれど、いつかこの恋を思い出して心が温かくなれたらいいな。
優しい涙を流せたらいいな。





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