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Vol.14「こどもが不思議を楽しくふくらませられるように、試行錯誤を繰り返してたどりついたかたち」

キヅキランドがオープンして3週間が経ちました。GWに体験してみていただいた方もいらっしゃるかと思います。キヅキランドの「メモれるムービー」を中心としたさまざまな機能は、こどもたちが自由に不思議をふくらませるお手伝いとなるよう、キヅキランドのために開発されたものです。今回はこのウェブサイトの設計やUI、デザインを担当したユニバの河合伶さん(ウェブディレクション担当)、今野聖也さん(メインデベロップメント担当)、小出悠さん(UIデザイン・グラフィックデザイン担当)とのおしゃべりをお届けします!

限られた画面の中でこどもたちをうまく誘導するデザイン

——みなさんの所属するユニバは「さわれるインターネット(Embodied Virtuality)」の会社ということで、ウェブサイトやアプリの開発、コンテンツやインスタレーションを開発していらっしゃいますが、今回のキヅキランドでは、プロジェクトの一番最初の「オンラインでなにかできないか」というアイデア出しのあたりからご一緒いただきました。

河合:はい。もともとユニバはそういう「形のないところでプロトタイピング(実働するモデルを作りながら、プロダクトのありかたを評価していく制作プロセス)していく」みたいなところからプロジェクトに携わっていることが多いんです。今回もアイデアを出しあっては手探りで作っては試し、また別のアイデアを作っては試して……というところから参加しました。

——WEBサイトで体験をしてもらうためのアイデアをいくつも試作して「これだ!」とたどり着いたのが、「動画に書きこめる」という機能でした。エンジニアである今野さんはそのプロトタイプをもとに、サービスとして精度を上げていく部分を担当されたわけですが、最初にプロトタイプを見た時の印象はどんなものでしたか?

今野:変なものを思いついてくれたな、というのが率直な第一印象で(笑)。プロトタイプはアイデアのコアだけなので、ここからプロダクト、サービスにしていくには突破していかなきゃならないことが結構あるな、とは感じました。ただ、いけるという手応えはありました。

——この「動画に直接書きこむ」という機能はまったく新しいものなので苦労も多かったのでは?

今野:そうですね。参考にできるものがあまりなかったという点では確かに大変でした……お絵かきアプリなんかを参考にした部分もありますね。どっちかというと小出さんの担当したUIの方が大変だったんじゃないかと思いますけど、どうでしょう。

小出:概念として「動画に直接書きこめる」というのはすごく面白そうだと思ったんですが、実際にサービスになってユーザーが操作して楽しめるようにするためには難関がたくさんありました。特にターゲットがこどもたちなので。

——こども向けであることで、工夫した点はどんなことですか?

小出:まず気を遣ったのは、ボタンを大きくするとか文字を大きくするとかです。

河合:タブレットなので画面が小さいんですね。その画面の制約のなかで文字を大きくしたり文字にルビを振ったりボタンを大きくしたりすると、デザインでできることがどんどん制限されてしまう……という点で頭を悩ませていましたよね。

小出:だからいかに要素を少なくしてうまく伝える、という点はシビアに追及しましたね。タブレットなので、PCと違って「マウスオーバーで表示してそれが何かを伝える」ということもできない。タブレットの小さな画面の中に、どの要素を見せればできることややってほしいことが伝わるか……。

——キヅキランドはタブレットに特化したサービスであるということだけでなく、普通のWEBサイトとはまったく違う、ちょっとアプリ的なものであることも特徴です。

小出:そうですよね。普通のWEBサイトは、何か情報を得るためのものというのが基本だと思うんですよ。ただこれはやっぱりアプリっぽいというか、ゲーム性が高い。だから遷移がすごく多いんです。ひとつのアクションをしたら次に何が起きて、そこでまたなにか次へのヒントがあって……みたいな。だから、いかに分かりやすくユーザーを誘導するかという点が、すごく大事なポイントでした。

——誘導するための工夫にはどのようなものがあったんでしょうか?

小出:初めは、次に何が起きるとか次に何をすればいいかというのをユーザーにすごく丁寧に説明をすることを考えていたんですね。画面をわざわざ多くして。そこから開発チームだけでなく、制作チームのみなさんや稲盛財団のみなさんと議論を重ねて、ステップを省いたりまとめてみたりとかして、だんだんに画面の数を少なくすることができました。

——最終的には「説明しすぎない」ものを目指しましたね。ある程度こどもが直感的に触れて理解できるものはこどもに委ねる。

小出:そうですね。みんなで実際に触ってみて、こうしたらいいんじゃないかとかの意見を交換して……という本当にみんなで試行錯誤を繰り返してつくっていきましたよね。何が正解かはだれにもわからないので、みんなで道を見つけていったという感覚があります。

書きこめるだけじゃない、書きこみを見るのも楽しい

——音については一番最後に入れることになりました。音が入ることでまた印象が変わりましたね。

今野:最近のWEBサイトはあまり音での演出をしないんですが、ゲームなどはしっかり音が出てその音自体がユーザーのフィードバックになることが多いんです。なので、ボタンを押したり、ツールを選んだりするときに音の演出が入ることで、ちょっとゲームっぽい楽しい感じになりましたね。

——キヅキランドの機能のなかでみなさんのお気に入りってなんですか?

今野:キヅキランドは動画の画面に直接書きこめるのが特徴ではありますが、それだけじゃなくて書きこみを見る(再生する)のも楽しくなっています。見る時に、キヅキの書きこみのストロークが再生されるんです。手書きならではの、身体的な動きがそこに表現される、というのが気に入っています。

小出:僕は書きこみの画面ですね。ペンやけしごむなどのツールを選んで使う画面ですが、うまく整理できたし、分かりやすくできたかなと。キヅツキが登場してヒントを出してほしいなと思ってたんですが、そのアイデアもうまく取り込めましたし。

書きこみ画面。書かないでいると右上のキヅツキがアドバイスをくれる。

——普段まったくデジタルデバイスを触らないこどもも、すんなり体験できているようですよ。

河合:よかったです。やっぱりこどもたちが実際に使っている姿を見てみたいなと思いますね。インスタレーションだと、展示の現場に行ってユーザーが体験している様子が見れるのですが、WEBサイトだとダイレクトなリアクションをもらうことが難しいので、今後オンラインじゃないワークショップなどがあれば、こどもたちがどういうふうに触っているのか見てみたいですね。

——最後に、開発者視点でキヅキランドがこう進化してったら面白そう、というアイデアを教えてください。

今野:キヅキランドでは誰かのキヅキに自分の考えたことを書き込んで「キヅキを重ねる」ことができるようになっているんですけど、これからみんなのキヅキがどんどんたまっていったら、そういったそれぞれのキヅキの連なりや関連性を視覚的に表現してみたいですね。

河合:キヅキランドではキヅキが積み重なってコミュニケーションが生まれる、という土壌を作ったので、まずはここからどういうコミュニケーションが生まれるか、広がっていくかということを楽しみにしています。

小出:僕の夢は、こどもたちが大人になった時に思い出してくれるといいなということ。僕らがポケモンの話を大人になってもするように、「こどものころキヅキランドやったよね!」みたいな。

河合:ああ、それいいなあ!

小出:あとやってみたいこととしては、今野さんが言ったように、やっぱりキヅキの書きこみのストロークを再現するっていう動き、とてもキヅキランドの特徴的なものだと思うんですよね。なにかあれを活かして、ビジュアライズしたりインスタレーションをつくったりしてみたいなと思ってます。

——まだまだキヅキランドは始まったばかり、ですね! お話をうかがって改めて、ぜひたくさんのこどもたちに体験してもらって、可能性を広げていけるといいなと思いました。今日はありがとうございました。

Illustration: Haruka Aramaki


5月21日に、キヅキランドをつかった「不思議をみつけてふくらませる」ワークショップを行います。参加費無料です。ぜひ、この機会にキヅキランドで不思議をふくらませる面白さを体験してください!お申し込みは以下から。

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